いよいよ2月5日に迫った、春風亭昇太が司会をつとめる『笑点』の新メンバー発表。各種メディアには確証のないまま新メンバーの予想記事を出し、演芸関係者や演芸ライターなどによる多くのコメントにあふれている。
『ぐるぐるナインティナイン(ぐるナイ)』の「ゴチになります!」といい、『笑点』といい、日本テレビは新メンバーの発表のじらし方が、なんともいやらしいというか、巧妙なのである。
なぜ『笑点』の新メンバーは事前に漏れないのか
さて『笑点』の新メンバーが誰になるかはここでは触れない。今回は、番組から「人気落語家」で「ここ1年の間に同番組に出演している」というヒントが出されている。この条件を満たす芸人、特に番組出演歴を見れば、誰になったところで、「そうきたか」「やっぱりな」という感想後記が漏れるところだろう。
大抵の情報が洩れる、あるいは漏れやすい世の中で、なぜ『笑点』の新メンバーだけは事前に漏れないのか。そこに見えるのは、日テレサイドの情報管理の徹底さである。
ここ数年で新メンバーになったのは、林家三平、桂宮治の2人である。三平、宮治が『笑点』入りする際も、事前に憶測記事は数多く流れたが、決定的なスクープはなかった。
演芸関係者が、そのわけを明かす。
「本人に伝えるのは半年ぐらい前ですが、その際、日テレサイドが本人に伝えることは『誰にも言わないでください。家族にも内緒です。もし事前に漏れれば、なかったことになります』という、圧力にも似た内容です。実際、三平は家族にも伝えることができず、母親で林家一門のおかみさんである海老名香葉子でさえも、『笑点』のオンエア当日に、三平のレギュラー入りを知ったそうです」
レギュラー枠への出演と同時に課せられる口封じ。おしゃべりを本業とする噺家に沈黙を強いるとは、何かと日テレサイドも酷なことをする。
沈黙だけではない。日テレサイドは、噺家にある種の「嘘」さえも強要しているのである。
涙ながらに謝罪した宮治
演芸事情に精通したライターが、桂宮治が起用された際の情報を元に、裏事情をつまびらかにする。
「『笑点』の収録は基本、隔週土曜日に行われます。宮治さんクラスの売れっ子になると、先々の土曜日は地方の落語会などに顔付けされているわけです。それを本人は断らなければならない。通常、落語家が出演を断る場合は、自分と芸歴・人気が同等、あるいはそれ以上の芸人に、いわゆる“代演”をお願いして、主催者には迷惑をかけないようにするのが習わしです。
ところが宮治さんが当時、落語会の主催者に断りを入れた際の言い訳は『すみません、すみません、ダブルブッキングしてしまって出られません、すみません』ということでした。ダブルブッキングは落語家の場合、なかなかあり得ないのです。落語会のスケジュール管理は手帳に書き込めばすむので、とても単純だから。宮治さんは恥を忍んでダブルブッキングだと嘘をつき、『笑点』のメンバーが発表された後に、主催者の元を訪れ涙ながらに謝罪したそうですよ」
多少意地悪な見方をすれば、日本テレビサイドは、宮治に対して“嘘をつかざるを得ない状況”を作り出したことになる。
新メンバーになり、謝罪すれば、落語会の主催者もそれじゃ仕方ない、ということになるが、宮治目当てにチケットを購入していた人も、巻き添えを食うことになる。
そう考えると、新メンバーの発表を引っ張り続ける『笑点』のやり方は、ちょっとばかり罪深い。
〈取材・文/薮入うらら〉