《風呂なし物件、若者捉える シンプルライフ築く礎に》(日本経済新聞、2022年12月17日)
《【独自】「風呂なし物件」若者に人気…都内で家賃3.2万円「好きなものにお金使える」》(テレ朝news、2023年1月17日)
若者に“風呂なし物件”が人気らしい。昨年末から何度か一部メディアが報じている。人気の理由は“家賃の安さ”、“物や家の設備を極力抑えるミニマリスト嗜好”、“レトロ感を好んで”、“その分のお金を別に回せる”などらしい。
マナーの悪い客も増えて…
「記事の1つで風呂なし物件を検索できる不動産サイトの運営者が取材に応じ、“経済的に大変だから、風呂なししか選べない人は、ほとんどいない”と答えていました。しかし、SNSなどでは“お金がないから風呂なしを選ぶしかないだけ”と貧困が理由だという声が相次ぎました」(社会部記者)
風呂なしであれば、銭湯もしくはシャワー施設があるジムなどを利用することになる。
「風呂なし物件が人気なのかはわかりませんが、このところ銭湯には若い人も多くなっているように思います」
そう話すのは、都内在住の会社員の男性・Aさん。自宅は風呂つきの物件だが、“趣味”として週に数回、銭湯を利用している。
「コロナで飲食店などが営業自粛していた時期も銭湯は営業していましたが、そのころから増えてきた印象です。外出自粛で行くところ、やることがない、リモートワークで人に会わない、ストレスが溜まる……などの理由で銭湯に来たのかもしれません。また、ここ数年のサウナブームも大きな要因でしょうね」(Aさん、以下同)
サウナ→水風呂→外気浴をくり返すことで“ととのう”。映画も作られるほどサウナはブームとなっている。
「人気な銭湯もしくはスーパー銭湯は週末、サウナの外気浴スペースは満員になったりしています。お客さんが増えることは銭湯側にとっては喜ばしいことだと思いますが、一方でマナーの悪い人も目立つようになってきているのが現状ですね。
サウナに入って汗を流さずそのまま水風呂に直行する。サウナ内でずっとおしゃべりをしている。お風呂に入るときにかけ湯をせずそのまま入る。出るときに身体を拭かずにそのまま脱衣所に行く。タオルを浴槽に入れる。髪が長いのに結ばずに浴槽に髪が浸かっている。椅子や桶で場所取りする、またそれらを片付けない……。あげ出したら切りがないですね。もちろんマナーが悪いのは若い人ばかりではなく年配層でもいますが」
銭湯やサウナは1人で利用するイメージが強いが、ブームのためか複数で訪れる人も少なくないという。
「別に複数で来てもいいと思いますが、長い時間、友達と話しながら湯船に入っているのはやめてほしいですね。複数人でやってきて、風呂もサウナもずっと一緒に固まって行動する人たちも多い。そういったずっと一緒に連れ立って利用する人たちはネットで“ドラクエ行動”などと言われています。本当にドラクエのように4〜5人で並んでお風呂もサウナも入る。笑えますが笑えないですね」
どう見ても酔っている状態で訪れる人もいるという。当然、マナー違反であり、何より危険だ。
「本当にやめてほしい」店主の叫び
「自分は普段はサウナのない銭湯に行くことにしています。サウナがあるとどうしても“そういう人”に遭遇する確率が高くなるので。サウナがなければ“ブームな人”は来ないですから。ブームによってマナーの悪い人が増えたと言える一方で、ブームによってルールが厳しくなったとも言えると思います。
マナーの悪さとして例に上げた行為は大多数の人は守っている。マナーの悪い人が一部いるために銭湯側は“ルール”として貼り紙などで注意喚起をしたり、見回って実際に注意したりしている。そうせざるを得ないからです」
居合わせた客だけでなく、マナーの悪さには当然、店側も困っている。
「“石鹸の泡などが付いたまま湯船に入らない”などの最低限のマナーを記した貼り紙を貼っています。そのなかには“こんなのやる人いるの?”という項目も含まれていますが、実際にいるんです。代表的なのは“毛染め”ですね。家にお風呂がないのか、広い場所でやりたいのかわかりませんが、ときどきいるんです」
そう話すのは都内で銭湯を営む店主。
「染料なのでタイルやタイルの目地に色が付いたらなかなか落ちない。毛染めに使ったと思われるビニール手袋がゴミ箱に入っていたり。染料なのか別のなんらかのオイルなのかわかりませんが、ヌルヌルになって滑りそうにもなります。本当にやめていただきたい……」(銭湯店主)
昭和の時代は、銭湯でマナーを教える、それを守らない若者を怒るような“常連のじいちゃん”などがいた。
「自分は世代的に子どものときに父親であったり、銭湯にいた知らないおじさんに教えられたり、怒られたりしました。今はそういった人はいないですし、怒ったりしたら逆ギレされたりトラブルになってしまう。サウナであっても銭湯であっても、ブームは結構ですが、それを“煽る”側は、最低限のマナーも伝えてほしいですね」(前出・Aさん)
本当に“ととのう”べきは、利用者としてのマナーの精神かもしれない。