ラブホテルは、男が女を強引に連れ込むいかがわしい場所……という認識は今や昔。
令和になってラブホテルならぬ“レジャーホテル”
「令和の今は“女子会”や“推し会”なんてこともできる、カジュアルでオープンな存在のホテルになりました。それに合わせて、お部屋のインテリアもシティホテルのようなシンプルで上品なデザインが主流になっています。業界でも“レジャーホテル”という呼び方も浸透してきました」
そう教えてくれたのは、ラブホテル研究家のONIさんこと鬼束ちなつさんだ。ユニークなレジャーホテルの部屋を投稿し、たびたびSNSをバズらせるONIさんの本業はランドスケープ(景観)デザイナー。美大在学中からレジャーホテルの独特なデザインに惹かれ、研究を始めたという。真面目な美人美大生がそんなホテルにハマったきっかけは?
「地元のインターチェンジ付近の風景が、子どもの頃から気になっていました。なんだか“小さいラスベガス”みたいだな~って。それを大学の研究テーマに選んだのがきっかけですね」
そんなONIさんが追い続けるのは、昭和が色濃く残る、豪華絢爛で淫靡な雰囲気ただようレジャーホテル。その投稿の数々が近年、若者の間で盛り上がりを見せる昭和レトロブームの流れに乗って、大きな話題を呼んでいる。
「かつてレジャーホテルが多く作られていた40~50年前には、1部屋にかける金額が桁違いでした。レジャーホテルのバブル建築ともいえるゴージャスな内装、凝ったデザイン……。令和となった今では、その部屋を維持するだけでも大変。しかも、その割にお客さんも入らない。だから今、“昭和ラブホテル”は絶滅危惧種なんです。見つけたらぜひ、精一杯愛でてあげてください」
廊下でプレイ中のカップルの依頼は
そんな昭和なホテルを愛する平成生まれのONIさんが、取材の中で特に衝撃的だった“奇想天外ホテル”の一部をご紹介!この中でも特に印象的だった部屋は?
「当時、レジャーホテルのドキュメンタリーを撮っていた村上賢司監督と初めて取材に訪れたのが港区の老舗SMホテルなんですが、われわれがカメラを持ってホテルに入ったら、ちょうど廊下でプレイ中の方々が“自分たちも撮って”と近づいてきて。まだ学生でしたし、初取材だったので、めちゃくちゃ印象に残っています」
それから14年間。取材で撮りためたレジャーホテルの数は全国で600室を超える。
「許可取りをする本格的な取材と、たまにゲリラでも取材しています。本業で出張も多いので、ホテルを下調べして泊まったり。現地のレジャーホテル好き女子とオフ会を兼ねて泊まったこともあります。1室料金になるので、2人なら下手なビジネスホテルより広くてキレイなのでお得ですよ!観光の際に使うのもオススメです」
福岡県にある某レジャーホテルでは受付の横にショーケースがあり、美しいケーキがとり放題。パティシエがお菓子を作るさまが見られるという甘党歓喜のサービスがあったとか。
「めったに行かない新しめのレジャーホテルでしたが、カフェのようにオシャレな部屋でひとり、おいしいケーキをいただいてきました(笑)」
こういったイマドキホテルを紹介してくれつつも、やはり気になるのは“絶滅危惧種”である“昭和”なホテルと語るONIさん。
「数を減らしながらも日本各地で現役稼働中です。ぜひ読者のみなさんもSNS映えスポットを探す気分で探してみてくださいね!」
絶滅危惧種!昭和遺産のラブホテル10選
【1】360度鏡に囲まれたエロス万華鏡の間 (奈良県)
昭和に流行しながら、今は希少な回転ベッド。中でもこちらはベッドを取り囲む壁、天井、床がすべて鏡張り。まるで万華鏡のように自分達の姿が! 刺激を求めるカップルに。
【2】予想外の動きに驚愕!UFOが浮遊する部屋 (静岡県)
ボタンを押すと回転しつつ、なんと天井を目掛けて上昇が始まるUFO形ベッドが特徴的! 果たしてこのベッドで興奮できるか謎ですが、とりあえずテンションが上がりそうです。
【3】神々しさが圧倒的!前方後円墳風呂(大阪府)
前方後円墳のような謎の物体はお風呂。大きな窓から入る陽射しに照らされ、もはや神聖な場所のよう。2人でこんなお風呂に入れば、忘れられない思い出になること請け合いです。
【4】スペースシャトルで宇宙の彼方へ!(大阪府)
お部屋全体が宇宙空間。奥のスペースシャトル型ベッドは、ボタンを押すとレールに沿って前進! いやらしい気分にはならなそうですが、カラフルでキラキラ。SNS映えします!
【5】滑り台に球体ベッド!情報量がトゥーマッチ(広島県)
吹き抜けのお風呂場にウォータースライダー。透明な球体に入った円形ベッドが上空に。あまりにも情報量が多過ぎて、どういう思いで作ったかデザイナーに問いたくなる一室。
【6】まるで大人の夢の国♪メリーゴーラウンド (岡山県)
二頭の木馬と共に回る回転ベッド、そして天井には大きな王冠型の照明。もはやレジャーホテルというより遊園地。浦安の夢の国オープン前にできた、ファンタジーな一室です。
【7】人気アトラクションを独り占めだゾ(千葉県)
レジャー施設顔負けの本格的ウォータースライダーが。よそなら行列必至のアトラクションも、レジャーホテルなら独り占めして滑り放題! 本来の目的を忘れて楽しめそうです。
【8】レトロ気分を堪能!魅惑の蓄音機ルーム(宮城県)
部屋の真ん中に巨大な蓄音機型のベッドが鎮座。音は鳴りませんが、レトロでキュートなデザインは一見の価値あり。レトロファッションに身を包んで写真を撮るのもおすすめ。
【9】超高級家具に囲まれてお姫様気分もMAX(千葉県)
豪華絢爛なベッドやソファ、鏡台など、すべてイタリア製の超高級品。創業者がイタリアから職人を呼び寄せ作らせた代物も。映画やドラマの撮影でもよく使われています。
【10】業界(?)では有名!本格老舗SMホテル(東京都)
他のホテルと一線を画す雰囲気を放つSMプレイ専門ホテル。拘束具や檻、ドアのないトイレなどハードな設備が並んでいます。アブノーマルなプレイに興味のある方はぜひ。
ラブホテル研究家のONIさん
ONIさん。ラブホテル研究家、ランドスケープ・デザイナー。1989年生まれ。大学在学中の2008年よりラブホテルの撮影、取材を始める。村上賢二氏の書籍『ラブホテル・コレクション』『日本昭和ラブホテル大全』では写真を担当。