「カップルの愛の巣に捜査員が踏み込んだのは1月16日早朝のこと。“なんで来たかわかるよな”と尋ねられた男はすぐに観念したらしく、“大麻があります”と答えたという。家宅捜索で押収した乾燥大麻は計32グラムで、末端価格にして約19万円相当。使用した痕跡がある吸引器具のほか、MDMAやLSDとみられる薬物も見つかった。2人で大麻を吸っていたと正直に認める一方、密売目的で所持していたこともわかった」
と全国紙社会部記者。
男は東京都渋谷区に住む自営業・出町恭太郎容疑者(31)。女は交際相手で、世田谷区立小学校の非常勤職員・安部綾香容疑者(28)。
営利目的で乾燥大麻を所持していたとして警視庁は1月20日、大麻取締法違反(営利目的所持)の疑いで両容疑者を逮捕し、同25日に発表した。容疑対象は押収した大麻のうち2・126グラム(約1万3000円相当)について。
「逮捕のきっかけは、出町容疑者が大麻を所持しているようだとする情報提供だった。警察の取り調べに対し、出町容疑者は“一緒に吸ったり、他人に売ったりしていました”と供述。安部容疑者は“週に3、4回くらい一緒に吸っていました。売り値はわかりませんが彼はほかの人にも譲り渡していたようです”などと販売目的所持を認めている。使用頻度はほぼ2日に1回というハイペースだった」(前出の記者)
家賃月30万円の高級マンションで同棲
容疑者宅はJR恵比寿駅から徒歩約5分とアクセスのいい高級賃貸マンションの一室。同じマンションの住人はこう話す。
「住人同士で干渉し合うことはありません。日当たりのよいベランダ側は隣接する建物がなく、窓から覗かれる心配がないので安心です。防犯もしっかりしていますが、逆に言うと、こっそり悪いことをするには好条件だったのかもしれません。ただ、家賃の月額は30万円弱と高めなのでアラサーカップルが借りるにはちょっと不相応な感じがしますね」
出町容疑者は青森市出身。仙台市の私立高を経て近畿大学に進み、空手道部で活躍。最上級生のときに全日本大学空手道大会の男子団体で優勝するなど清い汗を流していた。
優勝の喜びをSNSでこう綴っている。
《今まで監督への恩返しだけを考えてやってきました。最後の最後にそれが返せて嬉しく思います。(中略)どんぐりの背比べと言われ続けた自分達の代ですが、一人一人が強いどんぐり達で最後を締めくくる事ができました》
大学卒業後も空手を続け2014年、東日本実業団空手道大会の75キログラム級個人組手で初タイトルを獲得。勝っても驕らず、
《内容はただ、若さに任せて勝ったようなものなので、これから考えるべき事がたくさん見つかりました。それでも、近大で培った事は生きていて、改めて大学、監督、OBの先輩方に感謝をしています》
と謙虚だった。
左膝の靭帯を切るケガで手術すると、リハビリに励んで競技に復帰。17年には所属企業で全日本実業団空手道選手権大会の団体組手優勝に貢献し、
《先輩方に優勝プレゼントできてよかった…。全員集まることなんて出来なくて練習も全然出来なくて仕事ばっかりで試合に臨んだけど要するにチームワークって事で!笑 また頑張りましょー!》
と誇らしげに金メダルをぶら下げつつ、先輩を思いやるのだった。
なかなかの実力者らしく、
「出町容疑者は空手の有段者で、地元・青森県代表として毎年のように国体に出場してきた実績を持つ。組手競技の中量級で将来を期待された選手のひとりだったが、もうひとつ戦績が伸びなかった。18年の国体2回戦で、寸止めしなければならない攻撃を対戦相手に当ててしまう反則負けを喫してから名前を聞かなくなってしまった」(青森県のスポーツ関係者)
出会ってはいけない2人を結びつけたのは“合コン”
礼節を重んじる男はなぜ違法薬物に手を出し、指導者らへの恩を仇で返したのか。前出の記者はこう話す。
「軽い気持ちで手を出したレベルではない。一部報道などによると、出町容疑者は中学生の頃、先輩らに勧められて大麻を初めて吸ったと供述しているらしい。3年前、仙台市内で警察官の職務質問で大麻所持がバレる逮捕歴があり、これがターニングポイントになった。一方の安部容疑者も22歳の頃、渋谷のクラブで知り合った人の自宅について行き、大麻を回し吸いしたのが初めてと話し、未経験ではなかった。出会ってはいけない2人を結びつけたのは2年前の夏に開かれた合コンだったという」
初対面の合コンで、出町容疑者はどういう意図か大麻の話題を持ち出し、嫌悪感を示さなかった安部容疑者と恋人関係に。ほどなく同棲を始めたようだ。
20年の逮捕後、大麻と縁を切るため上京したとされる出町容疑者は、ホームページ作成などを手がける会社を起業。しかし、事業は軌道に乗らず、現実から目を背けるように新恋人と違法薬物漬けの日々を送った。
逮捕の女性教師は「学校包括支援員」
一方、安部容疑者は週3、4日勤務の非常勤職員とはいえ公立小学校で子どもと接する立場。世田谷区が独自に設ける「学校包括支援員」として2017年に採用され、現勤務先は2校目になる。
「例えば、休み時間にケンカした児童がいたとして、次の授業が始まっても気持ちが落ち着かないようなとき、包括支援員が別の教室などで話を聞くなどサポートします。授業についていけない子がいれば、席のそばでわかるように教えてあげることも。安部容疑者は勤務態度に特段問題はなく、通常通りに業務をこなしていた。上長や同僚は、まさか違法薬物を使用しているとは思わなかったようです」(区教委の担当者)
単独で授業を持つことはないというが、クラス担任が授業に専念できるようフォローしたり、児童の学習の手助けをする重要な役割を担う。身近な“先生”が逮捕され、児童はさぞかしショックだろう。
経営する会社の業績があがらず大麻に走った出町容疑者と、週3、4日勤務にとどまる安部容疑者は高額な家賃をどうやりくりしていたのか。詳しい生活実態や違法薬物の入手経路、売上高など犯行の全容解明は今後の捜査に委ねられる。
じつは、逮捕した側の警視庁は、伝統的に空手が強く、前出の東日本実業団大会や全日本実業団大会で団体優勝を飾るなど上位の常連組といえる。
出町容疑者は《えぇ男になろうと思います!押忍!笑》と空手家らしい挨拶を交えてSNSに投稿したことも。一度は同じ空手道に向き合った者として、取り調べ相手に礼を欠くことのないよう、潔くすべてを打ち明け、出直してほしい。