天皇、皇后両陛下と愛子さまは昨年12月、ベルギー王国のフィリップ国王の妹・アストリッド王女(60)と皇居で懇談された。
「宮内庁はこの事実を公表していませんでしたが、12月5日の定例会見で私的な形でお会いになったことを認めています。懇談は、今回の訪日目的でもあるベルギーと日本の経済強化連携の報告をはじめ、脱炭素問題にも及びました。
また、愛子さまと同い年で英国のオックスフォード大学に留学している国王の長女・エリザベート王女の話題などで、予定時間をオーバーするほど話は弾んだそうです」(宮内庁担当記者)
ベルギー王室とは“100年以上の仲”
両陛下とアストリッド王女との再会は、約10年ぶり。'13年、オランダのウィレム・アレクサンダー国王陛下の即位式へ参列する直前にお会いになって以来だ。
当時、外国訪問への負担が大きい雅子さまにとって体調の最終調整をなさっていた中での面会は努力が必要といわれたが、それだけに両国の親密さが感じ取れたのだった。
「天皇(当時は皇太子)ご一家は、'06年のオランダ静養の際、オランダのベアトリクス女王(当時)に夕食会でのおもてなしを受けました。その席には、オランダのアレクサンダー国王一家をはじめ、ベルギーのフィリップ国王一家とルクセンブルクのアンリ大公夫妻も出席されて、両陛下は深く感謝されたそうです。
おふたりは当時、日本国内で“蚊帳の外”に置かれている印象があり、ヨーロッパの王族たちが集った夕食会での交流はリラックスなさっていたようだったといわれました」(宮内庁関係者)
日本の皇室とベルギーの王室との関係は、昭和天皇が皇太子時代にヨーロッパを旅行して、ベルギーを5日間訪問した1921年に始まる。
1953年には、上皇さま(当時は皇太子)が英国のエリザベス女王の戴冠式にご出席。その際に訪問された欧州各国のひとつがベルギーだった。上皇さまより3歳上のボードワン国王は即位したばかりで、年齢が近いこともあり友情が育まれたそうだ。
1971年、昭和天皇、香淳皇后ご夫妻は、初の外国訪問先としてヨーロッパへ。公式訪問先のひとつとして選ばれたのが、ベルギーだった。
「前年の大阪万博にボードワン国王の弟のアルベール王子(当時)が来日したことから、訪欧が実現。外務大臣主催の晩さん会で、高松宮妃とのお話し中に“香淳皇后が1度も外国訪問をなさったことがない”と聞いて、大変に驚かれたそうです。早速、アルベール王子は兄のボードワン国王にそのことを伝えて、ベルギーから昭和天皇に招待状が届いて、外国訪問が実現したようです」(報道記者)
元王妃は黒田清子さんを可愛がられた
3年後、ボードワン国王、ファビオラ妃夫妻も訪日。迎賓館が各国の賓客を接遇する賓客施設として改装されてから初めての招待客だった。
「以来、国王が日本を訪れたのは計7回。来日すると東宮御所を訪ねて、上皇(当時は皇太子)ご一家と庭の芋掘りに興じたり、浩宮さまが奏でる音楽に耳を傾けられたり、
礼宮さまと卓球をなさるなど家族ぐるみで交流をしました」(同・報道記者)
上皇ご夫妻は、英国のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式参列やスペイン訪問の帰りなどにも、足を延ばしてベルギーに立ち寄られた。
1984年、アフリカ訪問の際のお立ち寄りでは、ボードワン国王がイギリスに留学していた天皇陛下(当時は皇太子)を事前に呼ばれ、飛行機のタラップを降りてくるおふたりを迎えられるという計らいも。久しぶりにわが子の姿をご覧になった上皇ご夫妻は写真の中で、とてもうれしそうな笑顔を浮かべられていた。
ボードワン国王は'93年に崩御。ブリュッセルで行われた葬儀には、当時天皇、皇后だった上皇ご夫妻が出席された。海外王室の葬儀に両陛下で出席されたのは、初めてだった。都内でも追悼ミサが執り行われ、その年に結婚されたばかりの両陛下(当時の皇太子ご夫妻)も出席されている。
「ボードワン国王夫妻にはお子さまがいなかったことから、ファビオラ元王妃は黒田清子さんを娘のように可愛がられていたとか。葬儀の後に清子さんをスペインの別荘に招かれ、国王を偲びながら静かな時を過ごされたそうです」(元宮内庁職員)
ベルギー王女は王位継承権を持つ
新国王には、弟のアルベール2世が即位したが、年齢や健康上の理由から'13年に生前退位を表明した。次期新国王は、アルベール2世の長男・フィリップ殿下に譲位。
両陛下(当時の皇太子ご夫妻)は、'99年にブリュッセルで行われたフィリップ殿下とマチルド妃の結婚式にも出席された。マチルド妃は伯爵令嬢で、ベルギー王家初のベルギー人王妃。
結婚後の'00年に来日した際は、天皇陛下と雅子さまと葛西臨海水族園に出向かれた。その2年後には、サッカーワールドカップ日韓大会の日本対ベルギー戦を観戦、'05年には愛知での『日本国際博覧会』に賓客として来日している。
'12年の経済ミッションでは、夫妻で精力的にスケジュールをこなされた。行動力があるといわれるマチルド妃は単独で宮城県を訪れ、東日本大震災の被災者を慰問した。国王と王妃になって初めての来日は、『日本・ベルギー友好150周年』の'16年だった。国賓として、歓迎式典や宮中晩さん会に出席。
令和の天皇の幕開けには『即位礼正殿の儀』や『饗宴の儀』に出席。『饗宴の儀』でフィリップ国王を出迎えられた陛下は、共に62歳というご年齢と君主というお立場からの再会だった。
愛子さまとフィリップ国王夫妻の長女・エリザベート王女もまた同じ21歳だが、王女はベルギー初の王位継承権を持つプリンセスという違いがある。欧州では、国連女性差別撤廃条約が成立してから、スウェーデン、オランダ、ノルウェーなどの王室で性別によらない継承への法改正が加速したことから、ベルギーも'91年に憲法改正となった。
オランダ静養のときにおちゃめな愛くるしさで愛子さまから笑顔を引き出したオランダのアレクサンダー国王の長女・アマリア王女(19)も、将来の女王だ。今後、君主となるという立場は違っても同世代のプリンセスたちであることに変わりない。新たな架け橋となって、さらに友好親善が深まることを期待したい。
取材・文/友納尚子 1961年生まれ。新聞・雑誌記者を経て独立。雅子さまのご病状について、皇太子妃時代に初めてスクープ。著書に『ザ・プリンセス 雅子妃物語』(2015年)『皇后雅子さま物語』(文春文庫)などがある