宮崎県日南市南郷町で春季キャンプに取り組んでいる、『埼玉西武ライオンズ』選手の“ファン対応”がプロ野球ファンを含むネットユーザーを唸らせている。
発端となったのは2月11日、現地で西武キャンプを見学したと思われるファンのツイッター。当該ツイートに添えられた数枚の写真に写っていたのは、2021年にドラフト1位で指名された西武の左腕・隅田知一郎(ちひろ)投手。どうやらファンからサインを求められたようだ。
このツイート主と、同じく現地に居合わせたというファンたちのやりとりをまとめると、隅田投手の身に起きたというのがーー。
練習施設間を自転車で移動する合間を縫って行われた、隅田投手と、チームメイトの高橋光成投手と渡辺勇太郎投手による即席サイン会。ライオンズキャップを被った子ども含めて、各々が持参した色紙や手帳を手にして選手を前に行列ができる、キャンプではよく見るファンサービスの光景だ。
「転売はよくないですよ」
ところが、他と同様にサインを求めた“とあるファン”に対して隅田投手は「これで5回目ですよね?」と確認しては、続けて「転売はよくないですよ」と“注意”。そのライオンズグッズを身につけるわけでもない“ファン”は、指摘されるとまるで逃げるようにその場を去ったという。
この人物は数人のグループで動き、なおかつ「ライオンズと書いて」などと注文もつけていたとのことで選手も覚えていたのだろう。選手からもらった直筆サインを、高値をつけてネット販売する“転売ヤー”と見做されてしまったわけか。
「特にここ数年、キャンプ地でのサイン転売を疑われる行為が横行しているとは聞きます」とは、キャンプ取材を出入りするスポーツ紙・野球担当記者。
どうやらサインの転売は西武に限らず、他球団のキャンプでも同様の行為が起きていて、特にファンサービスが再開されてからは活発化しているそう。
「一昔前もサイン転売を目的とした怪しげな“業者”が出入りしていましたが、最近は老若男女問わずといった傾向です。文字どおりに本来は善意によるサービスですが、お願いされたら断れない選手も多く、また一見して転売目的かどうかを見分けるのも難しいんですよ」(前出・野球担当記者、以下同)
ネットオークションサイトや『メルカリ』といったフリマアプリによって、誰もが転売ヤーデビューできる昨今、お小遣い稼ぎの気軽な感覚で転売行為に手を染めるネットユーザーも増えている。ファンにとって貴重な選手の直筆サインは、転売ヤーにとっても別の意味で“お宝”に映るらしい。
サインをもらって笑顔も会話もない
2月14日時点で『メルカリ』を確認すると、最近入手したと思われる複数枚のプロ野球選手の直筆サインが出品されている。中には《本人から直接頂きました。》との商品説明を添えた隅田投手のサインも見受けられ、すでに1500円で取引を終えていた。
「あくまでも私の主観ですが、転売目的と思われるのは我先にと強引に選手に近づいたり、せっかくの選手との機会なのに笑顔も会話もない(苦笑)。また指示役のもとで動く組織的なグループもいるみたいで、話を聞く限りは隅田投手から注意された“ファン”もその部類かも。
各球団もサインの転売行為を把握していますし、当然ながら良しとはしていません。あまりにも悪質な場合はキャンプ中のファンサービスを中止、禁止も検討していると聞きますね」
事実、『千葉ロッテマリーンズ』が公式HPにて【ファンの皆さまへのお願い】として、《サインや写真撮影、握手、プレゼントの受け渡しなど全てのファンサービスについて控えさせていただいています。》と掲載したのが2月10日。
《残念ながら一部の方が、周囲への迷惑となるような過剰にファンサービスを求める行動をとられている事象がありました。》との理由だが、ファンによる“迷惑行為”の一部とされたのが、同日に『NEWSポストセブン』が配信したマリーンズのキャプテン・中村奨吾選手の記事だ。
サインめぐって選手と警察沙汰
なんでも空港内で出待ちしていたファンにサインを求められた中村選手だったが、ファンを腕で払いのけたことで、「暴力を振るわれた」などと騒ぎ立てられて口論に。仲間内とされる別のファンに警察を呼ばせたことで、選手は交番に連れて行かれるはめに。
ロッテ球団はポストセブンの取材に対し、当事者同士の話し合いで終えた話とした上で、“被害者”は中村選手だけでなく、他にも同じファンから“恐怖を感じる行為を受けた選手がいた”ことを明かしている。“常習犯”として知られていたからこその中村選手の対応だったのかもしれない。
「強引に押しかけたのは“サイン目的の転売ヤーではないか”との見向きもあります。一部の迷惑行為を野放しにしては、選手だけでなく、一般ファンも怪我をする、またトラブルに巻き込まれる可能性もあるだけに、ファンサービスを中止にした球団の判断は至極当然とも言えます。
そのような騒動を選手も見聞きしていますし、疑心暗鬼になりながらサインに応じている状況でもあります。あくまでも善意のサービスであることを、今一度ファンも理解してもらってキャンプ見学を楽しんでほしいですね」
転売されたサインを買わないこともファンの務めなのだろう。