かもめんたる・岩崎う大(44)が、近々きっと話題になりそうだと思うお笑い芸人を予想する連載企画。今回の芸人はザ・マミィ。
お笑いコンビのザ・マミィの魅力とは?
ザ・マミィは、キングオブコント2021で準優勝の実績を持つ若手実力派コンビです。コントが強い事務所・人力舎に所属している正統派なコンビとしての顔を持つ一方、ボケの酒井くんの天性の面白人間としての資質が次世代のテレビスターとして業界から注目されています。
酒井くんという人間の持つ面白さは、愚直さ、一生懸命さ、不器用さなどの人間らしさと、さらに絶妙なズレなど、決して計算で狙うことができない強烈な個性です。従来こういう個性を持った人間は、コントが苦手なのが当たり前でした。
コントというのは、少なからず他人を演じるので、ある程度の器用さや俯瞰で物事を見る冷静さが必要です。つまりそれらは酒井くんという人間の個性とは相反するもののはずです。
ところが、ザ・マミィのコントでの酒井くんはしっかりと役を演じています。しかも常に同じキャラクターというわけでもなくさまざまな役をです。ここが、酒井くんの不思議なところで、それがザ・マミィを、数多くいる芸人の中から突出させている部分なのです。ネタも抜群に面白いし、バラエティー番組、主にドッキリ系の素材としても面白い。
お互いに足りない部分を補う芸人版ウルトラの兄弟
ネタを書いているのは、相方でツッコミの林田くんだそうです。林田くんは酒井くんという人間の良さをよく理解しているのでしょう。酒井くんのためのオーダーメードのネタの数々だから酒井くんはあれだけ器用に役をこなしているように見えるのだと思います。
もちろん酒井くんの能力もあります。僕が思うに演者としての酒井くんの良さは変に役を演じようとしていないところにあって、演技にもその素直さが出ているといえます。
小手先のテクニックでどうこうしようというよりも生きざまを投影したような素直な演技スタイルが彼にハマっているのです。
酒井の面白さは人間らしさ
また林田くんは相方が酒井くんじゃなくても、その相方に合った面白いネタを書けるタイプだと思われます。人間の面白さを描こうとするタイプなのでしょう。その証拠にザ・マミィのネタは、シチュエーションによってボケとツッコミが変わったりします。
一見ボケの酒井くんよりもさらに変人として林田くんが登場したりします。最初に書いたとおり、酒井くんの面白さは人間らしさです。
現実世界では不器用な人間の吐き出す本音が面白かったりします。変人だと思われた人間が自分よりも変人レベルの高い人間が現れたときにまともなことを言ったりする。そのあたりの人間の面白さを描いているのです。
2人のでこぼこかげんも、ザ・マミィの魅力でしょう。背が高くスタイルの良いスマートな印象の林田くんと、背が低く謎の口ひげを蓄えた酒井くんという対照的な2人。
酒井くんにとっては保護者的な林田くんは絶対に必要な存在でしょうし、林田くんにとっても人間的な面白さの宝庫である酒井くんはバラエティー番組ではもちろん、ネタを考えるときのキャラクターとしても魅力たっぷりなはずです。
ザ・マミィというとっぴなコンビ名も、2人にはぴったりで、なにか2人はザ・マミィという笑いの絶対的な母から生まれた兄弟のように思えてきます。2人が兄弟だとしたら、酒井くんが出来の悪い兄貴で、林田くんが優秀な弟でしょう。
2人はお互いに足りない部分を補い合い、地球に笑いを届ける芸人版ウルトラの兄弟のような気さえしてきました。
ということで宇宙規模の2人ですから、彼らが日本のお笑い界のトップに立つ日が来ても僕は驚かないでしょう。