勉強や仕事に集中できずに悩む人は少なくないのではないでしょうか。なぜ集中できないのか。それは「ルーティン化できていないから」と指摘するのが、偏差値35から東大合格を果たし、漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当でもある西岡壱誠氏です。新著『「悩む」を時短する! 東大式感情コントロール術』を上梓した西岡氏が「勉強や仕事に集中しやすくなる方法」について解説します。
習慣化できていないから家では仕事がはかどらない
みなさんは自分の部屋での勉強や在宅ワークが長続きするほうですか。
コロナ禍によって、家で勉強や仕事をする機会が増えたと思いますが、なかなか家では集中できないという悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。「やる気はあるのに、なんだか仕事場ほど仕事が進まない」なんてお悩みを持つ方もいると思います。
なぜこんなことが起こってしまうかというと、それは「ルーティンができていないから」といえます。ルーティンとは、身体に染みついた習慣のことです。家では、習慣化ができていないから仕事がはかどらないのです。
仮に何度も何度も繰り返していることであれば、ほとんど無意識的にそういう行動をとることが習慣化できます。
例えば、お風呂場に行って「さあ、まずは何をしようか」といちいち考えて体を洗っているという人はいないですよね? 水をすくったりシャンプーやリンスを使ったり、行動自体はたくさんのプロセスがあるわけなのですが、それらはほとんど意識されることなく、自然にお風呂で体を洗っていることと思います。
これがなぜできるかというと、何度もそういう行動をして身体に染みついていて、ルーティン化しているからだといえます。
同じように、学校や職場は仕事する場所というイメージがあり、自分以外の人も勉強したり仕事をしたりしているので、そこで活動することは「習慣化」されています。もう無意識的に勉強も仕事もできるわけです。
しかし、家での仕事はルーティンができていません。家は「休む場所」としてのイメージがあり、それで自分の中でイメージが固定されてしまっている場合が多いです。だから、仕事をする場所・勉強をする場所としてのルーティンができていないのです。
「風呂場で勉強しろ」と言われてもたいていの人はできないことでしょう。なぜならそれは風呂場では風呂に入るのがルーティンになっているからです。ところが、1週間繰り返すと「ここに腰をかけて、ここで本を開いて……」とルーティンができて、自然とできるようになっていきます。
東大生がリビングや廊下で勉強する理由
さて、東大生はどうやって家での勉強習慣をつけていたのでしょうか。
いちばん多くの人が実践していた方法は、部屋ではなくリビングや廊下で勉強するというものです。部屋というのはもう「休む場所」というイメージがあり、休むルーティンができてしまっています。長年培ってきたそのルーティンを壊すのは時間がかかってしまいます。そこで、まだルーティンがない場所で習慣を作ってしまうというわけです。
東大生の多くはリビングで親や兄弟が何か違うことをしている中で勉強していたという場合が多いです。人から見られているということによる緊張感もありますし、そこで勉強する習慣を作ることは部屋よりも何倍も楽なわけです。
僕も、部屋での勉強よりもリビングでの勉強のほうがはかどる場合が多いので、家族が外出しているときはいつもリビングで勉強していました。
自分の部屋でしか仕事・勉強できない場合は「立ってやる」というのがオススメです。いすに座ったり、ベッドに横になったりしながら仕事をすると、そのまま休んでしまいがちですが、立って何かをするというのはそのルーティンがないという人も多いと思います。
だからこそ、新しくこれから「立って仕事する」というのを習慣化してしまうことができるわけです。東大生でも立ちながら本を読んだり論文を書いたりしている人もけっこういますし、僕も今この文章を立ちながらスマホで打っています。
このように、はかどらないなと思ったら場所や姿勢を変えて、そこでの作業をルーティン化するというのもオススメの方法です。
「机の上をきれいにする」方法も
ほかにも、「机の上をきれいにする」という方法もあります。
机に何か無駄なものを置いていて、それを読んだりそれに触れたりするのがルーティンになってしまっている場合、仕事や勉強がはかどりません。スマホがあるとなかなか仕事や勉強がはかどらないという人が多いのは、スマホいじりが自分のルーティンになってしまっているからです。
先ほども言いましたが、ルーティンを壊すことは困難です。スマホや漫画・ゲームが近くにある環境で勉強しようとすると、なかなか集中できないのは、古い自分のルーティンが新しくルーティンを作ることを阻害してしまっているからだといえます。
なので、古いルーティンを遠くに追いやるようなことが必要です。
・机の上をきれいにして、何も机の上にない状態にする
・PCを一度整理して、画面をきれいな状態にする
・スマホを一度初期化して、アプリなどを一新する
・ノートやルーズリーフなどを新しくする
など、古いルーティンを無くして新しいルーティンを作っていくのです。
いかがでしょうか。やる気が出ないときに、僕たちは精神的な要因で考えてしまいがちです。「頑張れないのは、自分が悪い」と。
それは間違ってはいないのですが、しかし「自分が悪い」と言っているだけではあまりうまくいきませんよね。まずは「自分の環境が悪い」と考えて、新しいルーティンを考えていくのです。そうすれば、在宅ワークや自室での勉強が長続きするようになります。
西岡 壱誠(にしおか いっせい)Issei Nishioka
現役東大生・ドラゴン桜2編集担当
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。