(左から)谷村新司、福山雅治、明石家さんま、伊集院光

 学生時代の試験勉強のお供は『オールナイトニッポン』だった──、そんな青春の思い──出を持つ中高年も多いはず。『オールナイトニッポン』といえば、アーティストやお笑い芸人など時流の人気者たちが、日替わりでパーソナリティーを務めるラジオ番組だ。今年で放送開始55周年を迎える同番組は2月17〜19日、55時間ぶっ通しで特別記念番組を放送し、歴代の人気パーソナリティーが集結して話題を集めた。

 そこで週刊女性では、半世紀以上ものあいだ多くの人に愛されている『オールナイトニッポン』55周年を勝手に祝して40歳以上の男女1000人を対象にしたアンケートを実施。回答者のみなさんが聴いていた'80年代・'90年代、思い出のラジオ番組の名前を聞いた。あなたの青春を彩ったラジオは、何位にある?

1000人にアンケート!もう一度聴きたいラジオ番組

 栄えある第1位は、305票を集めた深夜ラジオの代名詞『オールナイトニッポン(以下、ANN)』(ニッポン放送系)!

「やっぱり『ANN』は、ラジオパーソナリティーにとって憧れの番組ですよね」

 そう話すのは、イケメン評論家の沖直実さん。かくいう彼女は1992年にラジオパーソナリティーとしてデビューし、1994年から3年間『ANN』の真裏で『まんたんミュージック』(TOKYO FM)という生放送番組を担当していた、生粋のラジオウーマンでもある。

松任谷由実

「昔から『ANN』の1部は松任谷由実さん(69)など、有名なアーティストや芸人さんが担当していましたが、深夜3時に始まる2部は、当時は知名度のない方もパーソナリティーに抜擢されていました。ラジオの名手で知られる伊集院光さん(55)も、2部でのブレイクがキャリアの始まり。現在は、人気の芸人さんなどがパーソナリティーを務める時間帯ですが、'90年代までは2部から1部に成り上がる“ラジオドリーム”がありましたよね」(沖さん)

『ANN』は新たな才能を発掘する場でもあったのだ。また、アンケートでは「『デーモン小暮のANN』は、閣下の相撲うんちくが興味深く『夜霧の横綱審議会』などのコーナーも面白かった」(50代・男性)「中学時代、中島みゆきさん(70)の『ANN』を聴きながら勉強をしていた。歌っているときとトークのギャップに驚きましたが、しゃべり口が軽妙で面白く、勉強に集中できませんでした」(50代・男性)や「とんねるずの日が楽しみだった。

 若かりしころの彼らはクレバーで、当時としては画期的な面白さを持ち、ラジオの語りや企画力も素晴らしかった」(50代・男性)というように、パーソナリティー個人に対するリスナーの思い入れが強いのも同番組の特徴。そのほか「笑福亭鶴光の『ANN』は、大人な内容だったので中学生の自分はドキドキしながら聴いた」(60代・男性)という声もあり、思春期の“目覚め”にもひと役買っていたようす。

笑福亭鶴光

 現在、某ラジオ局でプロデューサーを務める福富次郎さん(仮名)は、ラジオとエロの親和性について、自身の体験談とともにこう解説する。

「僕は学生時代、1983〜'88年に放送された『明石家さんまのラジオが来たゾ! 東京めぐりブンブン大放送』(ニッポン放送系)のヘビーリスナーでした。

 今でも忘れられないのが、特別企画の『あえぎ声スペシャル』。女性リスナーが電話口であえぎ声を披露して、さんまさんがそのよしあしを判定する、という内容です。顔も身体も見えない“声だけ”という状況が、僕ら男性リスナーの妄想をかき立てましたね……。

『三宅裕司のヤングパラダイス』、通称ヤンパラにテレフォンセックスの巨匠・清水節子さんがゲストで出演する日は、刺激的な夜になりました。自分が声のエロスに目覚めたきっかけは、紛れもなくラジオです!」

 昭和の終わりは、現代ではお届けしにくい衝撃のラジオコーナーが多数存在していたようだ。

美声が特徴のあの番組も登場

 続く第2位は『ジェットストリーム』(TOKYO FM系)。落ち着いた声が特徴のパーソナリティーが“機長”となり、リスナーを空の旅にいざなうというコンセプトで、平日深夜にクラシック音楽や朗読を放送するイージーリスニングラジオだ。実は2022年、『ANN』よりひと足先に55周年を迎えた長寿番組でもある。

「若いころに海外に憧れ、番組内で流れる飛行機の音に夢を抱いた」(60代・男性)「国際線の飛行機に乗るのが夢になった」(60代・男性)など、当時の夢を振り返る声が寄せられた。また、故・城達也さんや伊武雅刀(73)、現在の福山雅治(54)など、名実共に“いい声”の芸能人が機長を務めるのも『ジェットストリーム』人気の一翼を担っている。

福山雅治

 そして第3位にランクインしたのが『全国こども電話相談室』(TBSラジオ系)。アンケートには「子どもたちの、真剣だけどかわいらしい相談がとても面白く、ためになった」(60代・男性)「回答を聞いた子どもたちが、納得したような、していないような返事をするのがかわいかった」(50代・女性)など、子どもたちに癒された、という声が多数。ほっこりタイムを提供してくれていた同番組だが、惜しまれつつ2008年に放送を終了している。

思春期の心を捉えて離さない内容が……

 また、テレビや雑誌とは違う、有名人たちの知られざる一面が垣間見えるのも、ラジオの醍醐味。前出の福富さんも、『セイ!ヤング』(文化放送系)や5位の『ヤングタウン』(MBS系)に出演していた、アリスのメンバー・谷村新司(74)の冴え渡りすぎる下ネタトークに「度肝を抜かれた」と話す。

「谷村さんが“裏本マニア”という事実は、ラジオを聴いていなければ、生涯知ることはなかったでしょうね。僕らの世代は、谷村さんからエロの知識を得ていたといっても過言ではないです」(福富さん)

谷村新司

 男性だけにとどまらず「兄と同じ部屋で過ごしていたころは『ヤンタン』を聴けなかったが、兄がひとり立ちしてからは気兼ねなく聴けるようになった」(70代・女性)など、ちょっとエッチなラジオは女性からも厚い支持を集めていたようだ。

 また、長寿番組のパーソナリティーは、ラジオを主戦場にしている人も多い、と福富さん。

「印象が強いのは、長年『大沢悠里のゆうゆうワイド』(TBSラジオ系)のパーソナリティーを務めていた大沢悠里さんですね。これもお色気満載の番組でしたが、放送時間は真っ昼間。

 夜勤で疲れて帰宅した人々に、エンターテインメントを提供していたんです。でも、リスナーの多くは彼の“声”しか知らなかったので、インターネットが登場して写真が公開されたときは『こんな顔してるんだ!』と、驚いたはず」(福富さん)

 人気お笑い芸人、空気階段の鈴木もぐら(35)も『ゆうゆうワイド』のリスナーであったことを公言している。『大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版』(TBSラジオ系)終了が報じられた際には、その悲しみを自身のラジオ内で語るなど、業界内に激震が走った。

娯楽が少なかった時代の盛り上がり

 ラジオはチャンネル数が膨大で地域差もあるため、思い出のラジオ番組も多岐にわたる。惜しくもランキングに漏れた番組にも、愛のある言葉が届いた。

「昔からKinKi Kidsが好きで『KinKi Kidsのどんなもんヤ!』(文化放送系)を聴いていた。CDデビュー前に2人の曲が聴けるレアな番組だったが、うちの地域はノイズが多くて聴きづらく、電波がよく入るスポットを部屋の中で求めてウロウロしていた」(40代・女性)という、ファンのたゆまぬ努力が感じられる声や「『吉田照美のやる気MANMAN!』(文化放送系)を車の中で聴いていたが、面白すぎて目的地についても降りられなかった」(50代・男性)などの声も。多くの人にとって“ラジオを聴いている時間”そのものが、思い出になっているのだ。

KinkiKids

 前出の沖さんは、'80年代・'90年代に放送されていた深夜の生放送ラジオの盛り上がりについて、こう振り返る。

「あのころはインターネットもなく、深夜のテレビ番組もほとんど放送されていない時代。なので“夜中の娯楽”の主流はラジオだったんです。私の番組にも下ネタのFAXはバンバン届いたし、それを面白くするのもパーソナリティーの腕の見せどころ(笑)。時には『今聴いているリスナーは部屋の電気を点滅させてみて!』とお願いして、リスナーが外を見て確認FAXを送ってくれたり、いきなりリスナーにアポなし電話をしたりとたくさん遊ばせてもらいました」

 “生放送”は、リスナーの存在をすぐそばに感じられる場所だった、と沖さん。

「コロナ禍以降、耳で楽しむ娯楽としてラジオの人気が再燃しており、ネットラジオ配信サービス『radiko』を利用する人がとても多いです。再ブームはとてもうれしいし、radikoは地域差がなく、好きなタイミングで聴けるので助かっていますが、その影響からか、生放送をリアルで聴いてもらえない寂しさもあります。この特集をきっかけに、みなさんもぜひ生放送のラジオを聴いて“今”を感じてみてください!」(沖さん)

 55周年を迎える『オールナイトニッポン』はまさしく生放送番組。この機会に気になるパーソナリティーの放送をリアルタイムで聴いてみる?

思い出のラジオ番組

1位 オールナイトニッポン(ニッポン放送系 1967年−) 305票
2位 ジェットストリーム(TOKYO FM 1967年−) 121票
3位 全国こども電話相談室(TBSラジオ系 1964年−2008年) 88票
4位 小沢昭一の小沢昭一的こころ(TBSラジオ系 1973年−2012年) 74票
5位 MBSヤングタウン(MBSラジオ 1967年−) 64票
6位 テレフォン人生相談(ニッポン放送系 1965年−) 57票
7位 ABCヤングリクエスト(ABCラジオ 1966年−1986年) 39票
8位 ありがとう浜村淳です(MBSラジオ 1974年−) 32票
9位 吉田照美のてるてるワイド(文化放送系 1980年−1987年) 30票
10位 パックインミュージック(TBSラジオ系 1967年−1982年) 23票
(※インターネットアンケート「Freeasy」にて2月中旬、全国の40歳以上の男女1000人を対象に実施)

福富次郎(ふくとみ・じろう)(仮名)●ラジオ局プロデューサー。1970年代、神奈川県生まれ。『三宅裕司のヤングパラダイス!』(ニッポン放送系)を聴き、ラジオ業界を志す。大学時代からラジオ局でアルバイトをし、放送作家として台本を作成していたことも
沖直実(おき・なおみ)●イケメン評論家・ラジオパーソナリティー。1964年、東京都生まれ。1992年にラジオパーソナリティーとしてデビュー。その後、2004年からはイケメン評論家としても活躍。現在も『堀江淳と沖直実のJun For You』『沖直実のいい男ラジオ』等のパーソナリティーを務めている。目標は「女性版の毒蝮三太夫さん」とのこと

(取材・文/とみたまゆり)

思い出のラジオ番組(※インターネットアンケート「Freeasy」にて2月中旬、全国の40歳以上の男女1000人を対象に実施)

 

とんねるず

 

三宅裕司

 

明石家さんま

 

1996年、TBS系ドラマ『若葉のころ』に出演したデビュー前のKinKiKids

 

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
八木志芳(ラジオDJ)

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