国会議事堂(東京都千代田区永田町1丁目7−1)

 2月10日、国民の預貯金口座とマイナンバーをひもづける新制度の方針が報道された。

マイナンバーカードの違和感

 まずは年金受給者の口座を対象に、通知に対して受給者から「不同意」の回答がなければ、年金受給口座がマイナンバーと自動的にひもづけられるという内容で、関連法の改正案は3月にも閣議決定され、今国会にかけられる予定だ。

 マイナンバーカード(以下マイナカード)の用途拡大も着々と進む。昨年10月、政府は2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナカードと一体化する方針を発表。運転免許証機能の搭載についても、時期の前倒しが検討されている。

 また、2月12日には河野太郎デジタル相が『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演。SNSアカウント作成の際にマイナカードで認証する案について言及したことで波紋を呼んだ。

 こういったマイナンバーカードを巡る政府方針には反発も根強い。SNSでは、《口座のひもづけ案など、大事な情報が完全に後出しジャンケン。そこまでして国民の口座を把握したい政府には不信感しかない》といった批判の声も多く上がっている。

 そこで今回は『マイナカードにまつわる不満』についてのアンケートを実施。

 システムエンジニアとしての経歴も持つファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんと、寄せられた意見について見ていこう。

行政手続き等における特定の個人を識別するためのマイナンバー(個人番号)制度。個人情報の流出など不安の声も

『マイナカードにまつわる不満』

 まず、最も多かったのが【手続きがめんどう】という意見だ。マイナカードの申請はオンラインや郵送で可能だが、受け取りの際には必ず本人が役所を訪れる必要がある。

2月1日、全国の30代から60代の女性500人を対象に、インターネットアンケートFreeasyにて調査

「役所が開いている平日に時間をつくって受け取りに行かなければならないのは、さすがにめんどう」(41歳・会社員・福岡県)と、カードの受け取りがハードルとなっている。

「現在は役所での対面確認が必要ですが、今後は郵送でもカードが受け取れる制度化が進んでいます。

 一度カードを受け取ってしまえば、住民票の写しや印鑑登録証明書などを近所のコンビニでも取得でき、多くの場合は発行手数料も役所の窓口より安くなります。また、自治体によっては戸籍証明書などがコンビニで受け取れる場合も。

 常日頃から感じられる利点とはいえませんが、引っ越しやパスポート申請などの際に役所に出向く回数が減るなど、今後の“めんどう”が軽減されることは、普段はなかなか気づきにくいメリットかもしれません」(風呂内さん)

 また、「マイナポイントの申し込み方法が複雑でわかりづらい。ポイントが使える電子決済にも慣れておらず、かなり手こずった」(65歳・専業主婦・埼玉県)と、スマホやパソコンが必要なマイナポイント申請でつまずく人も。

マイナポイント第2弾の申込期限は2月末の予定だったが5月末までに延長された。ポイントを得るためのカード取得申請は2月末まで※画像はイメージです

「各自治体だけでなく、マイナポイント申請の対面支援が受けられる“マイナポイント手続きスポット”が全国7万か所に設置されています。

 マイナポイントをひもづけられる電子決済は多種多様ですが、独自にポイントの上乗せを行っているサービスなどもあり、さらに還元を受けられる場合も。

 使いたい決済方法でマイナポイントを受け取るための条件、ポイントの受け取りや具体的な使用方法をしっかり調べて、よりお得に活用できるといいですね」(風呂内さん)

 次に多かったのが【必要性が感じられない】という意見。

 保険証との一体化で、マイナカードの使用機会は今後格段に増えることが予想されるが、河野太郎デジタル相は2月17日の閣議後の会見で、マイナカードを持たない人が健康保険証として代わりに使える「資格確認書」を手数料無料で発行することを発表。

「運転免許証があるので本人確認に使わないし、保険証として使うつもりもないので、必要性がわからない」(35歳・会社員・東京都)と、マイナポイント以外のメリットを感じられないという声も。

マイナンバーカードと運転免許証情報との一体化は2024年の年末の実現を目指し、健康保険証との一体化は2024年秋を目指す方針※画像はイメージです

「各種書類の発行以外にも、マイナカードを持ってみると意外なメリットがあることが感じられます。特にこの時期にバタバタしがちな確定申告は格段にスムーズに。

 昨年作業分からICカードリーダーを使わずにマイナンバーカード方式のe-Tax(国税電子申告・納税システム)の送信が可能になったほか、マイナポータルとの連携がさらに強化され、年間の医療費の集計や、ふるさと納税の寄附金控除額の計算、証明書の発行、申告書の自動入力などで大幅に楽になりました。

 こういった利便性の強化は、確定申告以外の分野においても急速に進んでいくと思います」(風呂内さん)

カードというより政府への不信感!?

 必要性への疑問とともに、多く上がったのが【個人情報の流出が心配】という声。

 昨年12月の個人情報保護委員会の年次報告によると、企業や行政機関からマイナンバー情報が紛失や漏洩したとの報告は、2017年度から'21年度までの5年間で、少なくとも約3万5千人分に上るということが明らかになった。

「以前、データが入ったUSBメモリをなくして情報漏洩があったというニュースも。個人情報の問題は不安しかない」(38歳・会社員・神奈川県)という声のほか、

 4位の【紛失、盗難の心配】に関しても、「紛失して誰かの手に渡ったら不正利用される可能性もあるのに、保険証と一体になったら持ち歩かざるをえなくなる」(50歳・パート・鹿児島県)と、マイナカードを持つこと自体への不安を多くの人が抱えていることがわかる。

「セキュリティーの問題なので100%大丈夫とは言いづらいのですが、マイナンバーカードの仕組みを理解すると、少しは不安が軽減されるかもしれません。

 カードのICチップの中にすべての重要な情報が一元化して入っているわけではなく、例えば、国税に関する情報は税務署に、年金に関する情報は年金事務所に、という具合に情報は分散して管理されています。

 仮にどこか1か所で情報が漏洩したとしても、マイナカードひとつで芋づる式にすべての情報を抜かれてしまうといった仕組みではありません」(風呂内さん)

 5位は【悪用されないかの心配】。

「資産を国に監視されたりするのではないかという不安がある」(42歳・自営業・大阪府)、「まずマイナカードを普及させたいという姿勢自体、国民のメリットから逆算して制度設計されたとは思えない」(53歳・会社経営・愛知県)など、情報自体の不正利用というよりも、情報を取り扱う政府に対する不信感の声が多く並んでいる。

「必要性や取得のメリットの説明が十分とはいえず、マイナカード普及の足かせとなっていた事実はあるかもしれません。ただ、ある程度のシェアがなければ、使えるサービスが充実しないという側面もあります。

 これだけカード所持者が増えた今だからこそ、利用できるサービスがさらに増え、より利便性の高いカードになっていくという好循環になるといいですね」(風呂内さん)

 今後は「こんなに便利なのか」と驚くようなサービスなど、いい意味での“後出しジャンケン”に期待したい。

お話を伺ったのは……風呂内亜矢さん●1級ファイナンシャル・プランニング技能士。著書は『「定年」からでも間に合う老後の資産運用』(講談社+α新書)、『つみたてNISAの教科書』(ナツメ社)など多数。YouTubeチャンネルFUROUCHI vlog【ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢】も好評。

(取材・文/吉信 武)

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
八木志芳(ラジオDJ)

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