音楽では『シャネルズ』及び『ラッツ&スター』(1983年にシャネルズから改名)のメンバーとして、また志村けんさんに見出され、『バカ殿』『だいじょうぶだぁ』(共にフジテレビ系)などでお笑いでも活躍。
一方、違法薬物での逮捕は5度。それに伴う服役は3度。
歌手・タレントとしての彼の人生の輝かしい、または逆に影を落とす“経歴”だ。
田代まさし。2019年11月、自宅で覚せい剤や大麻を所持したとして逮捕。2020年7月に懲役2年6か月(うち6か月は保護観察付き執行猶予2年)の判決が確定し収監。2022年10月に出所している。
『MARCY'S』(マーシーズ)。そんな田代がプロデュースしていた“タレントショップ”及び展開していたブランドだ。かつて原宿の竹下通りにタレントショップが乱立した時代があった。所ジョージの『TOKORO'S』、山田邦子の『KUNY』、酒井法子の『のりピーハウス』、とんねるずの『バレンタインハウス』……etc.
これらのショップは、今はもう姿形はない。しかし、昨年の田代の出所から程なく、『マーシーズ』に動きが。昨年12月末、マーシーズのロゴマークである、リーゼントにヒゲ、そしてサングラスに蝶ネクタイという“マーシーの顔”の商標登録が出願されたのだ。出願情報を見てみると、出願したのは田代本人ではなく、時計やジュエリーなどの貴金属やファッションアイテムを取り扱う企業であった。なぜ“今”、田代のブランドは動き出したのか。出願した同社代表に話を聞いた。
野爆・くっきーも着用している
「10月27日の出所後、放免祝いの時に田代さんとお会いして、私どもがやっているブランドで販売している商品を見て、共感していただいた部分が多々あり、その後何度かランチなどプライベートでお会いしました。田代さんと冗談を言い合う仲となり『野性爆弾』のくっきーさんや『マキシマム ザ ホルモン』が田代さんのTシャツを着用されていることをご本人に伝えると、田代さんも知っていて自分のことをイジってくれていることを喜んでいました。私も田代さんのファンであり、会話の中でギャグ商品の企画会議のようになっていったことがきっかけでマーシーズを復活させることとなりました」(出願した『株式会社OMECO』代表・風間友亮氏、以下同)
ブランド復活時に、商標登録を出願した経緯は。
「田代さんとしては、偽物が販売されている現状と偽物が高値で取引されていることを知っていて自分でやりたいと思っていらっしゃいました。そんななかで感性も近く、モノづくりに精通している弊社に委任することにされたのが今回の経緯となります」
現在、マーシーズではTシャツ、そしてライター、マグカップといった小物を展開。商品はオフィシャルECサイトで販売されている。そのサイトには“約40年の時を超えて電撃復活!”の文字が。今後の展開は。
「昨今の日本では、問題を起こして挫折した人が復活するのはとても厳しい。アメリカでは俳優さんや女優さんなどが薬物や暴力などの問題を起こして挫折しても、すぐに復活できている人がたくさんいます。田代さんが頑張って復活できたら、諦めたり悩んでいる人たちの手本になれます。自分がまた挫折してしまいそうな時に、ブレーキをかける人や会社、存在と付き合うことで 意識することになるし、(再犯しないための)プレッシャーにもなります。
そんななかで自分と戦いながら依存症の人の気持ちを理解して、応援してくれる人が増えていけば依存症が減ったり、失敗しても再チャレンジする勇気のきっかけになるのではないかと思っています」
田代は「求められている」
そして田代本人にも、マーシーズ復活、そして今後や夢について話を聞いた。
「いまだに偽物が横行していて、自分がまだ存在できているという嬉しい気持ちもありましたが、やっぱり有名な芸人さんや活躍されているアーティストの人が今でも着てくれているからこそ、自身の本物をちゃんと作り直したかった。作らなければならない。生かされている。求められている。応援に応えたいという強い思いが湧き出てきました。
年齢がもうじき67歳になって、残り少ない人生のなかでどう生きるかという部分で、まだ自分にできることがあるのではないかと考え、マーシーズを欲しい人に応えたいと思いました」(田代まさし、以下同)
ブランドとして『マーシーズ』の今後の展開は?
「今まで作ってきた作品がたくさんあるので、それを少しずつ発表しながら商品化していきたいと思っています。そんななかで僕が好きな絵をグッズなどにして皆さんに知っていただき、個展を開きたいです」
『ラッツ&スター』再集結の可能性
マーシーズではなく、“田代まさし”として、現在は、そして今後をどのように考えているのか。
「定期的に保護観察所で薬物検査を受けています。また薬物依存症のプログラムを受けたり、『ダルク』(編集部注・各種依存症の回復支援施設)に行っています。また精神科にも通っています。友人の誕生会などで呼んでいただいたときに『シャネルズ』、『ラッツ&スター』時代の曲を歌ったりしています。
最終的な目標として僕個人の活動としては、今までの作品で個展を開きたいです。また歌手、アーティストとして鈴木雅之の隣で歌を歌うことが最終目標です」
『シャネルズ』、『ラッツ&スター』のリーダーでリードボーカルの鈴木雅之。両グループにおいてテナーボーカルとして常に隣で歌っていたのが田代だ。『ラッツ&スター』は1987年以降、限定的な“再集結”を除いて活動休止状態だが、正式な解散はしていない。
復活した『マーシーズ』と田代。タレントショップだけでなく、歌手としての本格的な復帰、そして“盟友”との再会はいつの日か――。