「あの美容室が開店して10年くらい経つかな。店長ひとりでカットしてて、ほかにスタッフらしき人はいなかった。オープン当初はカット料金1000円と破格の安さを売りにしていたが、そのうち1500円に値上げし、いつの間にか1800円になっていた。それでも地元の競合店と比べれば相当安価なので、同業者は“他に収入源があるのか”と噂していたんだよ」(地元の男性)
東京・杉並区にあるこの美容室『デザインカットなごみ』で乾燥大麻を密売する目的で所持したとして、警視庁荻窪署と四谷署の共同捜査本部は2月22日、同区の会社員・菅奏太容疑者(26)、同美容室を経営する店長・尾崎義行容疑者(47)、世田谷区の会社員・阿部音弥容疑者(25)の3人を逮捕した。
昨年4月1日、店内で乾燥大麻約62.52グラムを営利目的で所持したとする大麻取締法違反の疑い。
「容疑者3人は共謀して匿名性の高い通信アプリ『テレグラム』を使い、購入客を美容室に誘導していたようだ。販売価格は1グラム6000円とみられほぼ相場通り。髪を切らずに店を出ていく客がいたというから怪しさプンプンだった。菅、阿部容疑者は仕入れなどを担当し、数年前から密売を繰り返していた可能性がある」(全国紙社会部記者)
同庁は3人の認否を明らかにしておらず、大麻の入手ルートなどを調べている。
注文した通りの髪型にならない美容室
美容室はJR西荻窪駅から徒歩約5分、商店街の一角にある。店舗入り口には大きく『Hair Cut ONLY』と記されていた。密売が発覚した今となっては、オンリーどころか違法行為の隠れ蓑になっていたのだから皮肉に思えるが、利用客によるとそういう意味合いではないらしい。
「霧吹きで髪の毛を濡らしてカットするだけなんですよ。カット料金が安いのはシャンプーやセットをしないから。美容師歴は20数年らしいんですが、注文した通りの髪型にはなりません。腕が悪いのか、譲れないポリシーがあって自己流を貫いているのかわかりませんけど」(近所の商店主)
オーダーとは異なるスタイルにされて「二度と行かない」と話す女性も。あるいは、うしろ髪を束ねられる長さをオーダーしたのにバッサリ切られてしまい、「短すぎて束ねられない」と不満を漏らすと、尾崎容疑者は「大丈夫ですよ」と強引にヘアゴムで結んで短い尻尾をつくったという。
思うように固定客が増えない中、かわりに目をつけたのが子ども客だった。親子連れや孫連れのカット料金を割引きし、年配客や子ども連れを中心にそれなりに集客していた。
「子どもはスポーツカーを模した乗り物に乗ったままカットしてもらえるので大喜び。そういう商才はありましたね」(同・商店主)
店内にはスポーツカーの模型を飾り、ミッキーマウスや世界のおとぎ話などのDVDがズラリ並んでいた。
地元の女性はこう振り返る。
「開店当初は商店街の会合に頻繁に顔を出し、とにかくよくしゃべった。内容は覚えていないけど。商売柄なのかもしれないが、ソフトな印象だった」
細身のパンツにベストを羽織るコーディネートが好きで、首にスカーフを巻くこともあったという。
髪を切る必要のない“丸刈り”男が頻繁に出入り
一方、店に出入りしていた菅容疑者は約7年半前のSNSで、
《金の為ならなんでもする奴いないかな。そーいう奴らと仕事したい》
と危ない願望をのぞかせたほか、
《かーみー巻き巻き、かーみー巻き巻き、巻いて巻いて即着火》
と大麻吸引を暗喩するような投稿も。
近所の男性はこう話す。
「坊主刈りの若い男が何度か美容室に入っていくのを目撃し、人件費がかかるだろうに新しいスタッフを雇ったのかなと不思議に思っていた。だって、もうそれ以上切りようのない丸坊主なんだから、美容室に用はないでしょ」
菅容疑者は送検時も坊主刈りで、報道カメラを睨むような表情をみせた。阿部容疑者も坊主刈りの時期があったという。
さすがに美容室に出入りするには不自然すぎる髪型だった。