「なんの前触れもなく、いきなり“垢バン”されたので、丸1日気がつきませんでした」
困惑した表情で振り返るのは、昨年12月にLINEを利用できなくなったという、都内在住のAさん。
LINEと言えば、今や日常のコミュニケーションだけでなく、企業のマーケティングツールとしても活用され、国内のユーザー数は約9300万人(2022年9月時点)と、多くの日本人にとって、なくてはならない連絡手段になっている。それだけに、使えなくなったときのダメージはかなり大きいだろう。
SNSやオンラインゲームなどで、運営者からアカウントの利用を停止されることを、ネットスラングで「垢バン」という。実はLINEでも、個人や団体が“サービスを利用する権利”をはく奪されるケースは少なくない。
「私の場合、メッセージの受信や電話、LINE Payを送金することはできたものの、メッセージの送信、友達の追加や削除ができなくなっていて。自分の端末上では問題なく送信できているように見えるのですが、既読がいっさいつかず、周囲から“返信が来ない”と指摘されて異変に気がつきました」(Aさん)
LINEの利用規約に違反して
AさんがLINEに問い合わせると、次のような回答が届いた。
《お調べしたところ、利用規約に反する行為により、一部機能の利用停止を行っています。
利用規約に反すると見なされる主要の基準は以下の通りです。
・暴言やわいせつ物、その他わいせつ表現など、常識的に容認できないコンテンツを投稿する行為
・個人情報(電話番号、住所、LINE IDなど)を交換したり、1対1の出会いを持続的に勧誘、あるいは要求したりする行為
・禁止薬物取引や株式などの不法取引をはじめとする違法行為
・青少年の不健全な出会いや会合を計画、あるいは勧誘する行為》
これを見て、Aさんには思い当たる節があった。
「ギャラ飲み」の“あっせん者”への監視が強化
「港区女子の界隈で、ギャラ飲みなどをあっせんするLINEグループがあります。私は、そのグループにヌードグラビアの募集を載せていたんです。《ヌード》《ギャラ○○円》といった文言が、利用停止された理由なんじゃないかと……」(Aさん)
東京都港区で富裕層に囲まれながら華やかな生活を送る若い女性たちは、「港区女子」とカテゴライズされている。彼女たちの多くは、1時間で数万円単位の謝礼を受け取る飲み会やパーティー、いわゆる「ギャラ飲み」に参加するが、その場をセッティングする“あっせん者”への監視が強化されているようなのだ。
「コロナ以前に比べて“垢バン”される人が増えました。ギャラ飲みが浸透したことで“垢バン対策”ができていないあっせん者が増えたからだと思います」
そう話すのは、自身もあっせん者の1人だと語るBさん。
「AIを用いた、自由に文字が入れられるスタンプや、スマホのメモ機能に打ち込んだテキストのスクリーンショットを貼るなど、AIの“抜け道”を探して、対策していますよ」(Bさん)
昨今は、LINEが事件や犯罪に巻き込まれるきっかけとなるケースも少なくない。 怪しげなアカウントを利用停止にすることで、未然に防げるトラブルもあるだろう。
こうした取り締まりの強化について、LINE広報室に問い合わせたところ、
《ユーザー被害や不正行為に対しては常に適切に対処を進めております。個別事象に関する回答は控えさせていただいております》
とのことだった。
ネット社会における安心と安全のため、国民ひとりひとりの意識が問われている。