テレビ、YouTube、CM業界などの放送作家として、数々のコンテンツを作り出してきた澤井直人(32)。今、ほかの誰よりも「人間」に興味がある平成生まれの彼が、「話を聞きたい!」と思う有名人と対談する、好奇心と勢いだらけのインタビュー企画『令和にんげん対談』!
第7回は、「もしかしてだけど~」の歌ネタでお馴染み、お笑いコンビ『どぶろっく』が登場! 2019年のキングオブコント王者としてテレビを主戦場に活躍しながら、今年は映画出演や石崎ひゅーいなどアーティストとのツーマンライブを敢行するなどマルチに活躍。そんなどぶろっくと澤井は10年来の付き合い。お互い下積み時代だった昔の思い出話に花を咲かせつつ、持ち味のネタ話や真面目な仕事観の話題まで、どぶろっくの2人を丸裸にしちゃいます!
澤井直人(以下、澤井):どぶろっくさんとはラジオ番組「もしかして どぶろっくだけど!?」でお会いしたのが初めてですよね。たしか2013年頃だった気が。
どぶろっく江口直人(以下、江口):もう10年じゃん、そんな経ったのか~。
どぶろっく森健太郎(以下、森):当時ラジオが始まったばかりで、俺らとしても若い放送作家がつくっていう経験が初めてで。割と人気な芸人のラジオ番組だと作家がついてることが多いじゃん。その時は俺らも「人気芸人に一歩近づいたな~」って思ったね。
合コンでの失敗話!
澤井:僕も当時、放送作家の仕事を始めたての頃だったんですよ。芸人さんとガッツリ一緒の番組をやるのは初めてで。お二人は何者でもない僕にめちゃめちゃ優しくしてくれて、最初にどぶろっくさんと仕事できたおかげで、今も作家として楽しくやってます!
森:ラジオなのにブラを着けて収録したり、結構ぶざけてたよね(笑)
澤井:ありましたね。足が臭いってよくいじられてたのを覚えてます(笑)
江口:そう! 澤井くんの記憶って、足の匂いの印象なんだよね。
澤井:そんなにですか……(苦笑)
森:匂いの原因を探ったもんね。靴が悪いとか、靴下ちゃんと洗濯しているのかとか(笑)本当にそれぐらいだったよ。
澤井:ちゃんと洗濯はしてますよ(笑)
江口:ごめんごめん。あれ、今は結婚しているんだっけ?
澤井:そうなんですよ。いま1歳半の娘がいます。
森:びっくりしたよね。だって澤井くんが結婚できるんだって。
澤井:足が臭いのも受け入れてくれる優しい奥さんですよ(笑)
江口:(結婚前に)よく合コンしていた話はしていいの?
澤井:あ、全然! 江口さんにはよく合コンに連れてってもらいましたね。僕が潰れたこともあって。
江口:ほんとよ。あの時、最悪だったんだから。
澤井:すいません(苦笑)。しかもその時2対2だったから、江口さん1人で取り残されている状況ですよね。
江口:いい感じで盛り上がってたのに、流石に1対2だと「流石に帰るか……」みたいな空気になってさ。
澤井:完全にペース配分間違えましたね。森さんとは今でもよくご一緒させて頂いて。
森:僕は澤井くんと違って、長期戦に持ち込むタイプなので(一同笑い)
江口:ほんとに澤井くんは飛ばしすぎよ(笑)。まあでもそういうところが可愛らしいよな。
森:意外と愛嬌あってね。可愛らしい系でほっとけないみたいな。
澤井:やはりお2人のターニングポイントは2019年のキングオブコント優勝ですか?
江口:そうね。その時は森さんがとにかく出たいと意思が固まってて。
森:その時は「優勝したい!」っていうよりは、賞レースの大舞台で「色んな人にネタを見てもらいたい!」っていう気持ちが強くて。それで相方を説得して。
澤井:準決勝からめちゃめちゃウケていましたよね。あの「大きなイチモツを授けよう」の歌ネタは最高でしたね。
江口:たしかに手応えはかなり。ただよく考えると、決勝に行くってことは下ネタをゴールデンでやるってことだからさ。どうなるんだろって思ったよね。
森:そうそう。だから僕は決勝進出の方が嬉しかったんですよ。決勝進出=テレビでやらせてもらえるという意味合いだったので。
「AVにモザイクをかけてるようなもの」
江口:準決勝でめっちゃウケたから「やれるところまではやったな」と。あとはもうなるようになれって感じで。
森:準決勝で敗退したら、ああ俺らの下ネタはゴールデンじゃコンプラ的にダメなんだなと。結果的に優勝できたので良かったですよ。
澤井:それこそ「ゴールデンでも下ネタってアリなんだ」という風潮は、どぶろっくさんが作ったのかなとも感じていて。テレビがコンプラ的に窮屈になっていく中で、どぶろっくさんが決勝に行って優勝することで、ゴールデンの基準が変わったのではないのかなと。
江口:まあそれは大袈裟だと思うけど(笑)
森:でも以前は披露できたネタが、今だとNGを喰らうこともあるんだよ。中身は同じネタなのに。ある意味で世の中のコンプラを肌で感じているのは僕たちかもしれない。
澤井:ええ、それは悲しいですね……。コンプラが厳しくなっていく時代の空気感は、どぶろっくさんにとって逆風だと思うのですが、どのように対応しているんですか?
森:いやもう、ぶっちゃけ誤魔化し誤魔化しよ。
江口:例えば「きぇんたま」の歌とかね。テレビではできないから言い方を誤魔化したり。歌詞もそのまま言えないから「きゃんたま」って言ったり。
森:そうそう。「sting sting」とかね(男性器を誤魔化して表現)。法の網をくぐっているようなもんよ。
澤井:なるほど(笑)。だから余計に馬鹿らしくポップな感じになるんですね。
森:とあるNGワードを使った歌ネタのタイトルは「Dear My Friend」っていう正統派な感じで、メロディーもめちゃくちゃ爽やかなんだけどね。まあだからこそ「きゃんたま」みたいにオブラートに包んで。
江口:AVにモザイクかけているようなもんだよ。
澤井:めっちゃわかりやすい喩え!
江口:歌詞を考えている方は割と真剣なんだよ(笑)。どのワードを使うかで、やっぱノリが変わるからね。
森:途中で喧嘩になることもよくあるよ。僕らぐらいじゃない?「おっぱい」をどう表現しているかで喧嘩している人なんて(一同笑い)
澤井:いや、本当に失礼な言い方ですけど、めっっちゃ馬鹿ですね。
江口:今はないけど、本当に昔はよく喧嘩したよ。熱が入りすぎて泣いたりしていましたからね(笑)
森:本当に喧嘩の原因もくだらないし、今思うと恥ずかしいけどね(笑)
澤井:ラジオの時にも喧嘩してましたね。
森:そうそう。澤井くんは気まずそうに見ていたね。
江口:「俺がこうしてんだからこうしろよ!」とか「もっと突っ込めよ!」とか。熱い激論を交わしてましたよ。まあ内容はくだらないんですけど(笑)
澤井:熱量やこだわりをめちゃくちゃ感じますね。以前森さんと浅井企画の稽古場で、ホワイトボードに女性のおっぱいを描いて、理想の形について2時間ぐらい激論していて。当時は「僕たちは何をしているんだろう」と思いましたが(笑)
江口:まあそういうところがネタに繋がっているんでしょうね。
澤井:今年はテレビやラジオ以外でも活躍の場を広げている印象です。
森:最近ではありがたいことにミュージシャンのライブにも参加させていただく機会が増えて。テレビではできないような歌ネタも披露できる。ライブは自由に発散できる場所なのでとても楽しいですよ。
江口:フェスにはどんどん出ていきたいね。音楽ライブはウケるウケないに加えて会場の熱を感じれるので。その盛り上がり方というか会場のボルテージもお笑いライブとは全然違うんですよ。より波をブワーっと感じるというか。
監督が語る映画出演時の江口
澤井:結構ミュージシャンの知り合いも多いんですか?
江口:んーAMEMIYAさんとか?
森:いや、あの人芸人だろ(一同笑い)
澤井:今年はミュージシャンの方とツーマンライブもやると聞きました。
森:石崎ひゅーいさん、キュウソネコカミさん、MOROHAさんとツーマンライブですよ(石崎ひゅーいとは2月24日に東京・WWWで、キュウソネコカミとは3月8日に大阪・umeda TRADで、MOROHAとは3月9日に愛知・名古屋CLUB QUATTROで敢行)。これまでもちっちゃな箱ではひっそりやっていたんだけど、大々的にやるのは初めてかもしれないですね。しかもツーマンですから、よく受けて頂いたなあと。
澤井:しかも映画にも出演されるんですよね。
江口:はい、3月18日公開の「クモとサルの家族」という宇野祥平さんと徳永えりさんがW主演の映画に。
澤井:どんな映画なんですか?
江口:舞台が江戸時代で、家族の家族をテーマに描いた作品です。時代劇にしては爽やかいうかおしゃれな感じで。
澤井:個人的には森さんのシーンが印象的で。
森:おい、それいじってるやろ(笑)。俺ワンシーンしか出てないぞ(笑)
澤井:いや本当に面白かったんですって! しかも今回は主題歌と劇中歌も制作されたんですよね。
森:そうそう。江口さんがキャスト側でガッツリ出演していた分、僕は時間があったので曲を担当して。いつも歌ネタを作るときは何の制約もなく自由にできるけど、今回のようにテーマや作品の雰囲気に合わせて作曲するのは新鮮な経験だったね。
澤井:なるほど。江口さんは演じる上でいかがでしたか?
江口:僕は1週間ぐらい小豆島で撮影をしたんだけど、そもそも長期的な撮影自体が初めて。仕事に対しての人生観が変わるような経験でした。映画に関わってらっしゃる方はすごくロマン溢れる感じで、役者だけでなく衣装やメイクの皆さんも1つ1つの細部へのこだわりが強く、良い意味で職人肌気質。そういう人が集まって1つの作品を作っているから世界が出来上がっているというか。
森:僕もワンシーンだけ途中から参加したけど、もう現場の空気が出来上がっているんだよね。ちょうど寒い時期だったんで、ベンチコートを着ていかにも映画人みたいな雰囲気を醸し出して、撮影に参加していました(笑)
江口:あの時の俺らは映画人ぶってたね(笑)
(ここで「クモとサルの家族」の監督を務めた長澤佳也氏が対談に参加)
澤井:江口さんの演技はいかがでしたか?
長澤佳也監督(以下、長澤):最初の衣装合わせの時は、結構緊張されているのかなという印象で。でもその緊張感が周りにも伝播していい感じに場が引き締まったんですよね。それから江口さんも、宇野さんや徳永さんとの絡みでどんどん役に入られていって。良い化学反応でしたよ。
森:江口さんの真面目なところが出てますね(笑)
江口:監督からは自由にやっていいよと言われて助かりました(笑)
長澤:日数も重ねるごとにどんどん演技も上手くなってきて。
江口:え~ほんとですか。嬉しいですね~。
長澤:宇野さんと江口さんの2人が、物語のクライマックスで大きな荒野に入るシーンがあるんですけど、撮影の合間に2人がふんどし姿で肩組み合ってて。側から見てて江口さんがすごい様になってましたね。とても良いツーショットだと思いました。
「料理番組をやりたい」
澤井:今年はライブに映画とマルチに活躍していますが、今後はどうですか?
森:まあラジオやロケもそうだけど、割と自分たちで好き勝手やって楽しめる仕事が増えてきたのは幸せだなあと。
江口:それこそ喧嘩していた頃とかは「いろんなことやらなきゃ」「あれもやらなきゃ」って切羽詰まってましたけど。もう最近はやれることをやるというスタンスで無理はしない。下ネタもそうですね。
森:やっぱ自分達に合うスタイルっていうのはありますから。漫才やコントで下ネタをやってもあまり受けなかったのが、歌になった途端に急にウケるようになったり。
江口:歌だとお互いこんな感じで行こうかと話して、気づいたら20~30分で曲ができてたりとかもあるよね。
森:当時は一生懸命喋りが上手くならないといけないと思っていた時期がもあったけど、色々と仕事していると、正しい方向性というかしっくりくる道に導かれていきますよね。
澤井:今後やりたい仕事はありますか?
江口:まあ今年はM-1を目指そうかなと。
森:いや聞いてねえよ(笑)
江口:もうボケとかツッコミとか忘れちゃったよね(笑)
澤井:この一連の流れがちゃんと漫才でしたよ(笑)
江口:まあぶっちゃけると、料理作ってゲストを呼んで晩酌するみたいな料理番組とかやりたいですね。
澤井:めちゃくちゃいいじゃないですか。
江口:森さん料理上手だったよね。
森:独身時代、エビとブロッコリーのクリームパスタとか作ってたね。バイト先の料理長に教えてもらって。
江口:それで女性ゲスト呼んで、毎回エビとブロッコリーのクリームパスタ作って出そうよ。
森:番組続ける気ある?(笑)
江口:きっと澤井くんがなんとかしてくれるから(笑)
澤井:ちょっと頑張って企画してみます(笑)。ぜひまたお二人と仕事したいので!
今日はありがとうございました。また飲みにでも通れてってください。
江口&森:ぜひ! ありがとうございました。
映画『クモとサルの家族』
2023年3月18日(土)から全国順次ロードショー
プロデューサー・脚本・編集・監督
長澤佳也
主演:宇野祥平 徳永えり
出演:田畑志真 リー・ファンハン チャオ・イーイー ニエ・ズーハン 江口直人(どぶろっく) 黒羽麻璃央 緒川たまき 仲村トオル 白石加代子 奥田瑛二
主題歌:どぶろっく
聞き手・澤井直人(さわい・なおと)
1990年生。テレビの放送作家として活動。まつもtoなかい(フジテレビ) ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ(フジテレビ)NEOべしゃり博(フジテレビ)タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!(テレビ東京)ダウンタウン vs Z世代 ヤバイ昭和 あり?なし?(日本テレビ) サウナノフタリ(YouTube)コブクロ公式チャンネル (YouTube)などを担当。
構成・文/佐藤隼秀 撮影/矢島泰輔