「20年以上やってきた芸能生活でいちばん追い込まれ、自信がなくなりました」
サスペンスヒューマン映画『赦し』の母親役で感じた難しさ
映画『赦し』(3月18日公開)で、高校生の娘を殺された母親・澄子を演じたMEGUMI(41)。
澄子は、7年前に娘を同級生に殺害されて以来、現実逃避を重ねてきた元夫・克(尚玄)から加害者の夏奈(松浦りょう)に再審の機会が与えられたことを知らされて裁判所に赴く。夏奈の釈放を阻止するために証言台に立つ克と、過去に見切りをつけて新しいパートナー(藤森慎吾)との生活を始めている澄子との思いがすれ違うなか、殺人に至った動機が明かされていく――被害者遺族の元夫婦と服役中の女性、それぞれの葛藤と人の心の深淵に迫るサスペンスフルなヒューマンドラマだ。
「難しかったです。現実的ではない設定だけど子どもを殺されることは現実にあるので、そういう経験をされた方の気持ちにいかに近づいていくか、とても時間をかけました。被害者遺族のインタビューやニュースを見るうちに、自分が想像していたものとはまったく違う感覚が(被害者遺族の)みなさんのなかにあったりしました。
それは、自殺を考える方が結構いらっしゃるということ。反面、自分が死んでしまったら娘のこと、息子のことが誰の記憶にも残らなくなる。そういう言葉に出合ったことは、知りえない世界でそこに到達するまで時間はかかったと思います。
澄子はつらい、苦しいだけじゃない複雑さを身体のなかにいっぱいため込まないといけない役。元夫は“娘がかわいそう”と、とどまっているけど、澄子はそこから脱却して新しく人生を歩んでいる。ふたりの概念や感覚、成長のスピードの違いを大事に演じました」
逃げ場がなかった撮影現場
オーディションで役を射止め、インド出身の監督、スタッフもほぼ外国人という初めての環境で撮影に臨んだ。
「例えば、澄子は一度もバッグを持たず手ぶら。違和感があるけど監督は気にしない。(撮影や役への)アプローチの仕方も全然違って、言葉が通じないからこそ細かい部分を感じ合って作れたと思うこともあるので、現場での不安定さと集中が澄子の役にも反映されていると思います。
撮影場所にプロデューサー、マネージャー、ヘアメイク、スタイリストが入れないのも初めてでした。照明、カメラ、音声、通訳、俳優と合わせても6、7人だけ。逃げ場がなくて(悩みや相談を)吐き出したいけど吐き出すこともできない。腹をくくってやるしかなかったし、乗り越えていかないといけないと感じる毎日でした」
人気グラビアタレントとして一世を風靡しバラエティー番組で活躍。結婚、出産を経た約10年前から女優に本腰を入れるため演技レッスンのほか日舞や茶道にも取り組み2019年に『第62回ブルーリボン賞』助演女優賞を受賞し、実力を証明した。
「女優さんにはいろんなタイプがいると思う。主役をお願いされ、やったらめちゃくちゃ上手で、いつでも求められる人がスター。残念ながら私はそうではなかった。
この世界に楽しくい続けるためには努力しかないと思いました。女優の仕事がなかった期間もあります。つかめない雲をつかむようにいろんなことをやってきたからこそ今があると思っています」
一人5役をこなすMEGUMI、発散したいときはひとりサウナで
近年はプロデューサーとして作品作りにも力を注いでいる。
「始めたきっかけはコロナ禍です。最初の自粛期間中、芸能界の仕事が受け身だけだったら厳しいと感じて、発信していく仕事をしていこうと思い興味のあった映像を作り始めました。ゼロから1を作り出す作業は興奮するし、幸福なことだと実感しました。
女優は演技だけに集中すればいいけど、プロデューサーは製作費の管理、お弁当の発注、演者のケアなど多岐です。問題が起きることが多く、朝お金が足りないと目を覚ますこともありますよ。プロデューサーをやるようになって、女優のときに“何、待ち?”とか言わなくなりました(笑)」
金沢でカフェを経営する起業家でもある。母、妻と合わせると一人5役をこなす。
「たまにはパニックになりながらも自分の体調や精神面の状況に対応できるようになっています。愚痴や文句は誰かに当たってもいいことはないと思うので、発散したいときはひとりでサウナに行って整えると、すっかり忘れることができます」
公私共に忙殺されているのは想像に難くない。
「起きた瞬間からフルマックスです。早朝、息子の食事を作って、地方で撮影。移動中にズームで3本打ち合わせ。1日15個くらいのタスク(仕事)をこなしているほうが調子いいです。バランスをとるというよりも全部同じトーンでやっている感じ。エネルギー過多みたいで、周りの人たちは迷惑かもしれないですね(笑)。
すべてにやりたい気持ちがあるから健康にも気をつけています。一生はできないかもしれないけど、とりあえず40代はこのまま頑張ります!」