ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手がワールドクラスのパワーを見せつけた。
3月6日に行われた、『WBC(ワールドベースボールクラシック、3月8日開幕、日本代表の初戦は9日)』に向けた、野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合。3番指名打者でスタメン出場すると第2打席、3打席で2打席連続のスリーランホームランを放った大谷選手。
試合は侍ジャパンが8対1で勝利を収め、うちの6点を叩き出すという、まるで漫画のヒーローのような活躍ぶりに満員の京セラドーム大阪は大歓声に包まれたのだった。
片や、大谷選手の活躍でお祭りムードとなった試合で、別の意味で盛り上がっていたのが対戦相手となった阪神タイガースのファンだった。熱狂的ファンが多いことで知られる、時にスタジアム内外で問題行動を起こしがちな「阪神ファン」。
「いや、まあ実に阪神ファンらしいと言いますか(笑)」とは、取材に当たったスポーツ紙の野球担当記者。この大舞台で何をやらかしてしまったのだろうかーー。
「各球団にはチャンスや得点時に歌う応援歌がありますが、中でも熱が入るのが得点のチャンスを迎えた時の“チャンステーマ”。特に阪神のホーム・甲子園での大合唱は相手チームやファンを圧倒するほどの気迫を感じます。
そのチャンテ歌詞の中で、“○○倒せ!”と対戦チームの名前が入る掛け声があるのですが、12球団の中でも阪神ファンが“待ってました”とばかりに大声を張り上げる瞬間でしょう。ただ、今日の相手は侍ジャパン。どうなることかと思っていました」
実は試合開始直前の「阪神タイガース応援団」公式ツイッターでは【お知らせ】として、こんなアナウンスがなされていた。
「○○倒せ」を「絶対勝つぞ」に変更
《本日行われます、侍ジャパンとの強化試合にて使用するチャンステーマの運用を以下の通りと致します。
◆チャンス襲来
(通常)ドンドドンドドン○○倒せ!
(強化試合)ドンドドンドドン絶対勝つぞ
◆チャンスわっしょい
(通常)○○倒せーオー!
(強化試合)絶対勝つぞタイガース!
普段はチーム名が入る「○○倒せ」の部分を「絶対勝つぞ」に変更するとのいうもので、試合前に撮影した応援練習動画も合わせて投稿。ペナントレースの“敵チーム”ではないこと、また侍ジャパンの強化試合であることからの措置なのだろう。
ところが、3回表に大谷選手のホームランが飛び出した裏の攻撃、1点を返した阪神はなおも追加点のチャンス。当然、応援席からはチャンテが流れて……。
「当初の練習通りに“絶対勝つぞ!”と応援変更を守るファン、それを知らずか“サムライ倒せ!”といつも通りの応援をするファン、そして次第に声が大きくなっていったのが“読売倒せ!”の掛け声でした(笑)。
これを聞いたドーム中の野球ファンが失笑しつつ、“阪神ファン、やったな”と。まあ公式戦ではない、しかも大谷選手のホームラン直後だっただけに場内は終始和やかな雰囲気でしたね」(前出・野球担当記者)
WBC主催はMLBと読売新聞だった
「読売倒せ!」と名指しされたのはもちろん「読売ジャイアンツ」のことだろう。長いプロ野球の歴史とともにライバルとして競ってきた球団だけに、阪神ファンに染みついているフレーズなのだろう。
ただ、この日のドーム内に響いた「読売倒せ!」は、一部関係者にとって一切笑えない内情もあるようで。記者が声をひそめる。
「阪神さんは“巨人を倒せ”の意味と受け取るでしょうが、この阪神との強化試合も含めた本大会の主催は、MLBとMLB選手会による『ワールド・ベースボール・クラシック・インク』と、読売新聞社なんです。
WBCよりもプロ野球の方が大切という野球ファンもいるでしょうし、万一にも大会で選手が怪我をすればペナントレースに響く恐れもある。阪神からも湯浅京己投手と中野拓夢選手が招集されています。
そういう意味では、阪神ファンが叫んだ“読売倒せ”はあながち間違いではないと言えますし、現地の読売関係者は顔を引きつらせていたのかも(苦笑)」
同じく3月7日の強化試合、韓国代表チームを相手にした阪神ファンは通常通りのチャンテで「韓国倒せ!」を大合唱したとのこと。彼らの“チーム愛”もまたワールドクラスということで。