今年の1月にがんの再々再発の告知を受けたことを公表した女優の古村比呂さん(57)。2019年1月に再々発の抗がん剤治療を終えてからちょうど5年のタイミングだった今年、どんな心境でそれを受け止めたのか、また現在の体調やこれからへの思いなどを聞いた。
5年ぶりの治療で医療の進歩の速さを実感
「再々再発を知らされた時は、ショックというよりも“なんで5年目に”と落胆する気持ちがいちばんでした。完治は難しいと先生から言われてはいたのですが、5年がひとつの区切りかな、という思いがあったので、“もしかしたらよくなるかも”っていう思いがありました」
しかし、その思いはもろくも打ち砕かれる。ガクッと落ち込んで涙が止まらなかったことも。いままで3度、抗がん剤治療をしてきて、そのツラさを知っているぶん、当時の治療を思い出して、「またあの治療をやるのか……嫌だ……」とやり切れない気持ちにもなった。
それでも前を向けたのは、担当の医師から「諦めていません」という言葉をいただいたから、と語る。
「打つ手がない状況ではなく、まだ“治療ができる”という先生の言葉に救われましたね。そのときは、いいことを探してそれに乗っかろうという気持ちでした」
5年ぶりに治療を受けると医療が進歩しているのを身をもって実感したという。
「2月からステージ4と同じ抗がん剤治療をスタートしたのですが、吐き気や痛みなどの副作用はフォローアップするお薬が随分と出てきているので、薬で対処しながら吐き気やしびれを抑えています。でもそれによって、むくみが出たり便秘になったりといった新たな症状に悩まされていますが、それはしょうがないですね」
ほかにも、脱毛やかゆみ、動悸などの副作用に悩まされているという。
「髪は8割がた抜け落ちてしまったので、息子にバリカンと髭剃りできれ~いに坊主にしてもらったんです。撫で心地が気持ちいいんですよ(笑)。
普段はいままで使っていたウィッグを引っ張り出していろいろなヘアスタイルを楽しんでいます。派手なウィッグもやってみたいなと思っていて。金髪もかぶってみたいし、Amazonのポイントで買ったアフロヘアはかぶると気分が吹っ切れるんです」
痛みやストレスの発散は大声でシャウト
ブログではダジャレを飛ばしたり、明るい発信が目を引く。落ち込んだりクヨクヨしたりといった気持ちの揺らぎはないのだろうか。
「人間なのでもちろん、落ち込むことはあります。がんばって明るくしていると疲れて身体もしんどくなってしまうし。だから、どーんと暗く落ち込んだり、泣きたくなったら泣いたり、身体に逆らわずに我慢しないで身体をリセットするようにしています」
副作用で気持ちのアップダウンも激しくなるそう。
「そんなとき、“こんなのは自分じゃない”って自己否定しがちなんですね。でもこれは副作用で仕方ないんだと思うようにしています。そして、心の中に我慢やストレスをため込まずに吐き出すようにしています。窓を閉め切って大声で叫んだり、クッションを投げたり……(笑)。それって自分でできる治療ですよね。
がんになって、がんばらない時間を作ったり、なるべく我慢もしないようになりました」
「治療できていることも幸せ」
4度のがんを経験していま思うこととは――。
「10年前、46歳で告知を受けたときは、がんのことを全く知らなかったので“もう死ぬんだ”とショックを受けました。でもこの10年でがんの治療は速すぎるくらい進歩しています。
“がんと闘う”というより治療しながら仕事をして日常を送っていく、そういう時代が来ていると思います。
私の場合、完治が難しい状況なのは、受け止めたくないけれど現実です。だからこそ、“拳を上げてがんと闘う”というのではなく、うまくがんと共存していこうっていう向き合い方がぴったりきていて。“がん細胞さん、ちょっといい子にしててね、よろしく”ってくらいの感じが私の中ではラクなんですね、すごく」
治療中で感染症のリスクが高いため、気軽に外出できないことや人と会えないことがツラい、と古村さん。でも、「生きていること、過ごせていることが幸せ。治療できていることも幸せです」とも語る。“いまを楽しく生きたい”という願いとともに、ライフワークにされているがんの啓もう活動も続けていきたいと話す。
「がんは誰でもなる可能性のある病気ですから。もし自分がなったらというシミュレーションは大切です。知っているのと知らないのとではコワさの度合いも違いますし、コワいと耳をふさいでしまって、結果、後悔することもあります。最良の治療のこと、お金や保険のことなど予備知識をしっかり入れておくと、病気になったときに全然違うので、そういった情報はこれからも発信していきたいです」
この先、治療がお休みできて、コロナの不安がぬぐえたら、できれば今年中に全国を回ってサバイバーさんやリンパ浮腫の方と、直に気持ちをシェアしたいという。特に、がんの啓発に話が及ぶと、「少しでも多くの人にいろいろな知識をもってもらいたい!」となによりも熱く語る。
4度のがんサバイバーとして、全国を飛び回る日々が1日でも早く訪れる日を願っている。