荻原博子さん 経済ジャーナリスト。経済の仕組みを生活に根ざして解説する。家計経済のパイオニアとして活躍。

 昨年、激しい腰と脚の痛みに突然襲われたという荻原さん。慌てて病院へ行ったところ、長年の運動不足や体重増加が重なって発症した座骨神経痛と診断された。

ダイエットは家計見直しのチャンス

「少しやせたほうがいい。5kgやせれば1年寿命が延びる」という医師からのアドバイスもあり、毎日の生活を見直すことに。

「同じ時期に、すごい飲ん兵衛だった友人がお酒をやめたら、身体が軽くなって『背中に羽が生えてくるのよ』と言っていたんです。私もお酒が大好きで、毎日晩酌していたのですが、食べすぎてもしまうので、友人の言葉もあって半信半疑でお酒をやめることにしたんです」

 さらに野菜中心のメニューにして白米から玄米に切り替え、つい食べてしまっていた間食もなるべくやめた。夜8時までに食事を終えて翌日は朝10時までは何も食べず、毎朝の犬の散歩に加えて室内での運動を取り入れたところ、半年かからずにするすると5kgもやせたそう!

「以前、鍼治療で一気に10kgやせたことがあったんですが、そのときは断食をしたりなどかなり無理をしてつらかったんです。でも、今回は楽に体重が落ちました。小腹がすいたらお菓子をつまむ、夜になったら晩酌する、お酒を飲まないと眠れないなど、習慣になっていることってありますよね? 家計の見直しと同じで、そうしたついつい習慣になっているムダをやめるのがコツです」

 やせてきたことを実感したとき、重大なことに気づいた。

「酒代や一緒に食べるおつまみ代、そして小腹がすいても食べないことにしたらお菓子代も浮いた。これはもしや、と思っていろいろと計算してみたんです」

1年長生きすれば年金受給も1年延びる

 荻原家の家計を見直したところ、かなりのお金が浮いたことが判明。

酒とつまみで1日500円だとして、1か月で1万5000円、1年で18万円が浮く計算です! コロナもあって外食も減りましたから、これも大きい。そして私は70歳になってから年金を受給することにしているので、やせて1年長生きしたら、毎年約100万円もらえるということになるんですよね。年金は死んだら支給は終わりますから。でも今の健康な状態でずっと生活していければ、得られる価値は100万円どころじゃないんです

 やせずに座骨神経痛などで医者にかかれば、診察代や薬代でお金も時間もかかるうえに、先々の不安まで増してくる。それが、健康的にダイエットしたことで体調が良くなったうえに、貯金まで可能に!

メタボリックシンドロームの人と非該当者の医療費の差※平成24年厚生労働省調査課「医療費の見通しの推計方法について/メタボリックシンドローム該当者・予備群と年間平均医療点数の関係」をもとに作成(出典:5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約)

「メタボ該当者はもちろんですが、メタボ予備軍の人も含め、年間に支払う医療費は性別にかかわらずメタボではない人より高くなる傾向があるんです。私の試算ですが、窓口で支払う金額は女性だと年間3万~5万円の差が出てくる。健康診断などで『やせたほうがいい』と言われたことがある人は、ぜひ生活を見直してダイエットを!

“節約できてる”実感がダイエット長続きの秘訣

 荻原さんはやせたことで、あんなに痛かった座骨神経痛が今ではウソのように治ってしまったと言います。

「以前は身体が重くて、犬の散歩もしんどいことがありました。でも今は身体が軽くなってどんどん歩けるようになりました。そりゃそうですよね、5kgのお米って重いですけど、それが身体についてたんですから(笑)。脚の痛みもなくなったし、できればあと5kgやせるのが目標です」

 ダイエットを続ける秘訣は何でしょう?

“絶対”はダメで、“なるべく”くらいにしたほうがいい。お菓子だって『絶対食べちゃいけない』だと、一度失敗したらおしまいって落ち込んでしまうけど、『なるべく食べない』なら、たまに食べたっていいんですよ。だけどそれが習慣になってしまうとダメ。ダイエットは家計簿と違って“どんぶり勘定”でOK。最終的に体重が減っていればいいんですから」

 体重と一緒に家計の出費も減って、ムダ遣いが改善されるなら、いいことずくめだ。もうすぐ初孫が生まれるという荻原さんは「100歳まで健康に、元気に生きたい」と笑う。

「楽しい老後がいいですよね。たとえお金があっても、不健康で暗い老後は楽しくありませんから。やせると見た目も、気持ちも、身体の数値も若くなります(笑)。もし時間があったら、近著『5キロ痩せたら100万円』を読んでください。健康がいかにお得かをていねいに説明しているので、確実に家計の節約につながりますよ!」

アプリ・保険もいろいろ…歩いてポイントゲット! 健康だとお得!?

荻原流ダイエットde節約術!以前は高血圧で投薬を考えていたが、今では血圧も下がって必要なし。昔の洋服も入るようになり、洋服代もカット! 深酒をやめたので、睡眠も深くなり、朝もスッキリ。むくみもとれて、肌ツヤも良好に。美容アイテムをあれこれ買わずに済むように。

 自治体や企業、保険会社などでは、個々の健康を後押しするため、毎日歩いたり、健康に過ごしている人にポイントの還元やお得な割引を用意しているところもある。ぜひ調べて活用してみよう。

●健康なら生命保険もお得に

 例えば東京海上日動あんしん生命の「あるく保険」、イオン・アリアンツ生命の「元気パスポート」という終身医療保険の「健康支援金」機能など。毎日よく歩いたり、保険を使わなかった健康な人にはキャッシュバックがある医療保険も登場している。

●歩いてスーパーのポイントゲット!

 イオンのWAONポイントがもらえる「RenoBody(リノボディ)や、スギ薬局のウォーキングアプリ「スギサポwalk」など、スマホのアプリと連携して設定歩数を達成すると、お買い物で使えるポイントがもらえるサービスも!

●各自治体による“健康”になるための施策

 毎日のウォーキングをスマホアプリなどで記録してポイントを貯めると、商品券が当たったり、さまざまな特典が得られる「健保ポイント制度」が導入され出している。

荻原博子さん
1954年生まれ。生活に根ざした視点から、家計とお金の話をわかりやすく解説する経済ジャーナリスト。近著に『5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約』(PHP新書)

<取材・文/成田 全>