インタビュー取材に対して熱心に答える宮本和知

 往年は巨人のピッチャーとして活躍し、現在はスポーツコメンテーターなどを中心にタレント活動を続ける宮本和知(59)にインタビューを敢行。1次リーグを全勝で通過したWBC日本代表の展望を解説しつつ、優勝するための見解を語った。また宮本は、22年に「読売ジャイアンツ女子チーム」の監督に就任。還暦を控えなお、熱血なキャラクターを生かして野球界に貢献する理由を聞いた。

 3月8日に開幕したWBC。1次リーグを全勝で通過して勢いに乗る日本代表について、宮本は「あくまでも日本の持ち味である細かい野球を貫くこと」が優勝へのカギだと解説する。

今大会は大谷やダルビッシュなどの海外組も参加して豪華メンバーになりましたが、やるべきは送りバントやクイックモーションなどで細かくつなぐ、日本らしい野球なんですよ。そう言った意味で周東佑京選手は、同点や1点ビハインドの場面でキーになる選手だと思っています。

 もちろん僕自身も大谷選手の一発を期待していますが、国別対抗の短期決戦であればなおさら国のカラーを生かした野球が問われる。アメリカやキューバなどの足元をすくうような野球を続けていけば決勝進出は堅いでしょう。大舞台だからといって、他の選手も『大きいのを狙おう』と力まないで欲しいですね」

野球人口を増やすために「女子チーム」を設立

 かつては宮本も、ロサンゼルスオリンピックで世界一を経験した選手の1人だ。国際大会ではよりチームワークや綿密な連携が重視されるなか、日本代表の雰囲気は良好だと期待する。

ダルビッシュなどベテランの先輩から、後輩に歩み寄っていく光景を見ると、今はいい時代だなあとしみじみ感じますね。ダルビッシュは現在36歳にもかかわらず、つい先日に6年契約を更新したばかり。こうした息の長い選手が日本の選手にも知見を与えてくれることで、日本の野球界も活性化する。

 僕が現役の頃はまったく逆の雰囲気で、王さんや長嶋さんなどの先輩選手にどこか話しかけちゃいけない空気感があったんですよ。だからこそWBCのように、海外組が合流して一緒に戦う機会は本当に貴重ですし、後輩も素直な選手が多いのでね。日本代表は団結力の強いチームだと思いますよ

 プロ選手引退後の宮本は、タレントやコメンテーターの印象が強いが、近年では指導者としての活動にも注力している。2019年からは巨人の一軍投手総合コーチを担当した後、球団社長アドバイザーに就任。同年に「読売ジャイアンツ女子チーム」の立ち上げに携わり、初代監督として今季から本格的に稼働を開始する。

 その背景には「野球人口を増やしたい」という原動力があった。

今は少子化もあって男子の野球人口がどんどん減っているんです。そこでなぜ女子野球のチームを設立したかというと、最終的に野球経験者の女性の指導者を増やしたいと思ったんです。というのも、いまだに少年野球チームの試合を見ていると、男性で高圧的な態度の監督を見かけるんですよね。椅子にふんぞり返って、子供がミスすると『オラぁー!』って感じで叱る監督が……。おいおい辞めてくれよと(苦笑)。こういう高慢な態度が男子の野球不足の一因なのだと痛感しますよ。

 そこで一度、妻に自分の野球の知識を伝えて、『(宮本が運営を務める)少年野球の指導を手伝ってくれないか』とお願いしたんです。そうしたら『ボールを捕るときはグローブをワニさんの口のようにして~』など優しく指導してくれて、とても好評だったんですよ。今では娘も指導を手伝ってくれています。結果的に、女子の野球経験者を増やすことは、野球界全体の人口底上げに直結するはず。その第一歩として、女子野球チームを設立しました

「ズムサタ」で野球の話はほとんどしなかった理由

 今年から本格的な稼働が始まり、3月中旬には公式戦も予定している。今後は軌道に乗せていくため収益化に力を入れていく。

今後の目標はチームをプロ化して収益化すること。いま現在は試合の入場料も取っていませんが、スポンサー契約やグッズ販売を手がけて、ゆくゆくは選手のために収益化していかないといけない。あくまでも理想ですが、年収3000万円の選手が出てくるぐらいの規模に持っていきたいですね」

 日本野球の底上げに貢献したいと奮起する宮本だが、その想いはメディアに出演する際も同じだった。18年まで長年レギュラーを務めた「ズームイン!!サタデー」の思い出を振り返りつつ、メディアとの向き合い方をこう語る。

熱心にインタビューに答える宮本和知

「僕がズムサタで意識していたのは、『どうしたら視聴者に日本経済を回してもらえるだろうか』ということです。土曜の朝の放送後に家族で球場に足を運ぶなど、放送を機に外に出かけてくれるにはどうすればいいかを考えていました。

 そこで内容はバラエティに寄せた感じで、堅苦しくない方向性にしようと考えました。もちろん前日の試合結果を伝えることは大事ですが、そこまで詳しい解説はいらない。家族で観ててもちょうど良い温度感にするには、『野球選手の好物は何か』とか、『休日には何をしているのか』など、プライベートなことを聞くのがいいんですよ。

 実際に21年間、毎週ジャイアンツの取材を担当してきましたが、そこでは野球の話ってほぼしていないんですよね(笑)。坂本勇人はおでんの具なら何が好きとか、岡本和真は何味のラーメンが好きかとか。それで親子の会話が弾んでくれたらと思ってました。

 そのスタンスは現在でも変わりません。昨年はサッカーワールドカップが盛り上がったので、今年はWBCの番ですね。野球界が盛り上がってくれるよう、いち発信者として熱血に情報を伝えていくのが自分の使命だと思っています」

 還暦間近でもなお、精力的に活動を続ける宮本。野球界をリードする存在として今後も様々な活動を続けていくーー。


構成・文/佐藤隼秀  撮影/吉岡竜紀