いま最もアツイ日系メジャーリーガーだ。
開催中のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンの斬り込み隊長として存在感を見せているラーズ・ヌートバー。ヒットを打った際の「ペッパーミルパフォーマンス」はチーム内での定番ジャスチャーとなり、ファンの間でも大ブームになった。
電車に乗ろうとしたら止められて…
明るいキャラクターで、侍ジャパンでは常に輪の中心。その陽気な人柄のルーツは母親の久美子さんにありそうだ。
ヌートバーは埼玉県東松山市出身の母・久美子さんとオランダ系アメリカ人の父・チャーリーさんとの間に生まれた3人きょうだいの末っ子。長男のナイジェルさんとヌートバーは野球以外にもバスケットボールやサッカーを経験。
ナイジェルさんはオリオールズ傘下の1Aで投手を務めていたが、メジャーに昇格することはできずその夢を弟に託した。今回、WBC合宿の来日前にはヌートバーの打撃投手を務めていたという。
そして、母の久美子さんは中学高校時代、ソフトボール部で大の野球好きでもあった。WBCの試合中、息子が活躍すると周囲のファンとハイタッチして喜びを爆発させる様子がたびたびテレビに映し出されている。息子だけでなく、母も輪の中心にいた。
「久美子さんは陽気で気さくな人。メディアにも分け隔てなく接してくれる。テレビ局がインタビューでプレゼントしたペッパーミルを観戦時に持参。そのミルを捻る姿が東京ドームの大型ビジョンに映されて場内はどよめきました。今や『球場で最も有名な母親』として定着し、ファンからの写真撮影にも応じている。
練習がオフだった14日には日本を観光するため、ヌートバーと電車に乗って出かけようとしたらスタッフに止められたとか(笑)。気取らない人柄の良さをヌートバーも受け継いでいるんだなと感じました」(テレビ局関係者)
久美子さんの影響は大きく、ヌートバーの食事や日常生活は日本文化にどっぷり染まっている。
「米国の自宅でも玄関で靴を脱ぐ生活をしていて、食事は米が中心。納豆やわさび、梅干しも好んで食べているそうです。久美子さんは子どのが小さいころからおにぎりや卵焼きなど、日本では定番のお弁当を作って持たせていたことが影響しているかもしれません。サンドイッチ弁当が当たり前の米国の学校で、ラーズ一家の弁当は注目の的だったようです。
時間に関しても久美子さんの教えが浸透しているのか、『時間厳守』『5分前行動』『先輩を立てる』という感覚が体に染みついている。メジャーリーガーは時間にルーズで平気で練習に遅れてくるイメージがあったので、やはりヌートバーは生粋の日本人だなと思いましたね」(スポーツ紙記者)
「シリアルバー」を出す夢
予選を終え、練習が休みだった14日にはヤクルトの村上宗隆やオリックスの山本由伸らと都内の高級寿司店へ。大谷翔平の通訳を務める水原一平通訳をまじえて親交を深めた。
ヌートバーは2018年にカージナルスからMLBドラフト8巡目で指名され、21年にメジャーデビュー。そして昨年、インスタグラムにある人物からダイレクトメッセージが届く。送り主は水原通訳だった。
ヌートバーは会ったことも話したこともない。しかし、二刀流プレーヤーとしてメジャーリーグを席巻してきた大谷の関係者からのメッセージとなれば、浮き足立つのも無理はない。すぐに電話をかけ、自身が日本代表候補に挙がっていることを知らされると、二つ返事で「出場したい」と意思を伝えたという。
メジャーリーガーという夢だけでなく、日本代表という夢も叶えたヌートバーには、さらにもうひとつの夢があるという。
「自身の名前が入ったお菓子を開発して販売することです。いわゆる『スニッカーズ』や『カロリーメイト』のようなシリアルバーを売り出したいそうで、そのために『NOOT』や『NOOOOOOT』など複数の表記を商標登録している。しかもプロ入り間もないルーキー時代に出願しています。WBCで日本代表が世界一となれば、米国より先に日本で発売することになるかもしれませんね」(前出のスポーツ紙記者)
16日のイタリア戦が終われば舞台は米国へ移る。日本の「ヌートロス」が心配だ。