「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
直撃取材でカメラマンに気づいた小倉優子('18年11月)

第83回 小倉優子

 昨年の1月、『100%アピールちゃん』(MBS毎日放送)にて、大学受験に挑戦することを発表し、早稲田大学教育学部を第一希望にすると宣言したタレントゆうこりんこと小倉優子。

 受験勉強に奮闘するゆうこりんに密着した同番組は終了してしまいましたが、『月曜の蛙、大海を知る』(MBS毎日放送)の「緊急発表!小倉優子(39)大学受験 合格発表SP」にて、早稲田大学の合格は逃したものの、白百合女子大学に合格、学習院女子大学に補欠合格したことが発表されたのでした。

現役の受験生よりハンディがあった

 芸能人が大学受験に挑戦する企画はこれまでもありましたが、ゆうこりんが彼らと明らかに違うのは、彼女が仕事をしながら三人の子育てもしなければならないことと、大学受験未経験なこと。現役の受験生よりも年齢が上ですから、体力や記憶力の面から言ってもハンディがあるでしょう。

入試の後、密着番組のコメント撮影に笑顔で応じた小倉優子

 基礎がない分、勉強により多くの時間が必要とされるでしょうが、仕事や子育てで時間を捻出することが難しい。そして、これはテレビの企画ですからエンタメであり、ゆうこりんは見せ場を作らなくてはいけない。もし、ゆうこりんが一校も合格できなければ視聴者は爽快感を得られませんし、家庭教師軍団の評判にも関わってくるかもしれません。かといって全部合格してしまうと「いい家庭教師がたくさんいるからね。一般人とは違う」と視聴者に反感を持たれる可能性がないとも言い切れない。生き馬の目を抜く芸能界で長年生き抜いてきたゆうこりんは、この辺のさじ加減が絶妙というべきか、勝負強いというべきか。「ちょうどよい結果」を提供して、視聴者を納得させたのでした。早稲田大学には合格できなくても、これだけ頑張ったという伸びしろをアピールできたわけですから、この企画は芸能人としてのイメージアップとしても大成功だったと言えるでしょう。

 そんなゆうこりんに対して、「受験をなめているとしかいいようがない」というような内容のツイートがバズったようですが、これはゆうこりんへの批判というより、大学受験や学歴といったものが、どれだけ日本社会で重く受け止められているかの証拠ではないでしょうか。ゆうこりんはすでに芸能の仕事で確固たる地位を築いているわけです。ゆうこりんが合格することで、誰かが涙を呑むかもしれないと考えると、文句を言いたくなる気持ちはわからないでもありません。しかし、受験というのはある意味ものすごく残酷で、志望動機よりも得点のほうが大事ですし、「受かった者勝ち」なのです。模試ではいつもいい成績を取っていたけれど、本番で力を出し切れずに不合格になった人が「たまたま本番で失敗しただけで、本当なら合格していたんです」と主張しても、誰も認めてくれないでしょう。「勝てば官軍、負ければ賊軍」という諺がありますが、合格を手にしたゆうこりんに誰も文句は言えますまい。きっちり結果を出したゆうこりんは、今後は教育について語る仕事が増えるのではないでしょうか。

2月19日、早稲田大学の入試を終えてキャンパスから出てきた小倉優子

2度の離婚で「好きなママタレランキング」圏外に

 時代もゆうこりんに味方をしていると思います。ゆうこりんは2017年に離婚しますが、同年のオリコン社主催「好きなママタレランキング」では、ランキング圏外からトップに躍り出ました。元プロレスラー・北斗晶、女優・木村佳乃乙葉など、おしどり夫婦として名高い既婚女性を抑えての1位です。同情票もあったのかもしれませんが、ここで少し潮目が変わってきたような気がします。2018年に歯科医と再婚したゆうこりんですが、2020年には夫が身重のゆうこりんを置いて家を出てしまった、離婚の決意が固いと報道され、同年のランキングからは再び圏外になってしまいます。ママタレと言うと、暗黙の了解として、家庭円満であることというイメージがあるため、2度も離婚するなんて、ゆうこりんにもヤバいところがあるのでは……とみなされたのかもしれません。

ママ本人の生き方が問われる時代

 しかし、同年のランキングでは、俳優・東出昌大の不倫後に離婚した女優・杏が2位となっていますから、「ママタレは離婚してはいけない」というわけではなさそうです。これはどういうことかというと、いつのまにか大衆の視点が変わり、「夫と子どもがいてこその、ママタレ。だから、離婚はよろしくない」から「夫がいてもいなくてもかまわない。ママとしてどう生きるか、どう子どもを愛し、育てていくか」と、ママ本人の生き方が問われる時代になってきているのかもしれません。

'21年7月、三男を抱きながら近所のスーパーへ買い出しに向かった小倉優子

 2度の離婚、出産、子育て、受験と2017年の離婚から2023年現在まで、ゆうこりんのプライベートはめまぐるしく動いています。ですが、2020年のゆうこりんに何があった?と質問されて、正確に答えられる人は少ないでしょう。そういえばゆうこりん、もめていたなー、ヤバかったなーというイメージはあっても、詳細までは覚えていない。世の中なんて、そんなものです。

 大学受験の成功で、過去はさらに遠いものとなったことでしょう。もし仮にヤバいことにみまわれたとしても、新たな挑戦をするなど強く前に進めばチャラにできる。ゆうこりんは私たちにそんなヤバ回避術を教えてくれたのかもしれません。