男性売り子として働く山口航志さん(バンテリンドーム公式インスタグラムより)

 3月22日、アメリカのマイアミの地で行われたワールド・ベースボール・クラシックで、3大会ぶりの優勝を成し遂げた侍ジャパン。

 9日から16日まで東京ドームで行われた東京ラウンドでも、連日4万人を超えるファンが集い、日本中がこの祭典に熱狂している。そんな中……。

「12日に投稿されたツイートが物議を醸しているんです。WBCをテレビで観戦していた方が、“ビールの売り子が女性ばかりなのは異様”と投稿し、大きな話題となりました」(スポーツ紙記者)

女性のほうが「ライバル関係になりやすい」

 そのツイートは、

《WBCを夫と見てるんだけど、世界の人は日本のビールの売り子さんたちをどう思ってんだろね。若い女性がミニスカでかなり重たいビールサーバー背負って急な階段を上下してるのって、かなり異様な光景だと思うんだけど。メジャーだと屈強な男たちがやる仕事だからさ。》(原文ママ)

 というもの。これに対し、“メジャーでも女性の売り子はいる”“強制されたわけでもないのに”“確かにあのサーバーは重そう”などと、賛否両論の意見が飛び交った。

 日本の球場では女性の売り子を見かけることが多いが、男性が働いている球場もある。そのひとつ、中日ドラゴンズの本拠地であるバンテリンドームに、男性の売り子事情について話を聞いた。

「10年ほど前までは、私どもの球場では男性の売り子のほうが多かったんです。ですが、ここ数年で男女比が逆転し、今では日本の球場で、男性の売り子がひとりもいない試合が開催されることも珍しくありません」(バンテリンド―ム広報担当者)

 ツイートで触れられていたビールサーバーの重さなどを考えると、男性向きの仕事に思えるが、なぜ女性が多いのか。

「諸々を含めると売り子の荷物は15キロ程度になります。体力的には男性有利に思えますが、女性の方が負けず嫌いで、売り子に向いている人が多いと感じています。“あの子には負けたくない”というライバル関係が生まれやすく、結果として全体の売上があがるんです。売上の上位は女性の売り子が占めているので、男女での売上の差がないといえば嘘になります」(同・バンテリンドーム広報担当者)

 入学時から男性の売り子アルバイトとして働いている、大学1年生の山口航志さんが、その内情について語ってくれた。

男性売り子ならではの強み

「男性として売り子をしていた先輩への憧れから応募しましたが、最初はやっぱり抵抗感がありました。1試合でだいたい70人から100人くらいの売り子がいるのですが、試合前のミーティングで勢ぞろいしたときに、男性が僕含めて2,3人しかいなかったんです。正直、売上の数字を見れば、まだまだ女性の売り子には敵わない部分もあります」

 売上の面だけでなく、観客から心のない声をかけられることもあるという。

「お客さんに呼ばれて駆けつけたら、“男の子もいるんだ”って珍しがられることもよくあります。なかには、“女の子じゃないの?”“なんで男子なんだ”ってがっかりされる人もいます。でも、それを言われることはわかっていますし、自分の中で割り切っていますよ。むしろ、男性ならではのメリットもあるんです」(山口さん)

 そのメリットとはいったい……。

WBC優勝後の記念撮影(大谷翔平のインスタグラムより)

「女性よりも高い身長を生かして、遠くのお客さんにいち早く気づいたり、声出し解禁後は誰よりも声を張ったり。最近では球場に足を運んで下さる女性のお客さんも増えて、声をかけていただく機会も増えました。また、女性に声をかけづらい、という男性のお客さんもなかにはいて、そういった方々から喜んでもらえることも多いんです」(山口さん)

 ハンデを感じることはあっても、それをはねのけてより良い売り子になるべく励む山口さん。最後に、件のツイートについて尋ねたところ、

「昔から売り子というのは女性がやっているイメージでしたが、僕は別にそこまで気にしていないというか。周りに女性の売り子が多くても、自分にしかできない努力をして、頑張ろうと思っています」(山口さん)

 アスリートでも売り子でも、もちろん男性でも女性でも、その頑張る姿には温かい声援を送りたい!

 

 

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