坂本昌行主演ミュージカル『ザ・ミュージック・マン』キービジュアル

「クラシカルなミュージカルが大好きで。曲が鳴った瞬間にワクワクする作品なので、非常にうれしいです」

悪い人が出てこない作品は、無条件に楽しい

 4月11日開幕のミュージカル『ザ・ミュージック・マン』にハロルド・ヒル役で主演する坂本昌行。'57年初演でトニー賞を独占し、その後世界中で上演されてきた大人気のブロードウェイ・ミュージカルだ。

 ハロルドはマーチングバンドの先生のふりをして大量の楽器や制服を売りつけ、お金を持ち逃げする詐欺師。今回もリバーシティという田舎町で町民に嘘をつき、マーチングバンドの編成を画策する。だが、図書館の司書でありピアノ教師でもあるマリアン(花乃まりあ)に想いを寄せるようになり......。

誰も悪い人が出てこない作品は、無条件に楽しいんですよね。音楽を通して、仲の悪かった人が仲良くなるシーンもあったり。特にすてきだなと思ったのは、最後にみんなで音楽を奏でる場面。みんなうまいわけではないんですが、“音楽”って“音を楽しむ”と書くんですよね。この作品で、あらためてそのことを感じ取ってもらえたらなと思ってます

 “詐欺師”という役どころについては、

「確かに、いい行いをしているとは思えないですけど。でも憎めない可愛らしさや純粋さがあるんです。なので詐欺師を演じるというより、ハロルド・ヒルが詐欺師を演じているという感じでできればいいなと」

 自分勝手に生きているように見えて、人々から愛されるハロルド。共感する部分は?

これまでいろいろなキャラクターを演じさせていただいていますが、共感できないことが多くて(笑)。今回も共感というより、“いいなあ、自由に生きられて”とか“こんなふうに人とコミュニケーションが取れたら楽しいだろうな”と思うことが多々あります。ハロルドは頭の回転が速く人生を謳歌している人。プライベートの僕はそうはなれないけど、舞台上で彼の人生を楽しみたいですね」

座長という意識を持ってやったことがない

 実際の坂本は「嘘をついたらバレるほう」で、なおかつ「人と接するとき疑いから入るのは 好きじゃないので、たぶんだまされるタイプ」という。

いまだにルールをちゃんとわかっていない“人狼ゲーム”を 一回やったことがあって。僕は村人だったのに、急に目線を送 られると“あれ、もしかして俺、人狼なのかな?”と変な思い込みをしちゃったり、すぐ顔に出ちゃうんですよ。なので、自分はたぶん嘘をつけない人間だし、 リバーシティの町民だったらハロルドにだまされていたと思います(笑)」  

 撮影中、「昭和のアイドルだ から」と笑いながら次々とポーズをキメてくれた坂本。昔から変わらない抜群のスタイルは、どうやってキープしているのだろう?

特に考えてないんですよ。スポーツが好きなので、体を動かしてはいますけど。ゴルフとか、ジムでのトレーニングとか......。基本的にはそれくらい。食事制限的なことは、いっさいやらないです。好きなものを好きなときに好きなだけ食べる。お酒もお肉も大好きです」  

 舞台初出演は'92年のミュージカル『阿国』。それから 31年たったが、「言われてみて“ああ、そんなに時がたったか”と 感じるくらい」という。

新しい作品と常に出会っているので、いつも新鮮なんです。 “ベテランですね”と言われますけど、全然そんな気持ちもないんですよ」  

 また、座長として心がけていくことを聞くと、「座長という意識を持ってやったことがない」という答えが。

すべてのお仕事で自分のやるべきことを100%やる、という意識ではいますけど。僕は、 板(ステージ)の上に立つ人間 はみんな主役だと思っているんです。稽古中のテーマは、どれだけ恥をかけるか。座長だからということで注意や意見を言われなくなったら、そのほうが僕は恥ずかしいしつまらない。そんな人間にはなりたくないと思ってるんです。なので、みんながちゃんと意見を言える、会話ができる環境づくりをするというのが唯一、心がけていることかもしれないですね

「演者が楽しんでいないとお客さんにも楽しさが伝わらないと思う」と語る坂本。そう考えるようになったきっかけがあるという。

「前に何かの作品を観たとき、すごくいい作品だけど何か平面 的に見えるなと感じたことがあって。もったいないな、なんでだろう? と思ったんです。そのあと、今度自分がステージに立ったときに、“あ、もしかしたら俺が今、楽しんでいることをもっと伝えられたらいいんじゃないか?”と気づいて。本当に楽しんでいる人を見たら、 たとえ言葉はわからなくてもゲラゲラ笑っちゃうんですよね。 その楽しさは作り上げるものではなくて、自然とできていくもの。なので、その空気感が稽古場で生まれたら、作品としてよりいいものが出来上がるんじゃないかなと思ってます

Q もしハロルド・ヒルが身近にいたら、友達になると思う?

「どうですかねえ。僕、中学校 からずーっと一緒の友達がいて。 最高のヤツらなんです。だから、 彼らのほかには(友達を)作らないと思うなあ(笑)」

Q 東京公演の会場である日生劇場は60周年記念イヤー。この劇場への思い入れは?

「客席にいてもステージに立っ ていても、壁や天井が素晴らしくて、劇場というより別の世界に入り込んでしまったような感覚になります。赤絨毯の階段も好き。観劇に行くと、スタッフの方に“エスカレーターはこちらです”と言われるんですけど、 僕はいつも階段を上っています」

『ザ・ミュージック・マン』 ■東京公演:4月11日〜5月1日 日生劇場 ■愛知公演:5月6日・7日 御園座 ■大阪公演:5月13日〜15日 梅田芸術劇場 メインホール ■静岡公演:5月20日・21日 静岡市清水文化会館マリナート 大ホー ル ■福岡公演:5月26日〜28日 博多座 日生劇場