春は気分も弾み、おしゃれも楽しい季節だが、髪の毛にとっては、受難の季節。抜け毛が増えやすい。
トリートメントや白髪染めで抜ける
「季節の変わり目は、1日の寒暖差が大きく抜け毛が増えやすくなります。冬は抜けにくいので、春になって抜け毛の量が増えると『こんなに?』とショックを受ける人も。成長が終わって自然に抜けたものなら問題はないのですが、いつもよりあきらかに多い場合は注意を」
と話すのは美容師の横田有里惠さん。ヘアサロン「美髪堂」の店主で、自身の髪を実験台にしながら、長年、女性の髪のお悩みにこたえてきた“毛生やしのプロ”だ。
「髪が抜ける量は1日に少ない人で20本、多い人で250本程度と個人差が。普段よりあきらかに多い日が10日以上続くのは頭皮や髪にトラブルがあるのかも。対策が必要です」(横田さん、以下同)
髪は、シャンプーやブラッシングなどのタイミングで抜け、就寝中の枕との摩擦でも抜ける。いつもと比べてどのくらい多いかをチェックしてみてほしい。
「問題なのは、自然な生え変わりではなく、毛を作り出して支えている『毛包』に力がなくなっているケース。毛包に栄養が行かない状態だと、抜けるだけでなく、細くなる、白髪になる、うねるなどの悩みが出やすくなります」
女性の頭皮は、加齢や閉経による影響も。しかし、間違ったケアで頭皮の状態を悪化させてしまうケースが多いと横田さんは指摘。
「第一に洗いすぎです。毎日、強い洗浄成分や化学物質が入ったシャンプー剤で頭皮をゴシゴシ洗い、なかには2回洗う人もいる。頭皮の汚れや皮脂を落とすのに必死ですが、洗えば洗うほど頭皮は荒れ、皮脂が過剰に分泌し悪循環を引き起こしています」
また、トリートメントやスタイリング剤も元凶。含まれるコーティング剤は一時的に手触りをよくするが、もとから健康にはならず、髪の毛を覆いすべりをよくするだけ。
さらに、脱色剤入りの白髪染めも頭皮を傷めている原因。白髪でもしっかり染まるように強めの薬剤が含まれており、頭皮へダメージを与えてしまう。薬局で手軽に買える白髪染めのカラーシャンプーやカラートリートメントにもコーティング剤が含まれており50代、60代の人が頭皮を傷める原因に。
サラサラ、ツヤツヤの言葉に惑わされ、白髪を隠そうと染めるほど、美しい髪から遠のいてしまっているのだ。
頭皮をなぞってソフトに育毛
このように、頭皮のトラブルの原因は、洗いすぎによるダメージと、コーティング剤の蓄積。コーティング剤は頭皮に残り、ニキビなどのトラブルのもとにも。また、頭皮下のリンパが滞ることで、表面がボコボコになる場合もあるという。
「握り拳を作って頭皮が硬くなっている箇所を、『我慢できるけどちょっと痛い』くらいの強さで1分間押してみてください。リンパの流れが悪く老廃物がたくさんたまっている人だと、2~3ミリほど凹むのがわかります」
ストレスや眼精疲労なども、老廃物をためてしまう原因に。頭部はリンパの流れを促す筋肉運動が少なく、流れが悪くなると、毛包に栄養が届かなくなり、元気な髪が育たなくなってしまうのだ。
そこで試してほしいのが、横田さんが提案する“頭皮なぞり”だ。
「自分の指で頭皮をなぞり上げて、ほぐしてあげるというシンプルなマッサージです。老廃物の蓄積を防ぐ効果があり、髪に栄養が行き届き健康な髪が生えるように。本質的な髪質の改善ができるのがポイントで、薄毛、抜け毛、白髪、クセ毛など、すべての髪の悩みを改善してくれます」
特別な道具もいらず、手軽にできるのはうれしい。大事なのは習慣化すること。
「“頭皮なぞり”をする時間帯はいつでも大丈夫。家事の合間、就寝前など自分の続けやすいタイミングで良いので、毎日のケアに取り入れて継続してみてください」
抜け毛が気になるならやめるべき3つのNGヘアケア
【1】減シャンで洗いすぎを防ぐ
頭皮の皮脂や汗の汚れは、お湯で十分落ちる。洗浄力が強く化学物質が多く含まれるシャンプーを毎日使うと、頭皮には洗いすぎの悪影響が。まずは量を減らす、時間を短くする、回数を減らすという「減シャン」を心がけて。シャンプー剤を頭皮に直接つけないのがコツ。
【2】トリートメントをやめてみて!
髪のすべりがよくなるが、健康になったのではなく、コーティング剤でおおわれるため。これがはがれるときにキューティクルが一緒にはがれ、髪の水分、栄養分が流れ出てしまう。コーティング剤は、頭皮にも吸着し毛穴をふさぐ原因。
【3】白髪染めは脱色剤不使用のものを
一般的な白髪染めには強アルカリ性の脱色剤が含まれていて、髪の主成分であるケラチンというタンパク質を壊してしまう。また、強い薬剤が頭皮にダメージを与え、抜け毛も増えてしまう。植物成分が97%以上という「香草カラー」などを選んで。
血流がアップし、抜け毛、薄毛、白髪も改善!
1分「頭皮なぞり」横田さん考案のマッサージを週刊女性のために簡単にしたのが、わずか1分の頭皮なぞり。朝でも夜でもやるタイミングはいつでもOK。なぞるのがコツ!
(1)首伸ばしストレッチでリンパの流れを刺激
左手を右の側頭部にのせたら頭を左に倒し、10秒キープ。手を入れ替えて反対側も同様に。首の側面にあるリンパ節まわりの筋肉を動かし、巡りをよくしておく。
(2)おでこを丸くなぞってほぐす
指を額に当て、皮膚をこするのではなく、ゆらすようなイメージで円を描きながら指の腹でなぞる。おでこから髪の生え際あたりまで、場所を変え3か所×10回ほど繰り返す。前髪が太くなって立ち上がりもよくなり、おでこのシワを減らす効果も。
(3)“熊手の手”で頭皮をなぞり上げる
指を少し立てて熊手のような形を作り、手とは反対側の耳上に当てる。指の腹を使い、頭皮を持ち上げるようになぞり上げて。ボコボコが気になる箇所があったら、そこにも熊手の手を当てて、なぞり上げる。うねりやクセを抑え、眼精疲労を解消する効果も期待できる。
横田さんのマッサージで髪が増えた!
横田さんの美容室を訪れた60代女性。頭頂部がボコボコしていて、髪の成長が止まっていた。月に1度横田さんのもとへ通い、自分でも毎日頭皮をマッサージするように。2か月後には髪が増え始め、8か月後には地肌が目立たなくなった。
(取材・文/野沢恭恵)