遠野なぎこが3度目の離婚をした。
最初の結婚は2009年で、72日間で破局。当時「芸能界史上最速離婚」ともいわれたが、次の結婚は55日で終わった。
さらに、今回は14日でピリオド。昔、セルゲイ・ブブカという棒高跳びの選手が自らの世界記録をちょっとずつ更新して注目を浴び続けたことなどを思い出す。むろん、彼女は離婚するつもりで結婚するわけではないだろうが、結果として、そのつど話題になっているわけだ。
いや、ここ10数年の彼女はずっと、こんな感じである。
“一大転機”が多発
'10年には芸名を「遠野凪子」から今のものに変更。'13年には自伝『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』で母親から虐待されていた過去などを赤裸々に告白した。
その翌年には『摂食障害。食べて、吐いて、死にたくて。』を書き、さまざまな心の病に苦しめられてきたことをカミングアウト。子役時代、母親に、
《吐いちゃえば、太らないんだよ。ほら、やってごらん》
と、やせる方法を教えられた話など、なかなかヘビーな内容だ。また、'20年には愛猫2匹の死をきっかけにブログをやめ、今年2月に再開。同時にインスタグラムも開始している。かと思えば、絶縁状態だった母について今年3月のウェブインタビューで言及。昨年、母は自ら命を絶ったという。
とまあ、普通なら人生の一大転機になるようなことが彼女の場合、日常的に起きている印象。こちらも慣れっこになりそうだが、そこそこインパクトがあるのはそれなりに実績のある女優だからだ。
美少女子役として注目されたあと、1999年にNHKの朝ドラ『すずらん』に主演。その6年後には、東海テレビ制作の昼ドラ『冬の輪舞』(フジテレビ系)に主演して、これもヒットした。
ただ、ここ10数年は女優としての実績が少ない。そのかわり、本やブログ、あるいは『アウト×デラックス』(フジテレビ系)などのバラエティー番組でお騒がせタレントとして認知されている。炎上も辞さない言動が彼女にとっての作品、歌手でいえば曲の配信みたいなものだ。
杉田かおるとの共通点と“違い”
そんな状況は、一時期の杉田かおるに似ている。
杉田は自伝『すれっからし』のなかで、子役時代から30代なかばでヘアヌード写真集を出すまでの葛藤を激白。少女期には酒やケンカ、ギャンブルに明け暮れ、成人してからは借金や不倫にハマるというドロドロの内容だった。
これで注目され、バラエティータレントとして再ブレイク。そんななか、最初の結婚をしたが、半年でスピード離婚した。
とはいえ、最近は落ち着いている。女優業のかたわら、オーガニック野菜を作り、'13年に再婚した相手とも順調なようだ。遠野との違いを考えるうえで、見逃せないのは母との関係。杉田も子役時代、母にギャラを使い込まれたりしたというが、関係は破綻しなかった。
母は晩年、持病が悪化して介護が必要な状態に。杉田は献身的に寄り添い、母も感謝しながら旅立ったという。母との関係を健全にできたぶん、杉田は安定した方向に進めたのではないか。
それができないほど、遠野の問題は深刻だったともいえるが、芸能人としての業がそれだけ深いということでもある。そのあたりがいつか、女優としての仕事で実を結ぶかもしれない。
朝ドラも昼ドラも顔負けの波瀾万丈な遠野なぎこ劇場。この先、どんな展開が待っているのだろうか。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。