エンドロールが流れ終わった後、大雨の下、ヒッソリと止めた車の中から、木村拓哉と北村匠海が外の様子をうかがっている。建物から姿を現した怪しい人物と対峙した北村は、逃げる人影を追跡するも見失ってしまう。その直後に北村が何者かに背後から刺され、それをかばった木村も右目を刺されて─。
2021年にフジテレビ系の新春スペシャルドラマとして放送された『教場2』のラストシーンだ。
「『教場』シリーズは、2020年に初めて新春スペシャルドラマとして放送されました。警察学校を舞台に、木村さん演じる冷徹で厳しい教官が生徒たちの指導にあたります。問題のある生徒たちに次々と“退校届”を突きつけながらも、湧き起こる事件を乗り越えて卒業させるまでが描かれています」(テレビ誌ライター)
非情にも思える“鬼教官ぶり”を加速させていたのが、木村の“目”だ。
「右目が義眼なのです。しかし、スペシャルドラマの中では、北村さんとともに襲われたシーンがあったのみで、詳細が明かされることはありませんでした」(同・テレビ誌ライター)
4月10日に“月9”枠で連ドラとしてスタートした『風間公親―教場0―』は、警察学校の教官になる前に“刑事指導官”をしていた木村の“過去”の物語だ。
「月9って言わなくていいと思う」
メディア研究家の衣輪晋一さんは、『教場0』に大きな期待を寄せている。
「撮影現場は“木村教場”になっているのではないでしょうか。木村さんはとにかく妥協を許さない方で、“一生懸命にやらないのなら何のために仕事をするんだ”という厳しい考えを持っています。それが作品を引き締める魅力になりますし、スタッフも木村さんと旧知の仲の方ばかり。フジテレビの“月9”が持つイメージが変わってしまうほどの作品になるでしょう」
木村の“月9”主演は実に9年ぶりだ。
「フジテレビは公式サイトや予告映像で、とにかく“月9”を強調しています。木村さんがこの枠で主演をするのは11回目で、その回数は歴代トップ。さらに、木村さんが主演をすればヒットするという“キムタク神話”もささやかれてきました。その木村さんが帰ってきますから、アピールしたいのもわかります。しかし、過剰なまでの“月9推し”に、木村さんはやや懐疑的なんです」(スポーツ紙記者)
4月3日に行われた完成披露舞台挨拶で、“月9って言わなくていいと思う”と口にしたのだ。曜日や時間を気にするのではなく、作品の魅力を高めたいのだという。
注目が集まっているのは、主演の木村だけではない。
「脇を固めるキャストがとにかく豪華なのです。前作のラストシーンに登場した北村さんに加え、新キャストとして新垣結衣さんや赤楚衛二さん、白石麻衣さん、染谷将太さんらが発表されています」(同・スポーツ紙記者)
2018年4月から芸能活動を無期限休止していた坂口憲二が、3月上旬に神奈川県内で行われた木村とのロケに参加し、9年ぶりにドラマ復帰することも週刊女性が3月28日・4月4日合併号で報じたとおりだ。
“スター”ばかりが出演する弊害
過去2作のスペシャルドラマに出演していたのは、2020年は工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな。2021年は濱田岳、上白石萌歌、福原遥、矢本悠馬などだ。
「注目株の俳優や実力派がそろっていますが、主演作も数多く経験している新垣さんや、朝ドラ『舞いあがれ!』で人気を確固たるものにした赤楚さんが出演し、さらに坂口さんの復帰作となると、これまでよりも“気合”のキャスティングだったのではないでしょうか」(テレビ局関係者)
いったいどうしてここまでのキャストをそろえたのか。前出の衣輪さんに聞くと、
「あの木村さんと対峙するには“主役級”じゃないと難しいということが1つ。あとは“スター”をたくさん並べてどこが中心かわからないという、よくも悪くも2000年代くらいからのフジテレビの“クセ”でもあると思います。今回のキャスティングも、フジテレビらしさ、月9らしさといえるかもしれません。ただ、あまりにスターばかりだと、見ている人が飽きやすくなります。その辺りが今回、吉と出るか、凶と出るか……」
さらに、こんな指摘も。
「1月27日に公開された木村拓哉さん主演の映画『レジェンド&バタフライ』は、当初50億円の興行収入を目指していました。しかし、週末の興行成績を集計した国内映画ランキングでは、2月最終週にランクインしたのを最後に、トップ10から外れています。製作費に約20億円をかけたそうですが、興行収入は30億円程度で終わると予想されており、苦戦と言わざるをえない状況。“キムタク神話”崩壊の危機が明らかになってしまったのです」(前出・テレビ局関係者)
“キムタク頼み”では不安がある
しかし、『教場0』はフジテレビ開局65周年記念の鳴り物入りの企画。失敗するわけにはいかず……。
「『教場0』は『レジェ&バタ』公開前から制作されていますが、“キムタク頼み”では不安があると、事前に考えていたのでしょう。今作のキャスティングには、木村さんのファン層以外による視聴率も獲得したいという意図があったのではないでしょうか」(同・テレビ局関係者)
とはいえ、評価の指標は今や視聴率だけではないと、衣輪さんは話す。
「見逃し配信サービスの『TVer』で、どれぐらい再生されるかが注目です。木村さんのファンはリアルタイムで見るでしょうが、コアなドラマファンは後から配信で欠かさず見るという人が多いので、その結果次第で、この作品の本当の反響がわかるのかなと思います。射貫くような木村さんの演技が視聴者をクギづけにするのは間違いないでしょうから、視聴率が取れなかったとしても“名作ドラマ”としてドラマ史に名を残すのではないでしょうか」
キムタクをドラマ界から“退校”させてはいけない!?