かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はニッポンの社長。
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ニッポンの社長というコンビ名を最初に見たときは、「随分ふざけた名前だなぁ」と思った印象があるんですが、今ではこの名前に新しい笑いを見せてくれるという信頼すら感じるコンビ名となっているんですから不思議です。
「かもめんたる」と似ている!?
キングオブコントでは、決勝の常連組なのでご存じの方も多いでしょう。わかりやすく紹介するならば関西の若手センス系の代表といっていい存在という感じでしょうか。
漫才もコントも独創的で斬新でおもしろいのですが、その根底にはお笑いを構造ごと遊んでやるという、意気込みというかノリを感じます。そしてその遊び方が最先端をいっているというところが、このコンビの強みでしょう。
料理店に例えるとしたら、創作料理のお店ではないでしょうか。こちらからメニューにある品を注文するよりも、「シェフにお任せ」でというお願いをしたくなるような、シェフの現在地を知りたくて訪れるようなお店だと思うのです。
そして、そのまま料理店の例でいくと、ネタの制作者である辻くんがシェフで、相方のケツくんはさしずめ食材ということになるんだと思います。実は、ニッポンの社長には僕はすごくシンパシーを感じるところがあって、辻くんとも「かもめんたるとニッポンの社長は似ているかもしれない」という話をしたことがあります。似ているところでいうと、2組とも片方が完全にネタを考えて、一方はプレーヤーに徹しているというところです。
多くのコンビは、ネタ制作の過程において多かれ少なかれ2人の意見が反映されていてお互いの譲れないところが主張しあって面白さが倍増しているんですが、逆に一方が考えたことを余すことなくネタに反映して構築するコンビは世界観をもろに表現することで勝負をします。
まさに、世界観を表現するというところが、かもめんたるとニッポンの社長の共通点なのですが、実は大きく違うところがあります。それは、実際のネタでの笑いを起こす役割を誰が担うかという点です。
ごまかしが利かない「ストロングスタイル」
かもめんたるの場合はボケである僕が笑いを起こす担当ですが、ニッポンの社長ではこれがケツくんになるんです。これはなかなか珍しいスタイルであると同時にニッポンの社長に大きな特色を与えています。
さっきの料理店の例えでいくと、僕はシェフではあるんですが、食材でもあるんです。まあ、その時点で料理店の例えは破綻してしまうんですが。
辻くんはコントの中でその役を演じながらもどこか俯瞰でそれを捉えていて、お客さんとケツくんの中間に存在しているその状態がすごくお笑い的なんですよね。ネタが良い意味でお笑いのネタっぽいんです。
世界観を押し出しすぎると笑いのポイントが不明瞭になりがちで、演劇的になってしまいますが、ニッポンの社長のスタイルはそれを自然と回避しているように僕には見えます。
ただ、そのスタイルにはもちろんデメリットもあって、中途半端なネタだとまったくごまかしが利かない、ストロングスタイルでもあるんです。演技力やテンションでカバーできないからです。
辻くんがその辺にどれだけ意識的でいるかはわからないのですが、僕はぜひ彼らにはこのまま今の道を歩んでいってもらいたいと思います。せっかく切り開いた道ですから。ニッポンの社長というへんてこなネームが、「新しくて強くて面白い」という意味の言葉になる世界はすぐそこまで来ていると僕は信じています。