日本中を熱狂の渦に巻き込み、3大会ぶり3度目の世界一に輝いたWBC(2023 WORLD BASEBALL CLASSIC)での快挙達成。未だ興奮冷めやらぬなか、注目を集めているのが大谷翔平(28)やダルビッシュ有(36)などのスター選手揃いの侍ジャパンを率いた栗山英樹監督(61)のリーダーシップだ。
理想の上司・栗山英樹監督
TBS系朝のニュース番組『THE TIME,』では司会の安住紳一郎が「選手と本音でぶつかりあえる監督、こんな上司の下で働きたい、そんな声がネットにもあふれていました。余計なことかと思いますが、明治安田生命調べ理想の上司ランキング、来年は栗山英樹さんが上位に入るだろう、そんなことを考えてしまいました」とコメント。
安住アナの言葉の通り、「栗山さんっておそらく理想の上司?」というのは日本人の多くが気づいていることだろう。
栗山氏のリーダーシップの特徴は起きたことの全て(野球で言えばプレーとその結果)を自分ごとに置き換えること、そして今風に言えば「エモい言葉」でそれを臆面もなく発信するところにある。
特に2013年の日本ハム入団からメジャー入り前の2017年シーズンまで指導してきた大谷翔平についてはその傾向が顕著で、彼の調子や体調、心情については、度々エモい発言で寄り添ってきた。単純に言えば「大谷翔平愛が半端ない」のである。
そこで、日本ハム時代に愛弟子・大谷翔平に向けられたほとばしる愛が感じられる『栗山語録』を振り返る。
愛弟子・大谷翔平への愛あふれる『栗山語録』
「食べちゃいたい」
大谷ルーキーイヤーの2013年、都内で親会社の日本ハム東京支社の年頭式典に出席。約800人の社員を前に「大谷君はとてもかわいい。食べちゃいたいくらい」とのろけた。しかし、その一方、昨年12月の球団の身体検査で、大谷の身体がまだ成長途上にあることを示す骨端線(こったんせん)が確認された事について「下手したら、1年間無理させちゃいけない」と慎重な姿勢も示し、冷静な育成方針も垣間見せたのだった。
「順調じゃなかったら『監禁』!」
2015年1月(プロ3年目)に大谷の自主トレの進捗を質問された際の発言。前年のシーズンで投手として2桁勝利、打者としても2桁ホームランを放ち二刀流として羽ばたき始めた大谷だったが、栗山監督は、「(今季の起用法など)方向性は本人に伝えてある」と信頼を示しつつも「順調じゃなかったら『監禁』!」と不敵に宣言した。
この言葉にネットでは「監禁したらダメよ~、ダメ、ダメ!」などと反応。
「翔平はオレのこと嫌いだろうな…」
大谷が3年目のシーズンである2015年8月に、自己最多の12勝目をかけた登板前に記者へ発した言葉。二刀流を結果を示し、既に彼に厳しい姿勢を示す先輩やコーチも少ない状況だったようだが、「厳しいことを言うのは、もうオレくらいじゃない?」。この頃でもルーキー時代と変わらぬ厳しい接し方だったという。そのため「(大谷)翔平は、オレのこと嫌いだろうな。きっと…」と含み笑いで、明かしていたそう。
「翔平の気持ち考えると心が死にそう」
2017年に開催されたWBCで、大谷の投手としての出場辞退を決断した際の発言。アリゾナキャンプを翌日に控えた会見で、「(大谷は)足首がずっと尾を引いていて、今の状況でWBCで投げることは無理」と発言。日本の期待を一心に集める侍ジャパンに協力したい気持ちは強いものの、日本の宝で今オフにもメジャー挑戦する大谷の故障は避けなければならない。板挟みの気持ちは本人と共有しているようで「翔平の気持ちとか、日本の野球のためを考えると、心が死にそうになる…」と苦渋の表情。
大谷翔平はエンジェルだったんだな
2017年シーズン終了後、大谷がロサンゼルス・エンゼルスへの移籍が決まった際に移籍先チーム名と掛け合わせての発言。過去にはネタ扱いされたこの言葉も今ではネットで「翔平マジ天使でしたわ」などとWBCでの大活躍によって肯定されるコメントが多い。
ちなみに「翔平はエンジェルだったんだな」に続く栗山監督の言葉は「野球って面白いんだっていうのを、みんなに伝える天使だったんだよ」と愛ある発言でMLB挑戦を後押ししている。
選手一人ひとりを愛すること。それしか考えてません
最後に取り上げる栗山語録は、大谷をMLB挑戦に送り出した2017年2月のこと。それまでの監督5年間で2度のリーグ優勝を果たし、さらに大谷の育成も成功させた栗山監督が「リーダーシップについて」インタビューに応じた際の発言だ。
栗山監督は記者から「選手のモチベーションを高めるために、もっとも大切にしていること」を問われると、この言葉を発言。
「親が子になにをしてあげられるかという気持ちに近いのかな。選手をどれだけ愛してあげられるかだと思うんです。」としており、いかに選手のことに寄り添って育成しているのかが窺える。家族同様に接し、愛することで選手の力を底上げする栗山監督の育成力を表す真骨頂と言えるエピソードだ。
独特の言い回しから放たれる選手への愛が溢れる言葉や、選手を信じ抜く振る舞いは以前から讃えられ、侍ジャパン優勝決定から日を追っても、高い関心度をキープしている。約3年半前に出版している栗山監督の著書『栗山ノート』は、時を超えて増刷が決定しており、その人気は本物だ。しばらくは野球の現場を離れる模様だが、今後も“究極のモチベーター”である栗山英樹監督の言葉から目が離せない。