《ごめんなさい さようなら》
男は4月8日午後7時44分、知人に対してこうメッセージを送ったあと、線路に飛び込んだ。
束縛からストーカーへ
同日の夜、名古屋市にある名鉄名古屋本線・本笠寺駅のホームの待合室で、川村月音(つきね)さん(18)が胸に刃物が刺さった状態で倒れているのが見つかった。その5分ほど前、同じ駅の同じホームで急行列車に飛び込んだ男がいた。その男こそ、川村さんの元恋人でストーカー化していた南拓哉容疑者(29)だったのである。
「警察は交際相手の川村さんにフラれた南容疑者が川村さんを殺害し、その後に自殺を図ったとして捜査を進めています」(捜査関係者)
11歳差の2人に何があったのか。
「2人が出会ったのは3年前で川村さんが15歳のときだといいます。交際に発展したのはそれから2年後だといい、南容疑者が千葉から名古屋に引っ越してくることで押し切るように交際が始まったのだとか。川村さんは南容疑者からの束縛に悩んでいたようで、時には暴力を受けていたと友人が証言しています。事件の3日前に川村さんから南容疑者に別れを切り出し、ストーカー化した容疑者の様子を川村さんはSNSにつづっていました」(全国紙社会部記者)
川村さんのSNSには南容疑者に対する心情が並んでいた。
《別れてわかったけど今の方が楽しくて楽に生きれてる 付き合ってて楽しいことももちろんあったけどね だからもう話したくないし会いたくないし、とくにここ最近はまた急に来るんじゃないか、って怯えてるからやめてほしい 暫くストレス与えないで1人にさせて 飲食店いくくらいならまた心が落ち着いたら》(原文ママ、以下同)
この時点では南容疑者について気をつかっている様子がうかがえるが、亡くなる前日には、
《ほんとに話す気ないから、信頼ない 職場近くとかにくるのもストーカーだしほんとにやめてほしい。毎日怖がってるのわかってる?本当余計なストレス与えないで 個人で話したくないからチャットも消したし呟いてるの 実は不動産に言ってとりけした ごめんね こんなんでも好きなのは本当にありがとう》
川村さんは南容疑者と個人間で連絡を取り合うのをやめ、知人が閲覧できるSNSに気持ちを投稿することで、南容疑者のストーカー被害から逃れようとしていたのだろうか。
一方の南容疑者は川村さん個人にこんなメッセージを送っていることも明らかになった。
容疑者が元恋人に宛てた幼稚なメッセージ
《別に俺はつきねに帰りとかだって恋愛とか浮気に発展しないって約束できるならなんもいうきないし 暴力とかだってやらないようにはしてるし、がんばりはしてる 〇〇とか誕生日とか色んな思い出もあるし、メロもいるし、できればこれからも仲良くしていきたい 2、3日頭冷やしたり冷静になっても〇〇がどーたら思うならそれでもいいし 嫌な思いさせてごめんね》(※人名、地名が特定されるものは〇〇に修正しています)
29歳にしては幼稚な文章と思えるが、事件が起きる前日まで連絡をとっていた知人へのメッセージにも、容疑者の幼稚な文言が並ぶ。
《かえりたくない》
《ひととはなしたい》
《ぶちまけたい》
《つらい》
《ころしたい》
《うらぎりやろう》
《いじめ》
《きらい》
《しにたい》
《きらい》
まるで思いついたことをそのまま打ち込んでいるようだが、このようなメッセージはわずか数時間で1000通に及んだという。
「友人は南容疑者からのメッセージに“落ち着いて”などと返信していましたが、一方的なメッセージは止まることはなかったそうです。それもほぼ全部ひらがなでつづられていました。事件前日にはこの友人と会った際に市販の薬を過剰摂取した状態で現れ“月音もいなくなったから俺も死ぬ”と言っていたそうで、このときも薬で酩酊状態だったのかもしれません」(全国紙社会部記者)
ネットの人間関係に詳しいジャーナリストの渋井哲也さんは南容疑者の人物像についてこう分析する。
「衝動性が高いと思いました。SNSなどで短文のメッセージを羅列するのは衝動性を表しています。相手の反応は気にせず、とにかくただ自分の気持ちを吐き出したい場合に多いメッセージの書き方だと思いました」
とし、殺人に関しても衝動的だったと予測する。
「事件の3日前、別れ話をされた日に包丁を買ったのは、彼女に対する脅しのためとも考えられる。事件前日も酒を飲んだ上に市販薬でオーバードーズしていたようですから、酩酊状態でフラフラしたまま衝動的に刺してしまったのかもしれない」(渋井さん、以下同)
2人が出会った当時、南容疑者は千葉県在住の26歳。川村さんは名古屋市在住の15歳。どのように知り合ったのか。
「考えられるのはSNSかオンラインゲーム、配信アプリだと思います。2人の年齢や住んでいた地域から考えてもマッチングアプリというのは考えにくい。川村さんは付き合って1年でこれはマズいと気づいて別れを切り出しているので、普通の感覚を持ったまともな女性でしょう。普通の感覚を持っていたがゆえに殺されてしまった。イギリスの研究では、ストーカーの8割は、被害者から相談のあった警察から警告があると収まるといわれています。警察に相談して欲しかったですね」
事件当日、和歌山県に住む南容疑者の家族から愛知県警に安否確認要請の連絡が入っていたという。
「前日、酩酊状態の南容疑者は家族にも連絡をしたようなんです。その際に心配した家族が愛知県警に連絡した。事件とちょうど同じ頃、南容疑者のアパートを署員が訪れベランダの窓を壊して中に入ったといいます」(全国紙社会部記者)
あと1日早ければーー。