熊倉唯佳容疑者(SNSより)

「このグループの手口は、マッチングアプリを駆使して男性客を女性従業員と引き合わせ、女性側が“知っている店がある”などと言って、まず店に誘う」(捜査関係者)

 警視庁は4月6日、いわゆる“都ぼったくり防止条例違反”の疑いで飲食店従業員の木下幸也容疑者(28)、杉山琢磨容疑者(34)をはじめとする、計16人の従業員の逮捕を発表した。

 逮捕そのものは4日で、警視庁保安課と警視庁新宿署など計21警察署の協同捜査によるもの。逮捕者の中にはサクラ役の女性従業員4人も含まれていて、冒頭のようにまず彼女らが“カモ”となる男を店に連れ込む。

 次に店側が「飲み放題5000円」と安心させた上で、サクラ役の女性従業員たちが飲み放題に含まれない高額な酒を注文。男性客から10万~30万円という明らかに法外な料金を請求していた。

楽しいゲームのあとに地獄が待つ

「“ワニワニパニック”というおもちゃで負けたら一気飲みなど楽しいゲームが繰り広げられ、会計時に地獄に突き落とすパターン。支払いができない客には、近所にあるコンビニのATMでお金を下ろさせたり、クレジットカードで金のネックレスなど高級装飾品を買わせたりした。

 この手のぼったくりが昨年2月から今年2月まで行われていて、被害相談が約100件、被害総額が計5700万円もあったようです」(全国紙社会部記者)

 犯行は新宿区歌舞伎町区役所通り近くにある3か所の雑居ビルの3店舗で展開されていたようだが、近隣住民に聞き込みをするも場所は特定できず。なぜなのか?

ぼったくりバーが入っていたと思われる雑居ビル

「ぼったくり用の店だから看板もないんだと思うよ。あと店は夜営業だけだから、昼間は別の会社に又貸ししていたみたいだし。まぁ本当はビルの契約違反だけどね」(同ビルに店を構える店主)

雑居ビル向かいのコンビニに“いかつい男”

 さらには衝撃の現場も目撃していて、

「真向かいにあるコンビニのATMで、若いサラリーマン風の男が金を下ろしていたんだけど、そのうしろでいかつい男が立っている姿をちょくちょく見かけたよ」(同・店主)

 犯罪の片棒を担いだサクラの女性の4人のうちの2人は、東京都渋谷区に住む19歳と神奈川県秦野市に住む19歳で、いずれも未成年。

 残り2人は成人しているので、警察によって名前が公表された。ひとりは新宿区に住む青木真彩容疑者(20)。歌舞伎町からほど近い場所に築1年、11階建て、ワンルームのマンションで暮らしていた。家賃は月13万円近く、いかにぼったくりの手助けで得られる報酬が高かったかがうかがい知れる。だが、彼女を知りうる手がかりはまったくなく、ここまでだった。

 最後のひとりも新宿区に住む熊倉唯佳容疑者(23)。自宅は築1年、13階建て、ワンルームで家賃月11万円ほどのマンション。近隣を聞き込むも、やはり彼女を知る住民は皆無だった。しかし、ネット上には熊倉容疑者の経歴を知ることができる痕跡があった。

「上京してビックになりたい」

 新潟県出身、高校を卒業すると地元の美容専門学校を経て、上京。横浜市のとあるエステサロンに職を得ていたという。取材を進めると、容疑者を知る同店関係者に話を聞くことができた。

エステティシャン時代の熊倉容疑者(SNSより)

「熊倉さんは2020年4月からエステ店で働いていました。入社する際、“上京してビッグになりたい。店長を目指します”と上司に話していたそうです。おとなしい印象でしたが、とても真面目だったので、将来有望と期待されていました」

 ところが、ちょうど1年後の21年4月に自主退職してしまったという。

「本人に退職理由を聞くと、“新潟に帰って、実家を支えていきたい。専門学校当時、お世話になった人が店を出したので、それを手伝いたい”と言っていたそうです」(同関係者)

 エステ業界に限ったことではないが、熊倉容疑者が憧れた華やかな世界と、現実には大きなギャップがあったかもしれない。同店関係者はこう嘆く。

「てっきり新潟にいるものだと思っていたので、この事件は寝耳に水でした」

 いまにして思えば、彼女が公言したビッグとは、単に金持ちになりたいという意味だったのかもしれない。あるいは、友人や恋人に“うまい話がある”とそそのかされたのか。今わかっているのは、夢を持って上京したごくごく普通の女性が“闇の世界”に墜ちたことだけだ……。


エステティシャン時代の熊倉容疑者(SNSより)

 

 

エステティシャン時代の熊倉容疑者(SNSより)

 

男性客にお金を下ろさせていたコンビニのATM

 

熊倉容疑者が住んでいた新宿区のマンション