4月9日、16日に『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で、「ボクらの丁稚物語2023」の前後編が放送された。舞台は、令和の時代には珍しい「丁稚制度」を採用する横浜市の家具製作会社「秋山木工」。
一流の職人を目指す丁稚たちの奮闘とともに、新人が集まらなくなったことを危惧した秋山利輝社長が、丁稚制度の改革に乗り出す姿を追っている。若者に過酷な修行を強いる秋山木工に対して、視聴者からは「ブラック企業」「パワハラではないか」と批判が噴出したが、同社の採用サイトを見ると、放送内容との相違がみられるという不可解な事態が発生しているようだ。
社長から「恥ずかしいと思えよ」
秋山木工は、1971年に設立されたオーダーメイド家具を製作する会社で、その製品は、迎賓館や国会議事堂、宮内庁などでも採用されている。「現代の丁稚制度」と呼ばれる独自の研修制度が広く知られており、『ザ・ノンフィクション』もたびたび同社を取り上げている。
「同番組によると、秋山木工での修行期間は『見習い1年/丁稚4年/職人3年』の計8年間。見習い~丁稚の間の5年は住み込み生活を送るのですが、酒やタバコ、恋愛は禁止、携帯電話は私用で使えず、家族への連絡は手紙のみ。加えて、男性も女性も“丸刈り”という厳しい規則があるんです。過去の映像ではあるものの、番組内では丸刈り頭の女性の姿も映っており、ショックを受けた視聴者も多かったのではないでしょうか」(芸能ライター)
今回の放送では、職人昇格に「待った」がかかっている入社6年目の丁稚・内藤恵悟氏と加藤颯人氏の奮闘がメインで描かれた。
「内藤くんは、実家が家具製造会社で、自身も後を継ぐつもりで秋山木工に入社。京都大学の学生だったものの、引きこもりになってしまった過去があり、修行を通して自分を変えたいという気持ちもあるようです。一方の加藤くんは、京都で8代続く造園会社の跡取りで、秋山社長のリーダーシップを学びたいと、秋山木工の門を叩いたそう。
ただ、番組内では、2人とも技術力不足であるとともに、人間性に問題があるという描かれ方をしていました。例えば内藤くんは、秋山社長が朝6時に起床し、仕事を手伝うように指示したものの、すべてが終了した7時半頃にようやくやって来たそうで、≪本気さがない、『命懸けようか』っていうさ≫とダメ出しされていました。加藤くんも、カンナを使いこなせずオロオロしていた際、先輩職人が刃の調整してくれるも、周りをウロウロするばかり。秋山社長に≪恥ずかしいと思えよ。お前。1年目じゃないんだよ≫と激怒されていたんです」(同・前)
結局、丁稚制度の改革に乗り出した秋山社長が、職人昇格の基準を緩めることで、2人は研修期間の修了式を迎えた。しかし、SNSでは、内藤氏と加藤氏は秋山木工での修行に向かないのではないかという声が噴出。一方、厳しい規則のもとで住み込み生活を送りながら、社長から叱責される両氏に対し、同情的な意見も目立ち、
≪ふたりの丁稚さんビクビクしてて気の毒≫
≪ただのブラック企業≫
≪社長は現代でいうパワハラ丸出し≫
≪人として否定するような社長に誰がついていくのかなと思っちゃうよね≫
≪怒る前にわかりやすく教えろや≫
≪人間性を伸ばせなかったのは社長の責任になるわけじゃないかな?≫
≪スマホや恋愛を禁止しても何の意味もないことを証明した会社≫
など、秋山木工への批判も多数飛び交っている。
「丸刈り」「携帯電話禁止」はもうない!?
「秋山木工の丁稚には、丸刈りやさまざまな禁止事項以外にも、朝6時からのランニングが日課とされ、風邪を3回引いたらクビという衝撃的な規則もあると紹介されていました。丁稚生活があまりに過酷なせいで、10年前までは職人を希望する新人が10名を超えていたものの、昨年は0名という有様で、退職者も続出しているそう。そのため、内藤くんと加藤くんが不甲斐ないというより、会社側の指導に問題があると感じた視聴者が多かったようです。
秋山社長は、こうした丁稚制度を時代に即した形にしようと、職人昇格の基準を緩めたほか、新人向けに半年間、木工の知識と技術を学ぶカリキュラムを設けたり、住み込みではなく通いの丁稚も認めるなど、いろいろ試行錯誤をしていました。それでも多くの視聴者は、秋山木工のやり方を“異様”と受け取ったのではないでしょうか」(ウェブメディア編集者)
しかし、そんな秋山木工の採用サイトを見てみると、「『ザ・ノンフィクション』の放送内容と相違する部分がある」(同・前)というから驚きだ。
「サイト内に≪よくあるご質問≫という項目があるのですが、≪規則が厳しいと聞きました。本当ですか?≫という質問に対し、≪一流の家具職人を育成するための研修制度では、様々な規則がありました。現在では、「丸刈り」「私用での携帯電話禁止」などは見直しが行われ、規則からなくなっております≫と回答しているんです。番組内でこの2つの規則は特に強調されていたにもかかわらず、すでに“ない”というのは一体どういうことなのか……」(同・前)
過去にもあった“過剰演出疑惑”
また、≪会社案内≫に掲載されている≪1日の流れ(研修生の場合)≫では、起床時間が午前7時前後となっており、日課であるはずの朝6時のランニングはないことになっているのだ。
「ほかにも、休日や残業については、≪週休二日制、お盆・年末年始の特別休暇を含めまして年間119日の休日があります。工場の繁忙期には、土曜出勤や残業もあります。30分単位で残業代が支給されています≫≪月の平均残業時間は10 時間程度≫と説明されており、年次有給休暇もあるそう。風邪を3回引いたらクビという現実離れした規則はないのではないか……と疑ってしまいます。秋山木工が採用サイトで、実際とは違う説明をしている可能性もありますが、『ザ・ノンフィクション』サイドが過剰演出を行っているというケースも考えられますね」(エンタメ誌記者)
同番組は過去に何度も、出演者本人から過剰演出への抗議が行われている。
「例えば、昨年2月放送の『山奥ニートの結婚~一緒に赤ちゃん育てませんか~』では、山奥で共同生活を送るニート女性の妊娠と出産が取り上げられましたが、育児を他人任せにしているような描かれ方をされたことで、大炎上。
しかし、女性が暮らすシェアハウスの理事が≪身体に大きなダメージ受けている瞬間をピックアップして、それをなにかのメッセージや結論に結びつけるのは間違ってる≫と、番組の演出に苦言を呈したんです。こうした過去の騒動を振り返ると、『ザ・ノンフィクション』がまた過剰演出をしているのではないか……と心配になります」(同・前)
「ボクらの丁稚物語」は人気シリーズだけに、来年以降も『ザ・ノンフィクション』で放送される可能性は高い。その際、秋山木工の丁稚制度や規則が、どのように紹介されるのか、注視したい。