4月12日に新宿・歌舞伎町にオープンした『東急歌舞伎町タワー』。この2階にある『オールジェンダートイレ』が物議を醸している。
新宿歌舞伎町の治安の悪さも相まって
「オールジェンダートイレ」は『歌舞伎横丁』という飲食店が集まるエリア付近に位置する。この階にあるのは男性用トイレとオールジェンダートイレのみ。オールジェンダートイレ内には12個の個室があり、それぞれ男性用・女性用・男女共用に個室が振り分けられている。個室は上下に隙間がなく、完全密室。室内には鏡とサニタリーボックス、SOSボタンが設置されており、洗面台は共用だ。
このトイレに対し、SNS上では《歌舞伎町って治安悪いし、女性は普通に怖いよ!》《ここたぶん性犯罪起きるから皆は行っちゃダメ》などと批判の声が多く挙がった。
これを受けて東急歌舞伎町タワー側は公式HPでトイレについて言及。設置した理由について、
「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある“誰一人取り残さない”ことに配慮し、 新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入いたしました」
と説明。防犯対策については、警備員の巡回強化や防犯カメラでの共用部の常時監視などを徹底するとした。長時間の滞在や騒音などのような異常を検知した場合には、警備員が駆けつけて、清掃も頻繁に行うそうだ。
性犯罪が起こる可能性は高い
このようなトイレはどのような危険が潜んでいるのだろうか。犯罪心理学などに詳しい立正大学の小宮信夫教授に聞いてみた。
「性犯罪が起こる可能性は、非常に高いと思います。男女の利用者同士が接触できる構造なので、連れ込むことは容易い。そのほか、男女共用の個室では盗撮なども起こりやすいですし、カメラを設置した個室の隣室からライブ配信を行うこともできてしまうでしょう」
トイレの立地も犯罪が起こる要因になるという。
「このオールジェンダートイレがある階には、お酒を飲める飲食店が多くありますよね。これも非常に危険です。なぜなら、性犯罪の事件は半分以上が当事者たちにお酒が入った状態で行われているんです。シラフでは大丈夫でも、酔っているとうっかり手が出てしまう。個室に連れ込むまでは行かずとも、痴漢などは起こりやすいでしょう」(小宮教授、以下同)
SOSボタンの設置や警備員の巡回に効果はあるのか。
「抑止力は低いと思います。警備員が常駐できれば話は別ですが、それは難しいでしょう。SOSボタンも基本的には“何か起こってしまった”ときに使うものなので、未然に犯罪を防ぐことができるとは言い難いですね」
まずは利用の導線などを踏まえて、構造的に安全性を高めていくのが重要だそうだ。
SDGsの浸透などもあり、このようなトイレは増えていくと思われるが……。
「オールジェンダートイレは海外でも作られるようになりましたが、あくまでも“ファッション”という一時的な現象だと言えるでしょう。最優先するべきは、安全ということを再認識した国では揺り戻しが起こっています。イギリスではトラブルが多発したこともあって、女性専用トイレの設置が必要だと政府が宣言しました」
トイレは安全が第一で、オシャレは二の次にしたほうがよさそうだ。