同調圧力、格差社会、貧困といった現代社会が抱える多くの問題を描くヒューマンサスペンス映画『ヴィレッジ』。母が抱えた借金の返済のため、霞(か)門(もん)村のゴミ処理施設の作業員として働く優(横浜流星)。施設ではいじめの標的となり、かつて父が起こした事件により村人からは冷たい目を向けられていた。ある日、幼なじみの美咲(黒木華)が7年ぶりに村に帰ってきたことで優の人生は逆転していくのだが……。
古田新太、作間龍斗(ジャニーズJr.HiHi Jets)にインタビュー
霞門村の村長・大橋役の古田新太と、美咲の弟・恵一を演じるジャニーズJr.内のユニット・HiHi Jetsの作間龍斗にインタビュー。
映画で重要な役柄を演じているふたり。クランクイン前、脚本も担当した藤井道人監督と役作りについてどんな話をしたのか聞くと、
作間「吃音のある役なので、どう表現したらいいのか、から始まりました。監督がおっしゃられた“(主人公の)優がヒーローだと思っている、ピュアなキャラクター”というのを自分なりに具現化しようと頑張りました」
古田「監督とは、(大橋)修作がどこまでそういう人だと表現したらいいのかディスカッションしました。最初はちゃんと村のことを考えている人に見えたほうが良くて、ラストに向けて私利私欲の人だと化けの皮がはがれていくじゃないけど、匂わせていくほうがいいんじゃないかと」
共演シーンがあまりなかったというふたりだが、インタビュー前に行った撮影で楽しそうに話をしている姿が印象的だった。
古田「人に壁を作ることがない、日本一敷居が低い俳優と言われていますから(笑)」
作間「僕にもフランクに接してくださるんです。撮影現場でも、キャストのみなさんの緊張をほぐしていらして。すごく優しい方だなと思っていました」
今作のムードメーカーは
京都で行われた今作撮影。ムードメーカーが古田だったのか聞くと、
古田「単純に(出演者の西田)尚美ちゃんとか、木野(花)さんとか、(黒木)華ちゃん、一ノ瀬(ワタル)とか以前から知っている人が多かったので、ベラベラしゃべっていただけ。(横浜)流星とか作間くんとか、初めましての人にもほかのみんなと同じように話しかけて。だから、いろいろな現場で便利がられます(笑)」
作間「人見知りな僕も助けられました。映像で拝見していたときの古田さんは、セリフひとこと、ひとことの重みがすごいので、怖い方なのかなと思っていたのですが、全然ちがいました」
古田「おいら、ジャニーズ事務所さんに信頼されてるの。古くは少年隊、光GENJIと一緒に仕事してて。松岡(昌宏)は、TOKIOのメンバーになる前から知ってるしね」
作間「えーっ!?」
古田「(生田)斗真は、高校生のころから。MJ(大河ドラマ『どうする家康』で共演中の松本潤)なんて、おいらが三軒茶屋あたりで飲んでいたときに、店に探しに来たことがある。小栗旬とふたりで(笑)。なにわ男子は、(メンバー7人中)4人と共演してるし」
ステップアップしていく後輩たちを見てきた古田の目に、作間がどう映ったのかを聞くと、
古田「作間くんというか、ジャニーズ事務所の人たちの多くに言えることだけど、俳優として信頼ができる。ステージングとかもやっているから、スタッフの要求にこたえることに慣れている。それは、俳優としてすごく大切なこと。監督からここに行けって言われたときに“この役は、そうじゃないっすね”と言う前にまずは言われた通りにやれと。作間くんとかはそうじゃない。それに、キンプリ(King & Prince)の永瀬(廉)とか、後輩の面倒も見るし。いい先輩が多いよね」
作間「そうですね。縦の関係がしっかりあります。そういう中に自分がいられることが、ありがたいです」
藤井監督の信頼も得た作間には、当初予定になかった重要なシーンも追加された。
作間「監督からどういう意図で撮影をするのか聞かされなかったのですが、さらに俳優として頑張りたいなと思うきっかけになりました」
そう語る作間に、大先輩である古田と共演して、どんなことを学ぶことができたのか聞くと、
作間「生で見る古田さんのお芝居は、映像で見ていたものとぜんぜん違いました。自分が台本を読んで想像した、はるか上をいかれるというか。感情の方向性は同じですが、自分の想定を超えるものを投げかけてくださるので、それはすごいと思いました」
古田には、昨年9月に二十歳になったばかりの作間へ、俳優として成長するためのアドバイスをお願いしてみると、
古田「だんだんコロナも収束してきたから、先輩のお酒のお誘いには乗ったほうがいいよ。昔話というか経験談って、おもしろいし、勉強になるから。もし、感じが悪いときがあったら、“こんな人にはならいぞ”と、反面教師にすればいい。同世代の人ばかりと話していると視野が狭くなるから、先輩と交流をもったほうがいい」
古田新太、永瀬廉と飲み仲間
それでは、古田さんと作間さんで飲みに行くというのは?
古田「もちろんある。ドラマで共演した永瀬(廉)が“二十歳超えてます”っていうから、じゃ行くかって、そのまま飲みに行ったくらいだから(笑)」
作間「この映画の撮影のときは19歳でしたが、いまは成人しているので。ぜひ、お願いします!」
古田「作間くんて、いつ事務所に入ったの?」
作間「9才です。小学校4年生のとき」
古田「芸歴11年か。すっごいな。おいらが小学生のときに舞台俳優になろうと思った理由は、無免許でいろいろな職業に就けるから。医者とか弁護士とかなれっこないのに、役としてならできる。運転免許持ってないのに、タクシーの運転手をやったこともあるからね(笑)」
映画の中に出てくる印象的な能の演目『邯鄲(かんたん)』。邯鄲の枕で寝ていた青年が皇帝となり、在位50年を祝う宴席で酒に酔い目を覚ますと、すべては枕が見せた夢であったと気づく。もし、いまとは違う人生を夢見るなら、どんな人生がいいかふたりに聞くと、
古田「おいらは、さっき言ったみたいに、いろいろな人生を生きることができるから俳優になったわけで。いま、今日は警察官で、明後日は殺人鬼みたいな、毎日のように違う人生を生きているから、別段、考えることがないかな」
作間「僕は事務所に入所せずに高校生くらいまで過ごしていたら、どういうことをしていたのか知りたい思いがあります。部活に入ったことがないので、サッカーをしてダンスを踊っていない人生を夢で見てみたいです」
印象に残っているシーンは?
古田「作間くんはゴミ処理施設に行った?」
作間「行きました。今回、もともとある処理施設をお借りして撮影したんです。京都から車で1時間半くらいのところで。本当にゴミが埋まっているので、雨が降ると水がはけなくて。すごい足をもっていかれて大変でしたね」
古田「おいらは作間くんと共演した定食屋のシーンが、面白かったな。最近、撮影現場でタバコを吸えないんですよ。でも、あの定食屋のシーンだけは、灰皿を吸い殻でいっぱいにして欲しいと言われて、ずーっとタバコを吸ってました。“これ美術だもんね”って(笑)。あのシーン、撮影に結構時間がかかって。スタッフに小声で“本物のお酒を出して”って言って、途中から焼酎を入れてもらったりして。唯一と言っていいくらいの明るいシーンだったから(笑)」