厚生労働省がマスクに関して「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」とした2023年3月13日から、早くも1か月以上が経過した。コロナ共存時代には「マスク詐欺」や「顔パンツ」などの新語が誕生したり、マスクにまつわる炎上や事件は、連日ネット上を賑わせていた印象だ。目まぐるしく“マスク情勢”が変化する折、今ではこんな内容のツイートが散見されるようになっている。
「マスク外してる女、やっぱり全員美人」
「いまだにマスクしてる女、どうりで全員ブス」
いかにも容姿コンプレックス世界一と称される日本人らしい、根強いルッキズムが見てとれる。
そんな中、あるWEBメディア編集者はこう語る。
「4月中旬、飛行機に乗ったんですけど、キャビンアテンダント(以下CA)が、何人かノーマスクなんですよ! 何年ぶりかの光景に、なんか興奮しちゃいました(笑)」
自分の顔に自信があるCAほどマスク外してる説
2022年12月には航空機内でマスク着用を拒否した男が運航妨害で有罪判決になったりと、公共交通機関の中でも“鬼門”であった航空業界であるが、国内の航空会社19社が加盟する定期航空協会が「機内や空港内では乗客、従業員ともに着用は個人の判断にゆだねる」と政府の対応に準じている。
「マスクを外してるCAを見ると、あぁ自分の顔に自信がるんだろうなぁ、って思っちゃうようになりました(笑)」(同・WEBメディア編集者)
そこでこの「自分の顔に自信があるCAほどマスク外してる説」を検証すべく、週刊女性PRIME編集部は日系航空会社勤務の現役CA・梨那さん(仮名・24歳)に、これからまさにフライトだという忙しい合間をぬって、取材を敢行した。
「サンフランシスコなう、ってつぶやくことも禁止なくらい、弊社はSNSの運用ひとつとっても厳しいので、絶対、私だってわからないようにしてくださいね」と念を押されてから取材はスタート。
「“マスク着用緩和”の3月13日から最初の1週間は、Googleフォームで<マスク着用の実態アンケート>が1便ごとに行われていました。マスクを“着用”or“非着用”およびその理由を答えるというもの。そのフライトに乗ったすべての客室乗務員が答えて、代表者1名が集計結果を会社に報告していました」(梨那さん、以下同)
結果は、ざっくり1割程度が“脱マスク”していたという。
「着用している理由は、2割くらいは“まだほとんどのお客さんがしているから”。あとの8割は“花粉症”でした(笑)」
マスクをしていないほうが乗客側の反応が“やさしい”
気になる非着用の理由は「つける理由もないし、かといって外したい明確な理由も特にないって感じだと思います」。
「自分の顔に自信があるCAほどマスク外してる説」が存在するか検証したい旨を伝えると、「残念ながら期待には応えられないと思います」との回答だった。
「私自身は4月の第1週の国際線で、初めてマスクを外して乗務にあたりました。マスクをしていないほうが乗客側の反応は やさしい気はします(笑)。それ以来、もう国内線でも気にせず外すようにしています」
マスクを外しているCAに共通する傾向は何かあるかと聞くと、「体感的に若い乗務員ほど外しているような気がしますね。ただそう思う一方で、先輩が外していないと自分も外しにくい、という風潮もなくはないと思います」。
「コロナ禍前は、そもそもルールで<客室乗務員はマスクを着用してはいけない>と定められていました。それがコロナ禍では、<マスクを着用しなくてはいけない>になった。緩和された今、<マスクは着用しても、しなくてもよい>となった。コロナ禍前と今でくらべると、<マスクを着けることが許されるようになった>とも言えるので、“ちょっと化粧をサボることができる”みたいなのはあるかもしれません(笑)。ただ私は、コロナ禍まっただ中での入社組なので、今の若いうちに顔見せとかないとどうすんの、って感じです」
お客様からのご意見で「マスクを着用していないCAには接客されたくない」の声も一部では届くという。それでも、
「マスクを着用していない乗客には着用のご協力をお願いしなくてはいけない、というルールがなくなったのは、だいぶ楽です。頑なに着用してくれない乗客が理不尽に乗務員を責めるカスハラ(=カスタマーハラスメント)もあったと聞きますから」ーーーー。
もし酔っ払った乗客から、「自分の顔に自信があるからマスクしてないんだろ」って絡まれたらどう?
「クソ客過ぎます。完全にアウト。カスハラ決定ですね」
「自分の顔に自信があるCAほどマスク外してる」という仮説は見事に棄却されたわけであるが、「そう思ってる男の人がいるなら、マスク着けます」と怒り口調で、梨那さんはシンガポールへと飛び立っていった。