WBCで世界一&MVPを獲得し、メジャーリーグでも活躍を続ける大谷翔平。高校球児のあこがれでもあるが、大谷が使用しているニューバランスから発売されたスパイクを高野連が使用禁止としたことが物議を醸している。
「ニューバランスは大谷選手が今シーズンから用具を使用していることで注目が集まっています。高校野球対応モデルを今年3月に発売しましたが、ロゴが日本高校野球連盟用具規定に抵触する理由で公式戦では使用できないということになってしまいました」(スポーツ紙記者)
高野連が怖くて選手も監督も意見を言えない
こうした対応に対して、
《ロゴで使用禁止ってほんと頭悪すぎる》
《それ履いて楽しく野球出来るならいいやん》
などと反発する声がネット上にはあふれた。
なぜ、これほどまでに細かい規定があるのか。長年、高校野球を取材してきたスポーツライターの小林信也さんに話を聞いた。
「ニューバランスのスパイクの件については、私がルールに賛成というわけではないですが、ルールがある以上はニューバランス側の落ち度だと思います。もしくは、わかったうえで問題提起や話題作りをしたかったのか。
なぜ、こうした厳しいルールがあるのかといえば、選手を広告塔にしないということなのです。小学生や大人の草野球で使うものには当たり前に入っているロゴが、高校野球の公式戦で着るユニホームやアンダーシャツ、ストッキングなどには入っていません。
スパイクに関しても黒の単色のみだったのが、‘20年から白色のスパイクも使用可能になりましたが、1色しか使えないので、目立つ形でラインなどは入っていません」
広告に関しては厳しい規定があるが、目立つものもあるという。
「グローブにはロゴが入っていますが、こちらは“縦4センチ、横7センチ以内”と規定されていますが、かなり大きいので、投手を正面から写すと結構目立ちます。なので、甲子園が決まった高校には用具メーカーが無料で提供する場合があります。監督と特定の用具メーカーの仲がよかったりすると、選手が自由にグローブを選べないというケースもあると聞きます。
なかには監督から使うように言われたグローブを拒否した結果、進学希望の大学にいけなかったという話もありました。シューズなどでも同様の問題が起こることは十分に予想されますから、ロゴについての規制は選手を守るという意味でも一定の規定は必要だと思います」
一方で、高野連の“矛盾”について指摘した。
「甲子園球場を無料で借りているとはいえ、球場にはかなりの数の広告が出ています。以前は、高校野球で使用する際には広告を隠していましたが、今では隠し切れないほどの広告があるので、そのままです。高校野球の聖地と言いながら、広告の聖地かと思うくらいです」
WBC日本代表のヌートバーが持ち込んだ“ペッパーミルパフォーマンス”を今年3月の春のセンバツで東北高校の選手が行い、審判から注意された。
「武道的な発想になってしまいますが、少し結果を出してガッツポーズをして浮かれると、足をすくわれてしまうという考えがあると思います。喜び合って、コミュニケーションを取るというのを、すべて否定はしませんが、すべて肯定したほうがいいという論調にも私としては賛同できないです」
ただ、注意をした審判や高野連についてはこう話した。
「あの行為を規制する理由はないんです。プレーが止まっているときに手袋を取ったり、汗を拭いたりするのは自由なので、そこでペッパーミルをやったから怒られるというルール上の理由はないんです。どういう根拠で指導しているんですか?という話です」
さまざまな理由で制約があるが、一番の問題点とは……
「議論ができないということが問題で、高野連に現場の意見が反映されているという実感は全くない。『ニューバランスのスパイクを使いたいからいいですか』とは高野連に目をつけられるのが怖くて選手も監督も言えません。
希望があれば、みんなで議論できるような風通しのいい組織になるべきですが、実際はそうはなってない。そういう意味では、高野連というのは閉鎖的な組織だと思います」
せっかく大谷翔平をはじめとする侍ジャパンのメンバーたちがもたらした野球フィーバーなのだから、高校球児たちを守りつつ、のびのびと楽しくプレーできる環境を大人たちが整備していってほしい。