《怖い。友達が詐欺にあった。駅前で、若い女性から「新人の研修で、名刺を交換しないと…」と話しかけられ『かわいそうに』と名刺を渡した。その後日、マンション投資のサギで大金をなくした》
3月31日、衝撃的な内容で8万件もの《いいね!》を集めたこのツイートは“名刺交換詐欺”とよばれる行為に関する投稿だ。
「春の時期になると、新入社員研修を名目に“名刺交換をしてほしい”と話しかけて来る若者が出没します。都内であれば東京駅や品川駅、新橋駅などのターミナル駅を中心に、名刺を持っている確率の高い、スーツを着たサラリーマンや新入社員に声を掛けて連絡先を入手し、自宅や職場に営業電話をしつこくかけるというのが問題になっています。場合によっては、悪質な詐欺に発展する場合もあります」(経済紙記者)
騙されても「摘発は難しい」
この行為について、犯罪ジャーナリストの中島正純さんに話を聞いた。
「このケースを詐欺として扱うことは難しいです。マンション投資の詐欺だったとのことですが、詐欺の構成要件は“相手を騙して財産的な処分行為をさせること”なので、名刺交換自体は問題にはならないでしょう。強引な営業に納得して購入されたのであれば、正式な商取引ですが、名刺交換と不動産の購入は別問題だと思います」(中島さん、以下同)
“新入社員の研修というから名刺を交換したのに、本当の目的は営業活動だった”というのは、相手を騙したことにはならないのだろうか。
「一般的に、名刺を交換するときは“これからビジネス相手としてよろしくお願いします”という意味も含まれているので、交換した相手に対して営業活動をするのは当たり前といえば当たり前なんですよ」
大事なのは「断る勇気」
街中での名刺交換の問題点として不退去罪や業務妨害などが挙げられているが……。
「これらの罪も当てはめにくいです。例えば、コンビニの中で買い物もせずに名刺交換をしていた場合、不退去罪として対応してもらえると思います。ただ、駅前の人通りが多い場所で名刺を配っているくらいでは、それが私有地であっても、警察を呼ぶ人もなかなかいませんよね。名刺に書いてある携帯番号や職場へのしつこい電話での営業行為についても、よほど悪質な場合は“偽計業務妨害”が当てはまるかもしれませんが、正直厳しいところです」
取り締まりが難しいこの行為は、最近になって始まったことではない。
「“○人と名刺を交換するまで帰ってくるな”という新人研修は、15年以上前から行われており、今も取り入れている会社はたくさんあります。新人が名刺を配って、顧客リストを作るというのは、一般的な営業活動であって、犯罪行為ではありませんよね。これらの行為を取り締まるとするなら、全ての営業活動ができなくなってしまうでしょう」
研修や営業活動の一環となっているから、撲滅するのは難しい。被害に遭うことを予防するためには“断る勇気”を持つことが重要だ。
「名刺を交換するときは、相手の名前や会社名を見た上でするわけですから、ある程度納得した上で行われたとみなされます。だから、その後しつこく営業電話がかかってきた場合、“やめてください”と勇気をもって断っていただきたい。断っているにも関わらず、しつこく電話があれば犯罪に抵触する可能性があります」