相馬寛大容疑者のSNS

 犯行現場となった愛知県知多市の交際相手の実家から、神奈川県小田原市の自宅アパートまで、高速道路を利用しても約4時間弱かかる。距離にして約279キロメートル。彼女名義の車でこの長距離を逃げた男は犯行翌日、自宅前で見かけない顔の男たちに囲まれていた。

「10人ぐらい私服の刑事さんが来て、腰にヒモを巻かれて質問に答えているようでした。ポケットの中身を全部出すよう裏地をひっくり返され、靴も脱がされて中に何か入っていないか地面にトントンされていました。会えば向こうから挨拶してくれる感じのいい人なんですけどね」(容疑者宅近くの住民)

逮捕された相馬寛大容疑者(ANNニュースより)

 金色の短髪がトレードマークで実年齢よりずっと若くみえた。逮捕時は水色のダンガリーシャツに黒っぽいジーパン。声を荒げたり、抵抗したりする様子はなかったという。

 愛知県知多市の西岡歳一さん(80)が自宅で首を切られ殺害された事件で、愛知県警は4月22日、現場から逃走し神奈川県小田原市の自宅に戻っていた自称無職・相馬寛大容疑者(43)を殺人の疑いで逮捕した。

 相馬容疑者は西岡さんの長女(49)と交際しており、数日前から長女と一緒に、西岡さんがひとりで暮らす実家に姿を見せていた。事件があったのは21日午後11時すぎ。

交際相手の父親の首を包丁で切った

「長女が入浴中、相馬容疑者と父親が言い争う声を聞き、様子を見に行くと居間で父親が首から血を流して倒れていた。そばに血の付いた包丁が落ちており、長女は“父親が刃物で首を切られた”と119番通報。相馬容疑者は現場から逃げた。包丁は台所にあったものとみられ、捜査当局は何らかのトラブルをきっかけに突発的犯行におよんだとみて調べている」(全国紙社会部記者)

 病院に救急搬送された西岡さんは約2時間後に死亡。死因は大量出血だった。目立つ刺し傷だけでも4か所あり、一部は内臓に達するほどだったから強い殺意がうかがえる。

 逮捕当初、相馬容疑者は、

「言い争いや犯行は覚えていない。気付いたら車を運転して小田原に向かっていた」

 と容疑を否認。

 しかし、その後の取り調べに対し、

「思い出した。自分がやった」

 と犯行を認めたという。

 自宅はJR国府津駅から徒歩約10分、家賃月額4万円台の1DK木造アパート。同じアパートの住人によると、半年ほど前に引っ越してきたばかりという。

容疑宅アパートの部屋からは楽しそうな笑い声が聞こえてきたという

「悪い人間には見えなかった。むしろ、最近では珍しく、洗剤を持って引っ越しの挨拶に来たりと折目正しいところがあった。作業着やパーカー姿でリュックを背負い、50ccのスクーターや軽トラックで朝早く出勤していた。一度だけスクーターを通行の邪魔になる場所に停めて“ここに停めるな”と張り紙されていたことがあった」(同住人)

 転居と同じタイミングで農業の仕事に就いたが、昨年12月半ばに突然辞めてしまったという。

「愛想のいい男で、仕事はまじめに取り組んでいた。なぜか、ときどき名古屋に行っていたが彼女がいるとは知らなかった。3か月ちょっと経ったころ、急にバックれて仕事に来なくなったんだ。電話して“おめえ、何やってんだ”と尋ねたら、“上のやり方についていけない。イヤになっちゃって”と言う。若造じゃあるまいし、そんな無責任なことないよね」(元同僚の男性)

 容疑者の知人男性によると、前職は茨城県の卵生産農家で働いていた。農業のほか解体工や建設作業員などの職人経験もあるが、いずれも長続きしなかった。

「殺害された西岡さんは、周囲が“やさしい人”と評する温厚な人柄で知られていた。長女は相馬容疑者とネットで知り合ったといい、“料理を作ってくれる彼氏”などと紹介していたようだが、仕事をすぐ辞めてしまう堪え性のなさと生計面は西岡さんも心配していたらしい」(前出・記者)

 仕事ぶりはまじめでも、無職だったから安定収入にはほど遠い。その上、就職するには越えなければならないハードルがあったとみられる。

 前出の元同僚は、一緒に働き始めてしばらく経ったある日、相馬容疑者が急にこんなカミングアウトをしたことを覚えている。

窃盗でパクられて刑務所に入っていた

「知ってましたっけ?実は俺、窃盗でパクられて刑務所に入っていたことあるんすよ」

 2004年~2010年にかけ、仲間3人と神奈川、静岡、香川各県で約370件の窃盗や強盗を繰り返したとして逮捕。侵入先で電話線を切断して警備会社などに連絡できないようにする手口から“電話線切断広域窃盗事件”として3県警による合同捜査本部が設置された重大事案だった。

「いわゆる金庫破りで、狙ったのは閉店後の店舗など。居残っていた従業員にケガを負わせるケースもあった。被害総額は約2億1000万円とみられ、奪った金は遊興費に使ったと話した」(前出・記者)

 別の知人によると、相馬容疑者はこの強盗・窃盗事件前は妻子がおり、家族仲もよさそうだったという。出所後は別の場所に転居し、妻子と愛犬と暮らしていたとみられる。転職と転居を繰り返し現在はひとり暮らし。

 西岡さんの長女と交際する前はよほど寂しかったのか、ひとりで外食して酒を飲む様子を《ボッチ飲み》などと題してSNSに何度も投稿し、ときには自宅で酒の肴をちゃちゃっと手料理する様子をアップした。

交際相手がいなかった頃は、同情を誘うようにひとりぼっちで飲む画像ばかり投稿していた(SNSより)

《ボッチ呑み。今日って満月近め?月が綺麗っす。皆さんは、同じ空をみられていますか?》(昨年9月9日)

投稿で“リア充”を匂わせるように

 1人前の酒とつまみの画像投稿に変化がみられるのは昨年9月下旬ごろ。テーブルに2人前が並ぶ“匂わせ”投稿が始まった。

《今日は、箱根にきてるよ。休みを遊びに来てくれた、レディーと。ヨシ!これから何しよかぁなぁ〜》(昨年9月20日)

《スシローに行ったよ。スシ、スッシ、テレッ、ぴあー。みんな連休如何お過ごしですか?》(昨年9月26日)

 とやたらハイテンション。

 ひとりで一気に食べるとは思えない軍艦6皿をテーブルに広げ、彼女と1つずつ食べるのかパフェ2つを並べるなど“リア充”を匂わせた。

 ほぼ同時期、自宅アパートには名古屋ナンバーの車が駐車されるようになった。

「何度か女性の姿を見かけるようになり、彼女ができたのかなと思っていた。部屋から女性の声が聞こえ、笑い声がするなど楽しそうだった」(前出・住人)

 別の近隣住民も、名古屋ナンバーの同じ車を何度も見かけており、遠距離恋愛は順調そうにみえた。あるいはその先の結婚などを見据えたプランがあったのか。

 事情を確認するため相馬容疑者の実家を訪ねると、インタホン越しに母親は、

「(西岡さんの長女と)交際していることは全く知りませんでした。(結婚の相談や報告は)ありません。失礼します」

 とだけ言ってインタホンを切った。

「捜査当局は、容疑者が西岡さん宅を訪問した理由やトラブルの背景、犯行動機について詳しく調べる方針だ」(前出・記者)

 動機の解明が急がれる。

 

交際中に相馬容疑者が投稿したとみられる回転寿司店での匂わせ画像(SNSより)

 

パフェも2つ(SNSより)

 

容疑宅アパートの部屋からは楽しそうな笑い声が聞こえてきたという