「タレント」「歌手」というかつての肩書や経歴を捨てて第2の人生を選んだ元芸能人たち。まったく異なった世界へ飛び込んだ彼、彼女らを待っていたのは芸能界以上に厳しい「現実」、そして想像以上の「やりがい」だった―。『クイズ!ヘキサゴンII』などでも活躍した元演歌歌手の香田晋さんと『FUNKY MONKEY BABYS』の元メンバー・DJケミカルさんは芸能人から僧侶の道へ……。
『男同士』で第31回日本レコード大賞新人賞を受賞し、1994年には『夢いちど』で紅白歌合戦に出場していた元演歌歌手の香田晋さん。『クイズ!ヘキサゴンII』などで活躍したタレントのイメージも強いのでは。
講演会では「感謝して今を生きる」
その彼が突然、芸能界引退発表をしたのは今から10年以上前のこと。そして引退して3年がたったときに小誌の取材でこう語っていた。
「精神面で追い込まれていたんです。精神科にも通っていましたから。バラエティー番組では明るく振る舞っていたけど、僕の心の中はズタズタだった」
と。そして再婚した女性と故郷福岡で料理店を開店、ランチなどが評判の店だった。
その香田さんの現在だが、現在はお店を閉じ、出家して仏門(曹洞宗)に入っている。
福井県美浜町にある由緒あるお寺で、僧名は「徹心香雲」というそう。心が洗われるような美しい響きだ。
出家したきっかけは新聞報道によると、長年介護をしていた義理の祖母を亡くし、自分で供養したいということで知人の住職に相談したことから仏門への道が開けたという。
今年の3月29日に行われた講演会では、歌を披露しながら「感謝して今を生きる」と題して60分間話したことが本人のフェイスブックで紹介されている。袈裟をまとった姿で、すっかり立派なお坊さまだ。
僧侶として歩き出し、新たに書家香雲としても活動中。その書画は自身のインスタグラムで紹介している。今では精神も穏やかに、神仏の世界に身を置いているようだ。
2年前に8年ぶりに一夜限りの復活も
もう1人は2000年代に一世を風靡した伝説の音楽ユニット、FUNKY MONKEY BABYSのDJとして絶大な人気を誇っていたDJケミカルだ。
ケミカルさんの実家は鎌倉時代に開山された由緒正しい古刹で、長男として生まれたこともあり、跡を継ぐことは本人の意志でもあった。2013年、人気絶頂のときに、迷うことなく僧侶になる道に進み出したときには、そのぶれない生き方が、ファンだけでなく多くの若者たちに感銘を与えている。
2年前には解散から8年ぶりに一夜限りの復活を遂げ、ケミカルさんも出演。これを機に、新たな活動を始める元メンバーである2人に向け、《人生にはそれぞれ与えられた役目があると思います。僕は精神世界の探求であり、2人はやっぱり歌を届ける事だと思います。是非ファンモンの歌で日本中、世界中に前向きな力を与えて欲しいとお願いしました。楽しみにしています!》(一部抜粋)と、コメントを寄せている。
しかし、その日を境に今日まで表舞台には出ていない。現在は智文副住職(ケミカルさんの僧名)として修行を続けている。華やかな芸能界での経験を糧とした「転職」も、まったく違う世界へ踏み出した「転職」も、どの人も自分らしく“やりがい”を感じて生きている。それぞれの新しい生き方を応援していきたい。
1967年生まれ、福岡県出身。1989年にデビュー。その後、演歌歌手としてテレビなどで活躍。2012年に引退。
DJケミカルさん
1982年生まれ、東京都出身。2004年にデビューした音楽ユニット、ファンキーモンキーベイビーズのDJとして活躍。2013年に電撃引退。
取材・文/水口陽子