『クラシアン』在籍中に、それぞれの男性上司からセクハラを受けたという元従業員の女性2人

 磯村勇斗と麻生久美子がテレビCMに出演している、水回りのトラブル修理などを行う会社『クラシアン』。「♪くら~し安心、クラ~シアン」のCMソングでおなじみだが、4月24日、同社の訴訟トラブルについて『文春オンライン』が報じた。

 記事によると、元従業員の女性2人が『クラシアン』在籍中に、それぞれの男性上司からセクハラを受けたとして、3月30日付で各上司と会社に対して横浜地裁に提訴したという。

 改めて、被害者であるA子さんがその被害を振り返る。

「昨年12月19日、執行役員のX氏に誘われた社内の忘年会での出来事でした。私のほかには、X氏を含む男性役員3人と別の女性社員が参加しました。私が残業のために遅れて合流すると、すでに全員が酔っ払っていました」(A子さん、以下同)

磯村勇斗と麻生久美子がテレビCMに出演している、水回りのトラブル修理などを行う会社『クラシアン』

採用してくれた上司が突然……

 事件が起きたのは、3次会で訪れたガールズバーでのこと。

カウンター席で、私はX氏の右隣に座りました。X氏はかなりの泥酔状態だったため、私は店員に水を頼むなどの介抱をしました。すると突然、私の腰に手を回して、キスをしてきたんです

 この翌日、A子さんはX氏から受けたセクハラによる精神的苦痛で休暇を取得。一晩悩んだ末に、忘年会での出来事を女性上司に泣きながら話したという。

「X氏は、私を採用してくれた方でした。入社後も期待してくださって、評価もしてくれていました。私はそれが嬉しくて、それに応えようと頑張って仕事していました。そんな中で、酔っているとはいえX氏からキスされたことはショックでしたし、これまでの上司と部下の関係性が崩れたこともショックで……。

 これまで頑張ってきたことが全否定された気持ちになりました。だから、一緒に仕事ができなくなったんです。本当はもっと頑張りたかったですし、みんなのもとへ戻りたかったです。でも、X氏と今までと同じようには接することはできなくて……」

 その後、女性上司の助けを借り、社内のコンプライアンス委員会に報告したが、A子さんへのヒアリングは行われないまま。2023年1月27日に賞罰委員会が開かれたが、セクハラの事実は認められなかったと結論づけられた。

 A子さんは、セクハラ被害とクラシアンの一連の対応により、病院でうつ状態と診断され、退職した2023年3月末まで休職せざるをえなかった。

ほかの社員が大勢いる前で怒鳴りつけられて

 もう1人の被害者のB子さんが受けた被害は、セクハラだけではなかった。

昨年から、IPOを目指すプロジェクトに携わっており、メンバーのうち、私以外は役員と役職付き本部長だったため、事実上ほぼすべての業務を請け負っていました。その中で、契約書のリーガルチェックが必要だったので、担当である別部署のY氏に依頼しました。すると、“私のジョブミッションではない”“あなたのせいで退職しますよ”などと、ほかの社員が大勢いる前で怒鳴りつけられたのです」(B子さん、以下同)

 上司に相談するも“リスペクトが足りない”と言われ、Y氏に不快な思いをさせないために、今後は直接コンタクトを取らないよう指示されたそう。

これまで有休の日にもミーティングに参加したり、残業もたくさんして業務をこなしてきたのに、こういった判断をされたことで夜眠れなくなったり、就業前に体調が悪くなるなどの影響が出てきて……。心療内科を受診したら、適応障害で3か月の休暇が必要だと診断されました。しかし、“今、それだけの期間を抜けられると困る”と、診断書を受け取ってもらえず、1週間しか休ませてもらえませんでした。無理を押して復帰したこともあり、体調が悪化する一方だったので退職を申し出たら部署異動を提案されました。状況の改善を検討するということだったので1度はクラシアンに残ることにしました

『クラシアン』在籍中に、それぞれの男性上司からセクハラを受けたという元従業員の女性2人

 しかし、2022年11月から異動した部署の直属の上司であるZ氏から、セクハラの被害を受けることに。

Z氏と1対1のオンラインミーティングが頻繁にありました。異動してすぐのころは業務に関する内容でしたが、だんだん個人的な話題が多くなり“お前と2人で話す時間が癒しだ”などと言われるようになって……。“お前って胸大きいよね”、“俺に巨乳アピールしていいよ”とか“その巨乳があれば事業部長も言うこと聞いてくれてイチコロだよ”といった発言をされました

 これらのセクハラにより、適応障害が悪化。再び医師から休職が必要、もしくは退職を検討するべきという診断を受けた。そのため、被害をZ氏の上司に相談したが、“人事には相談しないでほしい”などと言われ、セクハラを内々で収める流れに。これに不満を感じたB子さんは、社外の窓口に通報し、その後クラシアンを退社した。

 クラシアンは、『文春オンライン』による元従業員の告発に対し、裁判に関わるため具体的な回答は控えるとしたうえで、次のように回答した。

《不適切な言動や行為を行った当該従業員については、既に厳正な指導ならびに処分を行っております》

 しかし、A子さんとB子さんは

現状、処分をしたという話は聞いていません

 と、口を揃える。

クラシアンの代表取締役を直撃すると

相談していた女性上司から、”処分は何もなかった”と聞きました。もしあったとしても、口頭での厳重注意程度で終わっているのだとおもいます」(A子さん)

「私の件は、人事への報告も止められたため、コンプライアンス委員会が開かれたという話すら聞いていません。もしあったとしても、被害者である私へのヒアリングはまったくありませんし、委員会としてきちんと機能しているのでしょうか」(B子さん)

 5月上旬、セクハラ、パワハラの処分が正しく行われたのかを聞くべく、クラシアンの代表取締役である今田健治氏の自宅を訪ねた。今田氏に声をかけたが、

会社を通してください

 と答えるだけ。

──A子さん、B子さんは処分について聞いていないようだが?

「すみません」

──裁判ではセクハラ、パワハラはなかったとするのか?

裁判で言います

──代表取締役としての責任は?

それも裁判で……

──セクハラ、パワハラが横行する会社が“くらし安心”と言えるのか?

「……」

 口を濁したまま、一礼して自宅に入って行った。

 今回の訴訟では、クラシアンとそれぞれの加害者に対して約860万円の支払いを求めている。しかし、彼女たちが戦う理由は“お金”ではない。

セクハラ訴訟は、手間もお金もかかりますし、正直言って私たちにメリットはほとんどありません。でも、会社が変わらないと、     今後一般のお客様に被害が出る可能性もあると思いました。クラシアンの作業員が一般の方のご自宅にあがるので、そこで性的な事件が起こったりしたら……。第2、第3の私たちが社内だけじゃなくて、一般のご家庭にも出てくる前に“声をあげよう”と」(B子さん)

弁護士さんの助言があって、お金は請求していますが、そこは期待していません。それよりも、クラシアンにきちんと体制を整えてほしいという思いがありました。これから先、私たちみたいな人が、もう生まれてほしくなかったんです」(A子さん)

 本当に“くらし安心”と言える日はくるのか──。