高見沢俊彦(以下、高見沢)「毎月、ある雑誌の連載で新旧問わずコミックを紹介するコラムを書いているんで、コミックを読む機会が多いんです。そんな中、タイトルに惹かれて手に取ったのが『グランマの憂鬱』でした。だから、こんな偶然があるんだなと驚きましたね」
ドラマプロデューサーからのたっての希望
同名の人気コミックを原作にドラマ化した『グランマの憂鬱』(東海テレビ・フジテレビ系全国ネット、毎週土曜、夜11時40分~)の主題歌『鋼の騎士Q』と『Never Say Die』のダブルAサイドシングルをリリースするTHE ALFEE。
桜井賢(以下、桜井)「僕も雑誌でコラムを書いていまして。原作については……」
高見沢「書いてないよな」
桜井「書いておりません(笑)。もともとあまりコミックを読まないので『グランマの憂鬱』は、これをきっかけに知りました」
坂崎幸之助(以下、坂崎)「僕も同じです(笑)」
高見沢「主題歌を作らせていただくにあたり、ドラマのプロデューサーさんから“ぜひ、桜井さんに歌っていただきたい”という要望があったんです。ここのところシングルは桜井がメインボーカルの楽曲が続いていたので、次の作品は坂崎か僕にしようと、桜井にもそう伝えていたんですよ。
本人も次は自分じゃないとホッとしていたようですが、“やっぱり、おまえな”って言ったら一瞬ムッとしちゃってね(笑)。でも、ドラマプロデューサーからのたっての希望だと言ったら、まんざらでもない表情になりました(笑)」
坂崎「頼まれちゃったら、しょうがないって(笑)」
桜井「(苦笑)」
村の難事を仕切る“総領”を務める百目鬼ミキ(萬田久子)が、村人が抱える問題を愛ある「喝!」で導いていくドラマ。舞台となる山あいの村のイメージから、ケルティックサウンドにしたという。
高見沢「物語の世界観とも合うし、僕らが得意とするコーラスやアコースティックサウンドも活かせる楽曲にしたいと思いました。それと、ミディアムテンポという要望もありましたし、個人的にもケルティックサウンドやフォルクローレが好きなんで、その路線で作りました。これまでの楽曲で同じイメージといえば『無言劇』( '80年)とか」
坂崎「『エルドラド』( '94年)もそうだね」
高見沢「(高見沢が小泉今日子に楽曲提供した)『木枯しに抱かれて』( '86年)にも、そのテイストがありますしね」
タイトル『鋼の騎士Q』のQにどんな意味があるのかを聞くと、
高見沢「Qがつくと、みなさんに“このQは、なに?”と不思議に思っていただけるんじゃないかと思いまして」
坂崎「クエスチョンのQですね。なんて(笑)」
高見沢「タイトルのQに、Quest・冒険の旅という意味と、村のQueenであるグランマのQをかけています。オバケのQ太郎を指すQではありません」
坂崎「『鋼の騎士Q』の作者(高見沢)は、食欲オバケのQ太郎だけどね」
高見沢「そうなんです。意外とよく食べる。育ち盛りのおじいちゃんです(笑)」
常に細身のスーツに身を包んでいる、スレンダーな印象があるのだが、
高見沢「そんなことないですよ。意外と、脱いだら裸ですから」
坂崎「当たり前ですよ(笑)」
桜井「おまえ、ほんと面白いね」
坂崎「健康優良ジジイです(笑)」
こんなに長く一緒にやるとは思わなかった
それでは、グランマを示すQueenから連想するのは?と尋ねると、やはりロックバンドのQUEENの名前が出てきた。
坂崎「3人とも好きですから」
高見沢「僕らと同じ時期にデビューしているバンドですし。QUEENは '73年で、僕らは '74年。1年違いで。ただ、QUEENの日本デビューは ’74年なんですよ」
坂崎「僕らの日本デビューと同じ」
高見沢「THE ALFEEは日本でしかデビューしてないけどね(苦笑)」
今年、結成50周年を迎える3人。改めて結成当時を振り返ってもらうと、
坂崎「日記にね、結成日のことが書いてなかった。ちょっと前に、たまたま当時つけていた日記帳が出てきて確認したんです。書いてあれば、結成記念日がわかったかもしれない」
THE ALFEEの前身にあたるグループで、初期メンバーに名前を連ねる桜井らが結成したバンド『コンフィデンス』。このバンドに坂崎と高見沢が加わったことで、“生きる伝説”と呼ばれるグループの歴史がスタートした。
坂崎「こんなに長く一緒にやるとは思わなかったですよ」
桜井「まさか50年もね」
高見沢「学生のころ、僕と桜井はデビューするなんて思ってもいなかったし、プロになる気もまったくなかった。坂崎だけだったね、プロへの思いが強かったのは」
桜井「私なんて、いまだにプロ意識がないですから」
坂崎「いまだにないのかよ(笑)」
桜井「だからなのか、僕らは、デビューした後が大変だったんです。首をかしげたくなるようなことが、たびたびありました。レコード会社も辞めて、どん底を味わったからこそ3人の方向性がひとつになったと思います。
ライブハウスから小ホール、大ホール、アリーナとだんだん会場が大きくなっていったのは気持ちがひとつになっていたからでしょうね。ただ、この3人じゃなければ続かなかっただろうなとは思いますよ」
高見沢「この50年で一度も活動休止も停止もしていないですからね。僕は、バンドの矜持とは長く続けることだと思っています。もちろん、そのためには、ファンの方の情熱がないとできません。僕らだけでは無理ですからね。
スタッフも含め、THE ALFEEのサウンドをサポートしてくれている方々に感謝しなきゃいけません。そういう結成50周年にしたいですね。だって、箸にも棒にもかからない3人が集まって作ったバンドが、50年も続くなんて奇跡そのものですからね」
坂崎「僕らのどこがいいんだ?って(笑)」
高見沢「これも、新曲を出して、ライブやって。その積み重ねの結果だと思うんです。僕らの歌を見つけてくれたみなさんに、本当に心から感謝しています。家庭の事情で一度離れても、またコンサートに足を運んでくれる方も多いと聞きます。
これこそ、やってるもん勝ちですよね。戻りガツオ、いやカムバックサーモンのように戻ってくれて最高にうれしいです(笑)」
坂崎「“(YouTubeにある料理動画の)あのカツ丼を作った人たち、歌も歌っているんだ”というところから入ってくる人もいる。以前は冗談で言っていた、3世代でコンサートに来てくれる方もいて。THE ALFEEは入り口が広いですから」
“どこが?”と謙遜するが、グループの魅力のひとつとして最初にあげるとすれば、桜井、坂崎、高見沢の“3声”によるハーモニーだろう。それぞれの特徴ある魅力的な声がぶつかり合うことで、唯一無二のハーモニーが生まれていく。
高見沢「そこを目指してやってきましたから。3人の個性あるリードボーカルがいるのだから、主張のあるコーラスでも構わない。もちろん、溶け合うように裏声だけで歌うときもありますけどね」
坂崎「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングや、ビートルズみたいなバンドの3声のコーラスを聞いたときに衝撃を受けたんです。合唱団のコーラスとは違う、溶け合わない、ぶつかり合う感じに。2声のコーラスとも、また違うんですよね」
桜井「“バンドでコーラスをやりたい”というのが僕らの始まりですから」
高見沢「そう。(大学時代)キャンパスでも、よく3人で歌っていましたからね。運動部の面々によく怒鳴られたよな」
坂崎「とにかくデカい声で歌っていたから」
高見沢「たまに皿とか飛んできたりしてね」
坂崎「“これはまずい!”と思ってすぐ帰ったよな(笑)」
いつもと変わらない1年に
高校で出会い、今日まで歌い続けている同級生3人は、来年デビュー50周年を迎える。特別な計画はあるのだろうか。
高見沢「いつもと変わらない1年になるんじゃないですかね。いつもどおりにライブをして、いつもどおりに楽曲を創作する。ただ、その年がデビューから50年であるという」
坂崎「半世紀ですから、まわりは何かやってくれるかもしれないけど。それはね、“ありがとうございます”とお受けします(笑)」
高見沢「ぜひ、週刊女性の表紙でもお願いしますよ!」
改めてグループ名の由来を教えてください
坂崎:よく冗談ではね、“ある日(アルフィー)、突然”と言っていましたけど。
高見沢:呼びやすい、覚えやすいということでレコード会社の方がつけてくれたんじゃないかな? 最初は少し抵抗がありましたよ。ほら、名前でもそうじゃないですか。“賢”ってちょっと恥ずかしいなと思う名前だけど、桜井もここまでくると結構いいなと思う。
桜井:大きなお世話だよ(笑)。人の名前で遊ぶな。でも、“違う名前だったら”と思ったことのある人は多いと思うよ。
坂崎:ほんとうにそう。自分でつけたものじゃないから。最初の“コンフィデンス”というグループ名には結構、愛着があったからな。
高見沢:本当は、変えたくなかったよな。
坂崎:ただ、似た名前の情報雑誌があったりしたので、変えたほうがいいと言われて。考えたけれど、僕らの中じゃいい名前が出てこなかった。そうしたらスタッフが“ALFEE”を提案してくれて。
桜井:ほかにもいくつか候補があってね。
高見沢:当時、事務所の先輩にガロというカタカナ2文字の人気グループがいたから、ドレミファソラシドの“シド”と、という名前になったりしたな。
坂崎:シドが有力候補だったのが、突然、ALFEEになった。
高見沢:多分あの頃、TBS会館の地下にシドという名前のレストランがあって、それで、やめようという話になったんだと思いますね。
桜井:THE ALFEEって意外と発音が難しいよね。僕らの先輩なんかは大体“アルヒ―”って言うから。
坂崎:桜井の家のおじいちゃんは、“アルフェ”だっけ?
桜井:違うよ。それ、花屋が間違えた話でしょ。
坂崎・高見沢:花輪が届いたんですよ!
桜井:“アルフューさんへ”って
坂崎:それも、桜井の地元でライブをしたときに。カタカナで“アルフュー”さんへって(笑)。
高見沢:あのときの花輪の写真、残っているよな。
坂崎:ある(笑)。確かに、言いづらい名前だよね。
高見沢: 50年も経つと、色々ね、ありますね。
ヘアメイク/野原ゆかり