「飲めなくてもええねん、飲むならそれもええねん♪」
最近、こんな歌が流れるCMが放送され話題になっている。これはアサヒビールが提唱するお酒の飲み方『スマートドリンク(スマドリ)』を広めるためのもの。浜田雅功や小杉竜一ら、吉本興業所属の芸人が歌いながらテーブルを囲んで“宴会”をしているという内容だ。
なぜ今このCMを? 広報担当者に聞くと
お酒を飲める人も、飲めない人も一緒に楽しみましょう、と訴える取り組みだが、ネット上では、
《なぜそこまでプッシュする?》
《YouTubeなどでやたらと流れていて気になる》
といった声が続出─。一気飲みの強要や飲み会への強制参加などの、いわゆる“アルハラ”の問題も聞かれなくなった昨今、なぜわざわざこのようなCMを流すのか? アサヒビールの広報担当者は、
「もともと『スマドリ』については'20年12月から宣言をしてきたのですが、みなさまに私どもの思いが正確に伝わっていないのかなと。そこで今回、吉本興業さんとコラボさせていただきまして、『スマドリ』のイメージをわかりやすくお伝えしよう、という思いでPRしております」
と説明。伝わっていない「私どもの思い」とはどういうものなのか、
「お酒を飲める人も飲めない人も同じ場所で、一緒にその場を楽しめるということが『スマドリ』の考え方です。ただ、お酒の弱い人には低アルコールのこの商品、飲めない人にはノンアルコールがありますよ、と商品をすすめているだけなのかな、と思われてしまった部分があり、それだけではないですよ、ということをお伝えできればと」
まずはみんなで集まる場をつくりませんか?
この商品を飲みましょう、ではなく、楽しく飲むという“概念”を伝えたいということなのか。飲料専門家の江沢貴弘さんは、
「アルコールとか、ノンアルコールといった垣根を取っ払った上で、みんな“飲み友達”としてつながろう、ということだと思います。新しい飲み会、コミュニケーションの場の提唱なのでしょう。
3年間のコロナ禍で“個”としての生活が定着しました。人と会えませんでしたから、自宅で自分の飲みたいものを、自分のペースで飲むというライフスタイルが確立してきましたよね。コロナの規制が緩和された今、そういった個人のスタイルをキープしながらも、みんなで集まって飲食するのは楽しいよ、と。まずはみんなで集まる場をつくりませんか、ということだと思います」
お酒を飲むために集まるのではなく、みんなが集まったところに飲みたいと思うものがある、というのが理想のようだ。前出のアサヒビール広報担当は『スマドリ』への取り組みについて、
「『スマドリ』という言葉と考えの認知率を、'25年までに40%まで上げたいと考えています。さまざまな人の飲み方の選択肢を広げて、多様性を受容できる環境づくりを進めていきたいです」
飲料メーカーは以前にも増して、消費者の生活スタイルの提唱までしないといけなくなるとは……。これがまさに“多様化の世界”!?