「プロゴルファーになっていたとは知らなかった。子どもの頃はよく庭でゴルフクラブを振り回していたけど」
と容疑者宅近くの男性は話す。
男子中学生(14)に現金を渡す約束をして性的な行為をしたとして茨城県警人身安全少年課とつくば署は5月12日、同県土浦市のプロゴルファー・保田和貴容疑者(31)を児童買春・ポルノ禁止法違反(買春)の疑いで逮捕した。認否は明らかにしていない。
今年1月30日、同県つくば市内のホテルでの犯行だった。
「県南地域在住の男子中学生に対して現金を渡すと約束し、18歳未満と知りながら性交類似行為をした疑い。2月に入って中学生が家出して行方不明になり、家族の届け出を受けて県警が捜索。数日後に見つかった中学生にどこに行っていたかなど事情を聞く中で、本件被害が発覚した」(捜査関係者)
県警は、2人がインターネットの掲示板で知り合ったとみて詳しい経緯を調べている。
日本ゴルフツアー機構のデータによると、保田容疑者は身長168センチ、体重72キログラムと比較的小柄な選手。父親の影響で8歳からゴルフを始め、ドライバーの平均飛距離は300ヤード、得意クラブは2番アイアンという。
石川遼選手としのぎ削るライバルだった
ここ十数年、大きな大会での戦績は確認できないが、かつては期待された選手だった。
「同学年のスタープレーヤー・石川遼選手としのぎを削るライバルだったんだよ」
と地元の男性は振り返る。
2007年9月に栃木県鹿沼市で開催された「ジャパン・ジュニア・クラシック」最終日。県内の私立つくば開成高1年だった保田容疑者は 15~18歳男子の部(6571ヤード、パー72)で初日と同じ70打で回り、通算4アンダーで同学年の原敏之選手(香川=藤井学園寒川高)と首位に並んだ。最終ホールで猛追をかけたのが、史上最年少賞金王となる石川遼選手(東京=杉並学院高1年)だった。
「連続OBで出遅れるなど1打差で最終18番ホールを迎えた石川遼選手は3メートルのバーディパットを決め、土壇場でプレーオフ勝負に持ち込んだ。プレーオフでは地力を発揮し、5メートルのバーディーパットを沈めて逆転優勝。当時、“ハニカミ王子”と呼ばれていた石川選手のドラマティックな勝利にギャラリーは大盛り上がり。報道陣からは翌日が誕生日の石川選手にバースデーケーキが差し入れられ、笑顔でロウソクの火を吹き消すなど“遼くんフィーバー”の一日となった」(スポーツ紙記者)
マスターズ覇者に逆転勝利した過去
石川選手にばかり注目が集まる中、名前を上げるチャンスを逃した保田容疑者は翌08年8月、五輪会場の霞ケ関カンツリークラブで開催された日本ジュニア選手権(7032ヤード、パー72)の男子15~17歳の部に出場。石川選手はすでにプロに転向していたものの、やはり同学年のライバルでのちにマスターズ覇者となる松山英樹選手(高知=明徳義塾高)を最終日に逆転し、1打差で上回る2位でフィニッシュした。ハイレベルな世代だったといえるだろう。
ところが、保田容疑者は失速。
「プロテストに何度も落ちて足踏みし、ようやくプロになれた」(地元の関係者)
やがてレッスンプロとして生計を立てるようになったという。
遅れを挽回できない保田容疑者は、SNSで、
《プロゴルファーです。夢に向かって励んでます。レッスンなどもしております。うまくなりたい方、スイングで悩みがある方など初心者から上級者まで行っております》
と自己紹介して練習生を募集。
その一方で、
《友達がこれで30万稼いで仕事やめてたんやけどなにこれ?仕事やめたい人やってみて!笑》
などと怪しげなビジネスに誘い込むような投稿を繰り返した。
車が趣味だったといい、
「真っ白なベンツに乗っていたこともある。毎日のように洗車してピカピカに磨き上げるなど、徹底した綺麗好きで車好き。細い道で結構スピードを出すので注意しようと思っていたんです」(近所の別の男性)
ゴルフに集中しているとは言い難い生活だった。
知人男性は4〜5年前、保田容疑者に「週1回ぐらいゴルフを教えてよ」と頼んだときのやり取りを打ち明ける。
「“はいっ!”と快く引き受けてくれた。私が腰痛を発症して実現できなくなってしまったが……。和貴くんが子どもの頃、彼の父親と3人でコースを回ったこともある。父親もゴルフが好きなんだけど、プロゴルファーにありがちな“スパルタ父子鷹”とは違う。和貴くんのゴルフにかける熱量がすごかった」
幼少期からゴルフを始めるぐらいだから裕福なのだろうと思いきや、周辺によると、ごく普通のサラリーマン家庭に育ったという。
知人女性はこう話す。
「元気よく挨拶してくれるし礼儀正しい。いつもニコニコしていて悪いところなんて一切なかった。容疑が事実ならば泣きたいくらい。でも、根が良い子だからきっと更生してくれると信じています」
評判のいい男がなぜ道を踏み外したのか。
容疑者の母親を直撃すると…
自宅を訪ねると、玄関先で母親が取材に応じた。逮捕されるまで「事件については何も知らなかった」と話し、少し疲れている様子だった。
「本人は反省していますし、後悔しています。プロゴルファーを続けるかどうかは、今まさに話し合っている最中です 。被害者のこともありますので簡単には決められません。本当に申し訳ございませんでした」(保田容疑者の母親)
◇
16年前、石川遼選手と3つどもえのプレーオフ直前。真夏日は夕暮れを迎え、涼しい秋風がコースに吹き渡った。
石川選手目当ての報道陣が逆転バーディーなるかと注視する中、保田容疑者ら同学年ライバルたちは揃って「遼が入れないと楽しくないぞ!」と主役不在のプレーオフはご免とばかりに石川選手にハッパをかけた。
熱闘を制した石川選手は、
「同級生とレベルの高い試合ができて楽しかった。ギャラリーにもいい勝負を見せられた。100点満点ではないけど、勝てて自分にいい誕生日プレゼントができました」
とやり切った表情をみせたという。
力負けした保田容疑者はその約2週間後が誕生日。バースデーケーキはともかくとして、勝者と敗者で明暗を分ける厳しさを実感したはずだった。
◇
ゴルフは審判員がいないことなどから紳士のスポーツと言われる。バレなければいい、との考え方とは相入れない。
事実と真摯に向き合い、受けるべき罰は受け、今度こそよそ見をせずゴルフに熱中することを周囲は期待する。前出の知人男性は「まだ若いんだから」とつぶやいた。