5月23日、King & Prince(以下、キンプリ)がデビュー5周年を迎えて、新たなスタートを切った。
「5月22日で平野紫耀さん、岸優太さん、神宮寺勇太さんの3人がグループを脱退。高橋海人さんと永瀬廉さんによる2人体制となりました」(スポーツ紙記者、以下同)
平野と神宮寺は、脱退と同時にジャニーズ事務所も退所。
「岸さんは、8月25日に公開される主演映画『Gメン』のプロモーション活動を終える今年の秋ごろをもって退所します。それまでの間、レギュラーを務めるフジテレビ系『VS魂』には引き続き出演予定です。“DASH村”などの企画に出演している日本テレビ系『ザ!鉄腕!DASH!!』の今後については明言されていません。ただ、最近もTOKIOの国分太一さんが自身のTwitterで、岸さんとのロケの様子を投稿していますから、変わらず出演すると見られています」
3人の脱退が発表されたのは、昨年11月4日だった。
“タッキーズ事務所”からのスカウトも
「夜11時過ぎの出来事でした。直前まで、キンプリはテレビ朝日系の『ミュージックステーション』に出演しており、普段と変わらない様子を見せていたため、大きな衝撃が広がりました」
キンプリ分裂の理由として挙げていたのは、それぞれの目指す方向性の違いだ。
「平野さんと岸さんには海外進出を目指す思いがあり、神宮寺さんは“メンバーの誰かが退所するなら自分も辞める”と決めていたそうです。そのため、今後は海外進出に向けて動くのではないかといわれています」
この発表は、かなりの“フライング”だったという。
「予定していた時期よりも、かなり早く発表されたので驚きました。昨年11月1日に発表された、滝沢秀明さんの退社が影響しているのかもしれません」(テレビ局関係者)
その滝沢は、退所後の平野をバックアップしようとした先輩の1人だという。
「滝沢さんはかなり前から退社や新会社の設立を決めており、ジャニーズ最後の大仕事が『Travis Japan』の世界デビューでした。そんな中、平野さんが退所しようとしていることを聞きつけて“タッキーズ事務所”への“スカウト”もしたようです」(同・テレビ局関係者)
これまでキンプリのメンバーたちは、世界を目指す発言を繰り返してきた。
「デビュー当時はもちろん、その後も口にし続けています。“ならなきゃいけない”“必ずチャレンジする”といった、強い言葉で表現することもたくさんありました」(アイドル誌編集者)
世界を見据えた準備にも取り組んでいた。
「全員、英会話を習っていました。英会話スクールに通い、メンバー同士での勉強会も定期的に行っていたそうです」(芸能プロ関係者)
ONE OK ROCKが世界で通用するワケ
また、平野はもう1人の先輩からも影響を受けていて……。
「山下智久さんに憧れていて、実際に山下さんからもかわいがられていました。そんな山下さんが退所後、日本でこれまでと同じように活動できない姿を見ていた。現在ではグローバルに活躍する彼の経験も、聞いていたのかと」(前出・テレビ局関係者)
では、常に数多くの人気アーティストがひしめき合う海外で、退所後の平野、岸、神宮寺はその夢を叶えることができるのだろうか。
'95年から'16年までニューヨークに在住していた、音楽ライターの池城美菜子さんは、世界で活躍する日本人アーティストの成功例として、『ONE OK ROCK(以下、ワンオク)』を挙げる。
「『ワンオク』は、日本のみなさんが思っている以上に、世界で知られているし、成功しています。演奏力があり、ポップロックという非常にわかりやすい音楽性で、自身のスタイルを貫いているので、世界で通用するのだと思います」(池城さん、以下同)
ボーカルのTakaの英語が“ほぼ完璧”であることも影響しているという。
「MCも上手ですし、歌詞もきちんと伝わります。また、全編英語詞の曲が多く、日本語の曲でも、コーラスなどで英語が使われることで“失恋ソング”なのか“応援ソング”なのか、曲の内容が観客に伝わります。それは海外で売れるにはすごく大事なファクターですよね」
5月20日の2時間スペシャルを最後に終了した冠番組『King & Princeる。』(日本テレビ系)には英語を使うコーナーもあった。しかし、彼らの英語力はあまり高くなさそうだけど……。
「『BTS』も基本的には韓国語で歌っています。日常会話レベルで英語が上手なメンバーは少ないですが、“歌詞の英語パートをきちんと歌える”ということが重要です。『BTS』の曲も、コーラスやラップのパートには英語がたくさん使われており、英語圏の人が聴いたときに歌詞の言葉すべてがわからなくても、完全に置いていかれることはないんです」
組織的なバックアップが必要
言葉だけでなく、退所後の彼らをサポートする存在も必要だという。
「個人でやるだけでは、いくら彼らの実力や人気をもってしても、ただの“有名な人”になってしまうかもしれません。組織的なバックアップは必要でしょう。アメリカの事務所ではなくとも、世界で戦えるノウハウを持つ事務所に入ったほうがいいと思います」
現代は“サブスク配信”の浸透により、チャンスは広がっているという。
「今、アメリカでチャートの上位に入るのは、アメリカのアーティストだけではありません。『BTS』や『BLACKPINK』の曲は大部分が韓国語です。また、去年アメリカで最も聴かれたのは、『バッド・バニー』というアーティストのスペイン語のアルバムです。このヒットは、以前なら“アメリカ国内でスペイン語を話す人口が増えたから”だと受け取られていたと思います。
でも、'10年代の後半から、曲のダウンロードやCDからサブスクでの配信が中心となり、音楽の聴き方が変わりました。試しに聴いてみて気に入れば、ジャンルや言語を気にしないで繰り返し聴かれるようになりました。ユーザー主体で“正しく評価”できるようになったんですね」
いい曲であれば、国籍やジャンルを気にせずに聴かれるようになったのだ。
「今、世界で活躍するにはサブスクは必須。流行りの曲をとりあえず聴くという人も多いため、“特定のアーティストや曲が流行り続ける”現象もありますが、それでもサブスクなら、どの人にも均等にチャンスがありますからね」
“期限”は訪れてしまったけれど、“ボクはまたキミに恋するんだろう”─。
池城美菜子 音楽ライター/翻訳家。ヒップホップ・カルチャーを中心にアメリカの世相、映像作品について執筆と翻訳、歌詞の対訳を手がける。著書『ニューヨーク・フーディー』、翻訳『カニエ・ウェスト論』など