快進撃が止まらない大谷翔平。日本時間5月19日のオリオールズ戦でホームランを打ち、3年連続の2桁ホームランを達成した。投手としても9試合に先発して5勝と好スタートを切っている。
前人未到の記録を打ち立て続ける大谷。彼の故郷・岩手県でスーパースターの原点を探った。
バッティングセンターでは「お兄ちゃんのほうが目立っていた」
大谷は小中学生時代、奥州市内の「前沢バッティングセンター」に通っていた。最近では大谷のユニフォームを着て、実際に大谷が練習をしていた打席でバッティングをするファンも続出しているという。
オーナー・小林長男さんに当時の“大谷少年”について話を聞いた。
「大谷くんは車で15分くらいのところに住んでいたので、お父さんやリトルリーグのチームメートらと一緒に来ていましたよ。当時はおとなしい子という印象。これまで、来たお客さんで、“この人すごいな”と感じた人はいましたけど、当時の大谷くんにはそこまでの印象はなかった。お兄ちゃんのほうが目立ってましたね」
このバッティングセンターから巣立ち、メジャーで活躍する姿に、
「世界一ですからね。すごい人になったなという思いです」(小林さん)
と感慨深そうに語った。
あまり目立たなかった少年が、多くの人を魅了するスターになるまでにはどのような過程があったのか。高校時代を過ごした花巻市を訪ねた。
いつも『やわらか肉丼』だけを食べていた
「花巻東高校に入学した当初、身長は190センチほどでしたが、体重は60キロ台でした。高校は寮での生活だったので、トレーニングの一環として、食べる量を増やし、体重は3年間で20キロほど増えました」(スポーツ紙記者)
お米は1日10杯がノルマ。だが、それ以外にも高校の近くにあったラーメン店「バガボンド」に通い、“おやつ”を食べていた。店主の上田貴之さんはこう振り返る。
「開店したのは大谷くんが高校2年生の'11年から。大谷くんはオープン直後から来ていたけど、ラーメンを食べていた記憶がないんですよね。いつも『やわらか肉丼』だけを食べていました。寮生活で、食事が用意されていたからだと思います」
白いご飯にネギとゴマ、濃い味のタレがかかり、煮込んだチャーシューがのった一品。同店の名物は他の店の2杯分くらいあるという「鉄砲ラーメン」なので、夕食前の間食としてはこの肉丼がちょうどよかったのだろう。
高校時代から野球ファンの間では注目される存在だった大谷。どんな印象だったのか。
「同級生と4人くらいでよく来ていましたが、はしゃがず、静かでおとなしい子でした。ほかの子がはしゃいでいるのを一歩引いて見ている感じ。体格も今はかなりがっちりしていますが、当時は華奢。同級生からは“こいつ絶対プロにいくから”と言われていましたが、そこまで印象に残るような子ではなかったですね」(上田さん)
残念ながら大谷が通っていいた店舗はすでに閉店。現在は別の場所で営業している。
ノルマの10杯のお米に加えてこの肉丼とはかなりのボリュームだが、大谷には他にも“別バラ”の好物があった。
「クレープです。現在はストイックな食生活のため、控えているようですが、大谷選手は甘いものが大好き。クレープは練習後のご褒美として寮でよく食べていました。高校3年時には有名人になり、寮からの外出を控えていたようですが、同級生に頼んで買ってきてもらっていたようです」(前出・スポーツ紙記者)
WBCのタイミングで“大谷クレープ”が…
特にお気に入りだったのが、高校近くの商業施設内のフードコートで販売されていた「チョコバナナクレープ」。
昨年、フードコートが閉店したことで、“大谷クレープ”は消滅の危機となったが、今年3月から同じ花巻市内にあるレストラン「マルカンビル大食堂」がレシピや生地を焼く機械などを引き継ぎ、数量限定で販売している。
生クリームにバナナ、チョコレートソースがかかったシンプルなクレープだが、生地には岩手県産の卵と牛乳を使用し、生クリームも甘さを控え高品質というこだわりが。
マルカンビル大食堂の担当者に話を聞くと、
「レシピも材料もそのまま使っているので、当時と同じものを完全に再現できたと思っています。販売を開始したのが、ちょうどWBCが行われているタイミングだったこともあって、お客様にもご好評いただいております。材料がなくなり次第終了ですが、ほとんどの日で完売という状況です」
大谷にとっては青春時代のスイートな思い出。
「叶うのであれば、ぜひ来て食べていただきたいです」(マルカンビル大食堂・担当者)
岩手発の“おやつ”と“ご褒美”で身体をつくり、世界へと羽ばたいていった大谷。
岩手で過ごした青春時代は、知る人ぞ知る存在だったが、スターのオーラはなかったようで、小中学生時代に汗を流したバッティングセンターの小林さんも高校時代に通った「バガボンド」の上田さんも、
「ここまで有名になるとは思わなかった。サインをもらっておけばよかった」
と後悔していた。
岩手の物静かな少年は世界一の“ショータイム”で多くの人を魅了する男に。次はどんな偉業を達成するのか。