「被害を訴えられている方々に対して深く、深くお詫び申し上げます」
5月14日、ジャニーズ事務所のホームページに公開された、藤島ジュリー景子社長による謝罪動画とコメント。故・ジャニー喜多川さん(享年87)の“性加害疑惑”に対し、約1分間の動画と全10項目の質問への回答で対応した。
「3月7日に、イギリスの公共放送『BBC』がジャニー喜多川さんによる性加害を報じ、4月には元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが実名と顔出しで被害を告白。さらに、同じく元ジャニーズJr.の橋田康さんら複数の被害告発が相次ぎ、ジュリー社長自ら謝罪する運びとなりました」(スポーツ紙記者)
ジャニー喜多川さんの“美学”
'99年にも、『週刊文春』がジャニー喜多川さんの性加害疑惑を報じ、事務所は司法の場で名誉毀損を主張したが、'04年には“事実認定”されていた。しかし当時、事務所からの公式見解等はいっさい発表されなかった。
今回、初めて謝罪動画とコメントを発表したジュリー社長の対応に、業界では驚きの声が上がっている。ジャニーズに造詣の深い、ライターの霜田明寛さんに話を聞いた。
「ジャニー喜多川さんは“裏方は表に出るべきではない”と考えていて、'19年に亡くなったあとも、その遺志を継いで新社長が顔を出すことはありませんでした。そのため、ジュリー社長による顔出し謝罪は歴史的な出来事ですし、真摯に対応してオープンな企業を目指していくという覚悟が伝わってきます」
創業者の美学と訣別して誠意のある対応を見せた……はずだったが、騒動は収まる気配を見せていない。
「説明責任を果たしていない」
「確かにジュリー社長は謝罪していますが、性加害の有無については明言を避けています。また、謝罪が質疑応答のある記者会見の形式ではなかったことや、実態を徹底究明するための第三者委員会を設置しないことなどが、企業の危機管理の専門家やファンたちから“説明責任を果たしていない”“これで収まると思っているなら甘い”と、非難されているのです」(前出・スポーツ紙記者)
しかし、“ジャニーズの特殊性”を考慮すべきと、前出の霜田さんは語る。
「ジャニーズ事務所は、ジャニー喜多川さんの類いまれな感性によって、芸能界のトップに上り詰めたといっても過言ではありません。そのため、“ジャニーズらしさ”とジャニー喜多川さんを切り離して考えるのは非常に難しい。そういった特殊性のある芸能事務所なのに、一般企業の枠で考えてしまうのは無理があるのではないでしょうか」
謝罪を機に、ますます追い込まれてしまったジャニーズ事務所の内部では、こんな対応策も挙がっているという。
「イメージの刷新を図るため、社名を変更する、という案も議論されているそうです。ただそれは、“ジャニーズ”という超強力なブランドを捨てる“禁じ手”でもありますから、非常に難しい決断になるでしょう」(芸能プロ関係者)
ファンを再び笑顔にするために、ジャニーズ事務所が今こそすべきことは─。
霜田明寛 文化系WEBマガジン『チェリー』編集長。ジャニーズに造詣が深く、テレビやラジオにも多数出演している。'19年には『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)を刊行