アメリカのバイデン大統領が5月18日に訪日し、広島市内で開催されたG7サミットに出席したが、そのウラで未曽有の危機が迫っていた。
「発行している国債の元本の償還や利払いができなくなるデフォルトに、アメリカが早ければ6月1日にも陥る可能性が浮上しているのです。アメリカでは国が借金をできる上限金額が法律で決まっているのですが、今年1月には借金が上限に達していたのです。議会での承認がなければ、上限を引き上げることができません。このままでは世界的な経済危機が到来してしまう」(全国紙経済部記者)
デフォルトした場合の影響は?
ただ、経済アナリストの森永卓郎氏はこう話す。
「バイデン大統領が来日していたことから、水面下で上限引き上げの話がついたのでしょう。デフォルトは起こらないと思いますよ」
経済ジャーナリストの荻原博子さんも同意見だ。
「年中行事みたいなものですから、大丈夫です。デフォルトすることは考えられません」
アメリカのデフォルト危機は、2011年や2018年などたびたび起こっている。専門家2人も“大丈夫”と太鼓判を押すだけあってひと安心。
だけど、仮にデフォルトした場合、私たちへの影響は?
「前例のないことですから、正確なことは言えませんが、まずアメリカを襲うのは、金利の上昇と株価の下落です。長期金利が上昇すれば債権の価値が下がり、巨額の含み損が発生し銀行が軒並み破綻していく。これにより、アメリカ経済が失速し、バブルが崩壊。世界的な経済恐慌を引き起こすのです」(森永氏)
荻原さんは、私たちにはこんな影響があると続ける。
昭和恐慌では「娘を身売りする家」が続出
「金融機関は世界中でつながっていますから、アメリカの影響を受けて日本の金融機関でも大動乱が起きる。金融商品が大量に売りに出され、その価値は大暴落。昨今は、多くの人が株や不動産の投資信託などを買っていますから、その資産が失われる可能性がある」
2019年に金融庁は、老後30年間で約2000万円が不足するとの試算を示した。岸田文雄首相も“貯蓄から投資へ”とのスローガンを掲げていることから、老後資金を少しでも増やそうと、新たに金融商品の購入へと踏み切った人も少なくないはずだ。しかし、その資産が泡のように消えてしまうかもしれない。
「影響はそれだけではありません。円高と世界経済の失速によって物の価値が下がるデフレに陥り、企業が続々と倒産。失業も増加するでしょう。どこまで経済が悪化するかは予測がつきません。例を挙げるならば、1927年から起こった昭和恐慌では、1929年にニューヨークの株式市場が大暴落したのを契機に、経済状況はさらに悪化しました。日本は失業者であふれ“大学は出たけれど……”が流行語に。農村部では娘を身売りする家が続出したのです」(森永氏)
仕事を失い、生活が困窮するかもしれない。そして、政府は私たちに負担を強いる。
「経済から軍事まで日本はアメリカにベッタリですから、多額の資金を拠出して全力で支援するでしょう。その原資として増税し、私たちに重い負担を課す可能性はあると思います」(荻原さん)
これらはアメリカがデフォルトしたら……の話だが、将来的に起こる可能性は?
「可能性はあると思いますが、200年に1度ぐらいの確率ですね」(森永氏)
バイデン大統領は、G7後に予定していた外遊を取りやめ帰国した。本当に、この危機を回避できるのか─。
荻原博子 経済ジャーナリスト。1954年、長野県生まれ。明治大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。生活に根差した目線で経済の仕組みをわかりやすく解説する。著書に『5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約』(PHP新書)などがある
森永卓郎 経済アナリスト。1957年、東京生まれ。東京大学卒。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所などを経て、現在は獨協大学経済学部教授。テレビや雑誌などでコメンテーターとして活躍。著書に『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(角川新書)など