左から伊集院光、福山雅治、ハライチの澤部佑、空気会談の鈴木もぐら

《#鼓田ミナレのootd》

 5月22日小芝風花(26)がインスタグラムを更新。#(ハッシュタグ)をつけてこの日のコーディネート(=ootd)を紹介している。鼓田ミナレとは、現在放送中のドラマ『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系、金曜夜11時15分~)の役名だ。ドラマでは、素人ながらラジオDJに抜擢された主人公を演じている。

 ラジオが舞台となっているドラマだが、「若い世代の間でラジオのブームが再燃しつつある」とメディア研究家の衣輪晋一さんは話す。

「コロナ禍以降、ネットでのラジオ配信サービス『radiko』やポッドキャストなどによりリスナーが増えている。ミュージシャンのイルカさんは33年間ラジオ番組を続けていますが、若いリスナーが増えたことを実感しているとおっしゃっていました」

'70年代にはタモリ、たけし、鶴光らが活躍

 '22年の文化放送の調査によると、Z世代の聴取率はここ5年で倍増しており、週1回以上の接触者は2割に及ぶ。

「『波よ~』の主人公のように、ラジオのパーソナリティーを務めたことで人気を獲得した芸能人はその後、長く活躍する人が多いと思います」(衣輪氏、以下同)

 過去の例を見ながら、理由を探ってみよう。

「『オールナイトニッポン』が'70年代にタレントを起用したのが、現在の深夜放送の原型。当時はまだブレイク前だったタモリさん(77)やビートたけしさん(76)、笑福亭鶴光さん(75)などを起用し、社会的なブームを巻き起こしました」

 そうした深夜ラジオ番組は受験勉強中の若者などに熱狂的に支持された。

「ラジオの影響力がいちばんあったのは'70~'80年代といわれています。テレビでは流しにくい話題や、パーソナリティーが自身の意見をはっきり言わなくてはならない風潮もあった。音声だけで勝負するラジオだからこそ、芸人にとっては話術をアピールしやすく、リスナーもその人の魅力にハマりやすい、先鋭的なメディアだったといえます。'80年代後半はお笑い第三世代と呼ばれたとんねるずウッチャンナンチャンがパーソナリティーを務めて人気を博しましたが、彼らも息の長い芸能人といえます」

 '80年代後半からラジオを主戦場とした伊集院光(55)はトーク力を発揮し『ラジオの帝王』の異名も持つように。'88年から放送の『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)や、'91年から放送の『Oh!デカナイト』(ニッポン放送)などを担当。

「'95年からTBSラジオで放送されている伊集院さんの『深夜の馬鹿力』は現在も続いており、25年以上の歴史を持つラジオ番組。今でも多くのコアなファンがいて、人気が高いだけに番組での話題はネットニュースになることもあります」

ミュージシャンの新たな魅力も発信

 お笑い芸人が活躍する流れは今でも続いており、ナインティナインオードリー三四郎などが息の長い番組を持つ。近年ではアルコ&ピースもラジオでの面白さがコアなファンの獲得につながり、今の人気に結びついている。

 ラジオ番組にはミュージシャンの知られていないキャラクターが伝わるという利点もある。

aiko

「'70~'80年代には、吉田拓郎さん(77)や泉谷しげるさん(75)などあまりテレビ出演しないシンガー・ソングライターの方が、ラジオで過激な発言をして注目を集めていました。'90年代のJ−POP全盛期になると、トーク力のあるメジャーアーティストがラジオで大ブレイクします。その筆頭が福山雅治さん(54)でしょう。20年以上続いた『オールナイトニッポン』('92~'98年、2000~'15年)を通して、従来の女性ファンだけではなく、コアな男性ファンを獲得しました。イケメンの福山さんが際どい放送禁止用語や下ネタを連発するトークを披露していましたが、『ラジオ界の国宝』と称されたほどリスナーの心をつかみました

 ミュージシャンのラジオDJといえば、熱狂的な男性リスナーに支持された西川貴教(52)や、関西ではデビュー前からラジオDJとして活動していたaiko(47)などがいる。曲だけでなくキャラクターが好きという深いファンがついた。

「AKB48などのアイドルにとっても、ラジオはファンを獲得する大切な場だったと思います。グループのメンバーが多いので、全員で行う活動では埋もれてしまう子でも、週替わり制でラジオのパーソナリティーを担当することで、個性が見えてくるんですよね」

 アイドルにとってもコアなファンを獲得する大切なツールになっている。

 ナインティナインの岡村隆史(52)や星野源(42)、有吉弘行(48)など、自身の結婚発表の場にラジオを選ぶ芸能人も多い。

ラジオパーソナリティーの方に話を聞くと、リスナーは家族みたいなものという方が多いです。それくらいファンを親密に感じられるメディアなのではないでしょうか。リスナー同士にも近さがあります。『自分だけが知ってる』といった優越感や、仲間意識を生み、よりコアなファンになっていく。“沼らせ力”が強いんです」

 テレビと比べて、ラジオは多種多彩な番組が存在する。

「テレビはひとつの番組を作る際に、大勢のスタッフが関わりながら、万人受けするコンテンツを見つける作業になっていきます。ラジオはディレクターとパーソナリティーがいれば成立し、少人数だからこそコアなファンを得るようなコンテンツが生まれやすいのです

業界人にも多い“リスナー”

 その分自由度が高く、個性を発揮しやすいが、トーク力や頭の回転の速さ、リスナーやスタッフとの連携などの技量が重要ともいえる。

「そんな現場で活躍できる実力がつけば、テレビなど他のメディアや現場でも評価されるんだと思います。それで息の長い活躍につながるのでしょう」

 さらに、ラジオで活躍する芸能人がブレイクする背景には、業界人にもラジオリスナーが多いことも関係していると推測する。

「TBSラジオ『ハライチのターン!』ではハライチ2人のキャラがよく出ています。澤部さんは愛妻家であることや子ども3人の面倒を見る話をしており、それがフジテレビの『ぽかぽか』のMC抜擢につながったのかもしれません」

空気階段の鈴木もぐら(左)と水川かたまり(右)

 同じく『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)も業界ファンが多い番組だという。

「コンビがそれぞれ当時付き合っていた彼女に公開プロポーズするなど、身体を張った企画がコアなファンに支持されました。CDレンタル店でアルバイトしていたという鈴木もぐらさんの選曲も好評ですが、銀杏BOYZの峯田和伸さんやザ・ハイロウズの甲本ヒロトさんなど、有名ミュージシャンも彼らのラジオを聴いていることが知られています」

 鈴木はその後、甲本ヒロト(60)との対談も実現している。今後ラジオで活躍し、息の長い活動をしそうな芸能人は?

「芸人になりますが、TBSラジオのポッドキャスト配信で金の国真空ジェシカなどに注目しています。ラジオ関西のポッドキャストで配信しているマユリカも期待しています」

 多様性のあるラジオ番組は今の時代に合う。ラジオから火がついた根強いファンを持つ有名人が多出する予感!

きぬわ・しんいち メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中


取材・文/諸橋久美子

 

’92年2月『オールナイトニッポン』を始めたばかりのころの福山

 

『魂のラジオ』最終回の放送終了後、ニッポン放送から出てきた福山は、待っていたリスナーに向けて拡声器を使いメッセージを

 

'13年公開の『真夏の方程式』撮影中の福山雅治