《レンチンなのに味は本格的。外食したかのような満足感!》
《冷凍食品と思えないほどおいしい。疲れているときに本当に助かる》
これらSNSの声に代表されるように抜群の手軽さとおいしさで、発売以来、売り上げを伸ばし続けているニップンの「よくばりシリーズ」。
現在発売されているのは、イタリアンや中華の主食&主菜がセットになった『よくばりプレート』、和食のご飯とおかずがセットされた『よくばり御膳』、ご飯とパスタなど主食2品とおかずがセットになった『よくばりメシ』の3種類、全15品のラインナップ。430円(編集部調べ)と価格もリーズナブルでシリーズ全品の食べ比べを楽しむ人も多い。
人気集めるニップンの冷凍食品『よくばりシリーズ』
「1つを食べておいしかったから他も試したくなった、といった声は弊社にも届いています。そのおかげもあってか直近5年間で売り上げは約7倍に増加しています。冷凍の調理セットものではシェアNo.1となりました」と話すのは株式会社ニップン企画開発部の永野篤さん。
今年3月、同シリーズから新発売となった『よくばりプレート 完熟トマトソース ハンバーグ&ミラノ風ドリア』も、SNSでは《ベストな組み合わせ。これをストックしとけば、いつでもサイゼリヤ気分にひたれる》といった声が上がるなど大好評。そもそもこのシリーズが誕生したのも、顧客の声がきっかけだった。
「それまで弊社の冷凍食品で主力はパスタでした。食べるタイミングで多いのは昼食。主婦の方が午前中の家事を終えて昼食がてら休憩したいというときに、レンチンですぐ食べられるパスタが重宝されたようです」(永野さん)
しかし「パスタだけでは物足りない。もう少し食べたい」という声も届いていた。
「そのニーズに応える商品を、と弊社ではさまざまなアイデアが出されました。その中で“満足感のために、もう一品、付け合わせを用意している”というお客様の声からヒントを得て開発されたのが、パスタとおかずをセットにした『よくばりプレート』です」(永野さん)
共働き世帯が半数を超え、冷凍食品の需要がより高まっていたことも後押しとなった。
「そのころは冷凍食品といえば、パスタやから揚げなど単品が主流でした。主食とおかずのセット商品は一部スーパーのプライベートブランドで展開されていましたが他にはなく、そのスーパーがない地域では見かけない状態だったのです」と話すのは、同社企画開発部の歌門さん。
「初めてセット商品を見る方もいるわけですから、そういった方にも手に取ってもらえるようにファミリーレストランなどの外食で人気のメニューを組み合わせることに。さらに、お客様の好みに合わせて選んでいただけるように、洋風と和風をそれぞれ1セットずつ発売することになりました」(歌門さん)
苦労した点は?
「単品ならその商品専用の設備と材料があれば製造できますが、主食とおかずのセットとなると、パスタ、肉、野菜……と、使用する材料が増えます。それらを1か所で管理して調理して盛りつけまで行うのは、当時はハードルが高いことでした」(永野さん)
さまざまな具材を一度のレンジ加熱で最適な温度にすることも課題に。
「パスタは温かいけれどおかずはぬるいとなると、おいしくいただけません。そこで均一に温まるように、使う具材とそのサイズ、量、配置などは幾度となく調整を重ねました」(永野さん)
こうした試行錯誤の結果、2015年に発売されたのが、『煮込み風ハンバーグ&ジューシーナポリタン』と『和風おろしハンバーグ&香味醤油スパゲッティ』の2品(※商品名は2023年時点)。
「ありがたいことに発売してすぐ大きな反響をいただく結果に。次の商品を早く開発してほしい、と営業からも催促が来るほどでした」(歌門さん)
麺もご飯も食べたいニーズに応えた
好調なスタートを切った『よくばりプレート』だが、購買者から「ご飯が食べたい」というリクエストが届くようになった。
「実は『よくばりプレート』の中で人気なのが、『和風おろしハンバーグ&香味醤油スパゲッティ』。私たちは洋風のほうが売れるだろう、と予想していただけに意外な結果でした。それならご飯とおかずの和風セットを出せば、もっとお客様に喜んでいただけるのでは、と2018年に発売したのが『よくばり御膳』。
食べたいけれど作るとなると手間がかかるメニューならより喜ばれるのではないか、と考え、『鶏めしとチキン南蛮』『あさりご飯とさばの味噌煮』の2品からスタートしました」(歌門さん)
主食のご飯も白飯ではなく味つきご飯、とこだわったのには理由がある。
「そもそもシリーズ名を『よくばり』としたのは、手がかかる人気メニューの組み合わせで、主食・主菜ともに満足できる、というコンセプトを伝えたいからこそ。ですからご飯も付加価値をつけて楽しんでいただけるように工夫しました」(永野さん)
これらの『よくばり御膳』は生活習慣病が気になる中高年男性にもウケた。
「そこで、3品目として発売したのが『五目ご飯と鶏と野菜の黒酢あん』。パッケージには1食で5種類の野菜が100g摂取できるとアピールしたところ、かなりの反響をいただきました」(歌門さん)
一方でがっつり食べたい人向けの「よくばりシリーズ」も。
「男女問わずパスタとピラフのどちらも食べたいときがありますよね。そんなふうに主食をよくばりたい人に満足していただけるのが昨年発売の『よくばりメシ』。例えば『トルコライス』はナポリタン、とんかつ、カレーピラフのセットで食べ応え抜群です」(歌門さん)
顧客のニーズをつかむために、グループインタビューも実施。よくばりプレートにはヴィーガン対応メニューもあるが、それらは実践者の声を生かして開発された。
「もともと弊社では業務用で豆腐から作ったお肉を販売していました。大豆ミートは特有のにおいや味が気になる、という方もいるのですが、弊社の商品はクセがなく食べやすいのが特長。
これを一般の方にも知っていただきたいと考えたのですが、ニーズがあるのか不明だったため、ベジタリアンやヴィーガンの方々に生の声を聞かせてもらったのです」(永野さん)
すると見えてきたのが、食の選択肢が限られるがゆえに、日々の生活で困っている現実。
「加工食品で食べられるものがほとんどないため、共働きで疲れていても、一から食事作りをしなければならない、とのこと。加工食品が嫌いなわけではないので、冷凍食品で食べられるものがあれば助かる、というお声をいただきました」(永野さん)
このグループインタビューで自信を得て昨年6月~8月には応援購入サービス「Makuake」で『豆腐から作ったお肉のミラノ風ドリア&カポナータ』などヴィーガン対応メニューの応援購入を募集。
「無事に目標金額の50万円を達成。現在もこれらの商品は販売を継続してご好評をいただいています」(永野さん)
ちなみに新発売の『よくばりプレート 完熟トマトソース ハンバーグ&ミラノ風ドリア』も「『よくばりプレート』シリーズでもご飯が食べたい」という顧客の声に応える形で、ドリアを主食とすることが最初に決まったそう。
「そのときのトレンドなど市場動向と実際食べている方の意見、どちらも大事に次の商品展開を考えます。今年の秋冬も新メニューを発売予定ですから楽しみにしてください」(永野さん)
(取材・文/中西美紀)