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 5月19日、政府はかねて申請されていた電力大手7社からの電気料金値上げ申請について、正式に認可したと発表した。

 値上げを申請していたのは、北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄の電力会社7社。値上げ幅は最大が北陸電力の平均39.7%、最小が東京電力の平均15.9%アップだ。

電気代、6月にまた大幅アップ!

「2011年の東日本大震災後など特別なケースを除き、電気代がここまでグッと値上がりしたことはない」

 と話すのは、調達・購買・資材コンサルタントで未来調達研究所の坂口孝則さん。元電機メーカー勤務で電力事情にも詳しく、

「電気代が上がったのは石炭や液化天然ガスのLNGなど火力発電の燃料高騰の影響が大きい。その証拠に、関西電力や九州電力など現在稼働中の原子力発電所を持つ電力会社は今回値上げを申請していない」

 と解説する。値上げは6月使用分からとなり、そろそろエアコンが恋しくなる時季でもある。気象庁は今年夏の暖気予報を“暖かい空気に覆われやすいため、北・東・西日本で平年並みか高くなる”と発表。

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 エアコンフル稼働となりそうなこの夏、電気代はズバリおいくらに?坂口さんは、「夫婦2人暮らしや、あまり電気を使わない家庭なら、一家庭あたり月額約7000~8000円」と推定。

 ただしこれはあくまで平均値で、東京で月2000円ほど、北陸だと月5000円弱の値上がりになり、9月まで酷暑が続くとなると4か月で2万円の負担増の地域も。

 さらに家族構成やオール電化など使用状況により電気代もまた変わる。家庭で使用する電気代のうち、エアコン代は約40%。かなり高い割合に思えるが、

「例えば東京の場合、2000円の値上がりだとすると、エアコン代の値上げ分は40%で800円。それをどう考えるか」

 と坂口さん。記録的な猛暑が続くここ数年、夏になると連日のように熱中症で病院に搬送されたというニュースを耳にする。熱中症は生死にかかわることもあり、エアコンは命綱になるケースも。

「熱中症というと道路や運動場で倒れるイメージがありますが、実は室内で倒れるケースのほうが多い。数百円で命を救えると考えれば、ケチらずつけたほうがいい」(坂口さん)

 では、命を守りつつ電気代を節約するには? 節約アドバイザーで家電製品アドバイザーの和田由貴さんに聞いた。

「エアコンのほか、年間通して電気の使用割合が多いのが照明器具と冷蔵庫。エアコンの使い方を気にされる方が多いけど、それだけではなくほかの家電も見直してみて。

 例えばLEDは発熱量が非常に少なく、照明器具をLEDに替えれば部屋の温度も上がりにくくなるので、エアコンの節電にもつながってきます」

 加えて、古い電化製品を使っている場合、買い替えも検討していく必要があるという。

節電効果の高い家電に買い替えを

特にエアコンや冷蔵庫は新製品と比べると電気代が大きく違ってくる。今は買い替えに補助金を出している自治体もあり、お得に買い替えるチャンスでもあります。

 例えば東京都では『東京ゼロエミポイント』を実施していて、最大で2万6千ポイントとかなりの額が戻ってくる。対象になるのは、エアコンと冷蔵庫、照明器具、給湯器。

 東京都に限らずほかにも実施している自治体があるので、そちらもあわせてお使いの家電を改めて見直してみては」(和田さん)

 前出の坂口さんも買い替え推奨派。自身の電機メーカー勤務の経験を踏まえ、

「企業もすごく努力していて、技術の進歩により節電能力が格段に上がっています。消費電力の差は激しく、昔のエアコンはもっと電気代が高かった。買い替えたとしても10年かからずモトが取れるし、逆にトクをするはず」

 と促す。環境省が運営するウェブサイト『しんきゅうさん』によると、現行のエアコンは10年前の製品と比べて電気代が10%削減される計算に。

 仮に1年間の電気代が10万円として、エアコン代はそのうち4割にあたる4万円。10年使い続けると、1年あたり4000円が浮く計算になる。これが20年前の機種ならさらに電気代の差は大きくなると考えられ、確かに10年で十分回収できそうだ。

 さらに『しんきゅうさん』には使用中のエアコンと購入を検討している機種の電気代比較サービスも用意されているので、ぜひチェックを。

 とはいえ電気代にかかわらず、「身体に悪い」とエアコンに拒否感を持つ層も。

「ウチの70代の親もそう(笑)。あの世代はなかなかつけないし、買い替えない。ローテクなエアコンのイメージがあり、実際いまだに数十年前の機種を使い続けている。新型エアコンに買い替えたほうが身体も守られる。

 自動で室温を調整してくれるし、身体に直接冷気が当たらないように調整してくれる。エアコンをつけないほうが身体に悪い」(坂口さん)

 気をつけたいのが買い替え時期。猛暑でエアコンの需要が急増し、入荷待ちが続いた例もある。これからの季節、エアコンや冷蔵庫が、ある日突然壊れてしまったら──。

「半導体不足の影響もあり、家電自体の流通量が少なくなっている。店で“このエアコンをください”と言ってもすぐ購入できるかわからない。

 納品を待たされる可能性もあり、エアコンの場合は工事が必要になるので、そこでさらに時間がかかることもある。壊れてから買い替えるのはリスクが大きい」(和田さん)

 この初夏は気温の上昇が続き、見直しも買い替えもより早めの対策が求められそうだ。

5月に東京で真夏日を記録したのは19年ぶり。今年も酷暑になると、熱中症の心配もUP

 今回の電気料金値上げはあくまでも一般の家庭向け。企業のほうはどうなのだろう。

「企業は1kWhあたりいくらと電力会社と各社個別契約しています。私の知る企業はすでに値上げされていて、電気代の値上がりは中小企業の経営を逼迫させている。電気代が上がっているから供給品の納入代を上げさせてくれ、という交渉が企業間で日々行われていると聞く」(坂口さん)

 事実、トヨタ自動車は'22年度から仕入れ先のエネルギー費の一部負担をスタート。また今年4月には自動車メーカーのHondaが部品会社など取引先に対し、電気料金の一部を負担する方針を打ち出している。

 エネルギーの記録的高騰を受けての措置だというが、これが続けば消費者にしわ寄せがくるということも考えられる。

「ひとつの商品を製造したとき、売り上げの約1~2%が電気代。100円で物を売るとしたら、そのうちの1~2円が電気代ということになる。それが積もり積もって商品の価格に反映されることもあるでしょう」

 と坂口さん。実際のところ、エアコンなど家電製品はどうなのだろう。

まだまだ続く!? 電気料金値上げ

「これまでなら家電メーカーは消費者に負担を転嫁しなかった。でも今後はわからない。今までは企業努力で値上げをしなかったが、いろいろな業種がもう限界だといって上げ始めている。特に今は値上げの機運が高まっているので、値上げしやすいというのはある」(坂口さん)

 電気代高騰のイメージはあるものの、現在は政府の価格激変緩和対策が敷かれ、実際に支払う電気代は補助金を引いた額となっている。補助金は1kWhあたり7円。しかし、それも今年の9月末までと実施期間が定められている。

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「燃料の国際相場が一時期急騰し、2年前の水準と比べると倍近くになっている。ロシアとウクライナの戦争もまだ終結が見えず、そうなると今のところ電気代が下がる要素がない。

 あまりにも価格が高い状態が続くようであれば、政府も補助金の支給を延長する可能性はあるけれど、今のところは何ともいえない状況です」(和田さん)

 坂口さんも、

「政府の補助が追加されるかどうかはまだ今の段階では何ともいえない。企業も9月までは政府の補助が投入され、電気代の負担もやや抑えられてはいるけれど、それ以降どうなるかは予測できない」

 と言い、先行きの見えない状況と口をそろえる。

 はたして秋以降の電気料金の行方は?まずは各家庭でできることから対策し、この夏を賢く乗り切りたい。

(取材・文/小野寺悦子)