このところ日本中で強い地震が頻発している。5月5日には石川県能登半島を震源としたM6.5の地震が発生。震度6強を観測した珠洲市では1人が死亡し、住宅は全壊・半壊を含めて770棟以上と甚大な被害をもたらした。
的中率が高いと話題のMEGA地震予測!
また、11日の千葉県南部を震源とした地震では、木更津市で震度5強を観測し、22日に新島・神津島近海で発生した地震では伊豆諸島・利島村で震度5弱を記録。5月の震度4以上の地震は24日時点で14回にのぼり、地震被害の不安が頭をよぎる1か月だった。
「この5月は大きな揺れを観測した地域が多いですが、地震の規模を表すマグニチュードを見ると、6.5を記録した能登半島の地震以外はいずれも5.9以下。規模としては大地震が頻発しているというわけではないので、過度に怯える必要はありません。
ただし、震源の位置によっては大きな揺れや被害につながることもあるため、今後も警戒を怠らないでください」
そう語るのは地震科学探査機構(JESEA)の最高技術責任者・郭広猛博士。
同機構が運営する『MEGA地震予測』はリモートセンシング(遠隔探査)という技術をもとに、地震の前に現れる多種多様な前兆現象を総合的に分析して地震予測を行い、その的中率は7割以上と高い精度を誇っている。
これまでは測量学の世界的権威である村井俊治・東京大学名誉教授が舵を取ってきたが、1月末に高齢を理由に一線を退くことになり、4月からそのバトンを引き継いだのが、郭博士だ。
そこで今回は、この6月に大きな地震が発生する可能性がある警戒エリアについて、郭博士に教えてもらった。
長雨による土砂崩れ、河川の氾濫にも注意
まず、危険度第1位に挙がったのが【東北ゾーン】だ。
「東日本大震災以降、太平洋側は隆起、日本海側は沈降を続けている状況。その境界となる奥羽山脈周辺にはひずみがたまっており、地震を誘発しやすいといえます。
また、岩手県北部と福島県南部では隆起の速度が異なる地域が現れており、ここでもひずみが生じやすくなっています。
さらに、5月には前週と比べて1cm以上の急激な沈降を観測した地点が岩手県に多数現れました。沈降地域周辺は地震のリスクが高いといえるため、引き続き警戒を続けてください」(郭博士、以下同)
危険度第2位は【首都圏・伊豆諸島ゾーン】。
「最も警戒していた新島・神津島近海では22日にM5.3の地震が発生。伊豆諸島は式根島や神津島が沈降、新島や三宅島が隆起しており、ちょうどその境界線上が震源となっています。
すでに地震が発生しましたが、不安定な状況は変わらないため、今後も注意が必要です。
また、東北日本と西南日本の境目となるフォッサマグナ西端の梓川地点や本川根地点などで5月頭に急激な隆起の数値が現れました。その影響は富士山周辺に及ぶため、関東全域でも引き続き警戒が必要でしょう」
第3位は【近畿ゾーン】。特に紀伊半島で気になるデータが観測されているという。
「前週と比べて1cm以上急激に隆起した地点として、京都府の【京都加茂】、奈良県の【下北山】【十津川】、和歌山県の【串本】などがあり、局所的に急激な隆起が起こっています。
今回新たに『ピンポイント予測』が発出しており、6月21日までにM5.5クラスの地震が起こる可能性が高いため、警戒してください」
第4位は【九州ゾーン】。北部・南部ともに注意が必要だ。
「全域が沈降傾向にあり、特に急激に沈降した地点が福岡県の【福岡】から鹿児島県の【屋久】まで全域にわたって見られます。
この状況は2016年の熊本地震のときにも似通っており、ピンポイント予測を発出するM6レベルではないものの、M5クラスの地震が起こる可能性があるため、要警戒エリアです」
梅雨の時季に起こる地震は豪雨や土砂災害とも関連して被害が大きくなりやすい。
「特に直近で大きな地震が起きたエリアの山間部などは、地盤が緩んでいる可能性があります。長雨によって土砂崩れや河川の氾濫なども起こりやすいため、地震だけでなくそういった災害に対する備えも十分にしておきましょう」
これまでも数々の地震予測を的中させてきた『MEGA地震予測』。世界最高峰の学術機関のひとつである「中国科学院」で博士号を取得し、村井教授のバトンを引き継いだ郭博士に、地震予測研究にかける思いを聞いた。
「地震を的確に予測し、事前に警戒を呼びかけることで地震被害を少しでも抑えられ、そこで助かる命もあります。研究の重要性を胸に刻み、いずれは日本だけでなくアジア全域での地震予測の研究にまで広げたいですね。
そのためにも、まずは日本での地震の予測精度をさらに向上させて貢献していきたいです」
進化する予測技術に希望を持ちつつ、この夏も地震への備えは忘れてはいけない。
6月の警戒エリアピンポイント予測マップ
人工衛星を使用し、さまざまな地震の前兆現象を捉えて解析する『MEGA地震予測』。直近のデータに基づき、6月中に大きな地震が起こる可能性が高いのは、この4エリアだ。
〈1位〉東北ゾーン
ここ半年の「週間高さ変動」が集中して現れている東北地方。2011年の東日本大震災で変動した地殻が、今なお変動し続けている。
〈2位〉首都圏・伊豆諸島ゾーン
東日本大震災以降、高さ方向の変動が顕著。伊豆諸島も隆起と沈降が混在していて不安定で、八丈島近海では地震が頻発している。
〈3位〉近畿ゾーン
地震のリスクが高い沈降エリアが日本海側と和歌山県に出現。特に和歌山県では急激な上下の変動も起きており、警戒が必要だ。
〈4位〉九州ゾーン
九州全域が2年前と比べて沈降しており、これからも沈降が続くと大地震が起こる可能性も。トカラ列島では群発地震も続いている。
(取材・文/吉信 武)